アジアカップ準々決勝でベトナムを1-0で破った日本【写真:AP】

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前半ロングボール、後半パスサッカーを展開し、「勝利こそが最優先」の戦いぶり

 日本代表は24日、アジアカップ準々決勝でベトナムを1-0で破り、準決勝でイランと対戦することが決まった。

 FIFAランキング100位の相手に、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)で獲得したPKによる1点にとどまった戦いぶりは、海外の目にはどのように映ったのか。

 かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を6大会連続で取材した英国人記者のマイケル・チャーチ氏は、2度にわたるVAR判定について「正しい決断だった」と肯定。「行方知れずの友人を見かけたような感覚」と、後半は日本の持ち味であるスタイルが随所に見られたと語った。

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 日本がアジアカップを這って進む姿は、見た目では喜びを与えるものではほとんどない。花火(ゴール)はほとんど打ち上がらず、ベトナム相手に畏敬の念をもたらすフットボールを見せたのはわずかな時間だった。

 率直に言えば、通り一遍で魅力的ではなく、いつになく“自分たちの特性”に欠けていた。むしろ、それが森保監督の好むスタイルであるようにも見えた。喧噪には耳を傾けず、勝利こそが最優先と言わんばかりだ。

 若く、活気に溢れ、今後10年間で躍進するポテンシャルに満ちたベトナムに対し、あくまで森保監督は「現実主義スタイルが正義」だと示した。

 前半の45分間は、パスで崩すよりも対角線のロングボールを放り込むプレーが目についた。それだけに、柴崎岳のCKから吉田麻也がネットを揺らしたことに驚きはなかった。VARにより吉田のゴールが取り消されたのも同様だ。あれは正しいコールだった。吉田の恥ずかしそうな笑顔がそれを大いに物語っていた。

森保監督はアジア杯制覇を成し遂げるだけの多くの武器が揃っていると見抜いていた

 現実主義的なアプローチに徹した前半から一転、後半は素早くボールを左右に動かし、パスで動きを創出。いわゆる「アジアのパスマスター」として期待されている姿を見せていた。決勝点となるPKを堂安が獲得した際、遠藤航→原口元気→堂安とつないだ連動した「パス&ゴー」がその正当性を証明しているだろう。長い間行方知れずだった友人を見かけたような感覚だった。

 過去2試合(ウズベキスタン戦、サウジアラビア戦)では、一つのパターンしか持ち合わせないチームだったが、ベトナム戦は違った。日本はむやみに攻め込むよりも、多様性で勝負できると理解している。彼らにはロングボールがあり、セットプレーがあり、そして守備もできる。森保監督は、5度目のアジアカップ制覇を成し遂げるだけの多くの武器が揃っていることを見据えていたのかもしれない。

 準決勝で待ち受けるのはイランであり、森保監督は最も抜け目のないカルロス・ケイロス監督に“知恵比べ”を挑むことになる。このポルトガル人指揮官、そしてハードワークする活気に満ちたストライカー、猛烈に走り回るサイドバックなどを擁したタレント軍団は、今大会の最大の試練となるだろう。

 前進するためには、その才能と多様性を飛躍させなければならない。武藤嘉紀と大迫勇也の復活は必要であり、強固な守備と忍耐強く遮断される狭い中盤のスペースを攻略しなければならない。日本の今後はイラン戦に懸かっている。(マイケル・チャーチ/Michael Church)