勝ったこと以外に、プラス材料を見つけるのは難しい。そんな試合である。

 日本はアジアカップ準々決勝で、ベトナムを1-0と下し、ベスト4進出を決めた。2大会ぶりのアジア王座奪還を目指す日本にとっては、4年前の前回大会で準々決勝敗退に終わっていることを考えれば、第一関門突破と表現してもいい結果かもしれない。

 とはいえ、内容は散々なものだった。

 じっくりとボールを動かすのか。あるいは、相手ゴールへ向かって速く攻めるのか――。チーム全体で同じ狙いを共有できていない日本は、試合序盤からかなりバタついていた。

 サッカーではよく、チーム全体が同じ狙いを共有することを、「同じ絵を描く」と表現する。だが、この試合の日本は、選手それぞれが違う絵を描く。いや、それどころか、どんな絵を描いたらいいのかと、画用紙を前に筆も入れられずに戸惑っていた。

 選手それぞれが、自分は何をすればいいのかがはっきりしないため、どこにポジションを取ればいいのかがわからない。それなのに、パスはどこからかやってきてしまうので、慌てて受けることになる。そんな状態に見えた。


1-0で勝利したものの、ベトナム相手に攻め手を欠いていた日本

「前半はもう少しボールを動かしてもよかった。早く(ゴールを)決めたいという気持ちがあり、攻め急いだ」

 キャプテンのDF吉田麻也(サウサンプトン)が口にした言葉が、ピッチに漂ったバタバタ感を裏づける。とくに前半は酷いもので、不用意にボールを失っては、ベトナムのカウンターを浴びていた。

 幸いにも、と言うべきか、ベトナムも日本相手とあって、戦い方が慎重だった。奪ったボールが前線に収まった瞬間、前の試合までなら、もっと多くの選手が攻め上がり、厚みのあるカウンターを作り出せたはずだが、この試合では後ろに人数を残したまま、少ない人数で攻め切ろうという意識が強すぎた。

 おかげで、日本は失点を避けられた。だが、もしベトナムがもっと積極的な姿勢で果敢に勝負を挑んできていたら、結果はどうなっていたか。そう思わせるほどに、危ういシーンの連続だった。

「後半は相手も少し(運動量が)落ちて、プレッシャーが緩くなった。ガク(MF柴崎岳/ヘタフェ)と自分のところで、しっかりタテに(パスを)つけていくことは意識していた。縦に(パスが)1本入ると、PKをもらったシーンもそうだが、中を崩せるし、(中から)サイドへ展開したときにもスペースがあって、ドリブルで仕掛けられた」

 MF遠藤航(シント・トロイデン)がそう語っていたように、後半の日本は、いくらか落ち着きを取り戻し、ベトナムゴールに迫る回数を増やした。そのなかのひとつが、決勝点となるMF堂安律(フローニンゲン)のPKにつながった。

 しかしながら、前半に比べて、決定機と呼べるチャンスがどれだけか増えたか。その尺度で見れば、前半からの改善はけっして大きなものではなかった。

 振り返ってみると、今大会序盤から、日本の試合内容がよくないことは明らかだった。だが、それについてある程度目をつぶってきたのは、大会前の準備期間の短さなどを前提に、試合を重ねるごとに内容はよくなっていくはずだと見込んでいたからである。

 ところが、主力(と思しき)メンバーで戦った4試合に関して言えば、むしろ試合内容は悪化しているのではないだろうか。ベトナム戦を見てしまった今となっては、防戦に終始したサウジアラビア戦を、「割り切って守りに徹した、したたかな勝利」などと捉えるのは難しい。それしかできなかった。そうせざるをえなかった。それが適当な表現だろう。

 それにしても、なぜこんなことになってしまったのだろうか。森保一監督就任以降、新生・日本代表は、昨年行なわれた親善試合で、何度も痛快な攻撃を見せてきた。にもかかわらず、そんな生き生きとした姿は、今では見る影もない。

 もちろん、原因はひとつではないだろう。たとえば、疲労。今大会5試合のうち、4試合をほぼ同じメンバーで戦い続け、しかもベトナム戦は、サウジアラビア戦からわずかに中2日である。累積警告で出場停止のFW武藤嘉紀がFW北川航也に代わった以外、まったく同じメンバーで臨むなど、本当に優勝する気があるなら考えられない。疲労の蓄積から、選手のパフォーマンスが低下するのは当然のことだ。

 しかし、メンバーの固定化については、これを取り上げ出すと、毎試合同じ話をしなければならなくなるので、ひとまず大会が終わるまでは脇に置いておく。

 とすれば、いの一番に思い当たるのは、やはりFW大迫勇也の不在だ。

「明確な攻撃のパターン、これっていうものはまだ出来上がっていないと思う。でも、逆に言えば、みんながうまく流動的に動けているときは、自然とボールも回るし、そういった状況を作っていきたいとは思っている」

 そう話してくれたのは、ビルドアップの起点となるセンターバックのDF冨安健洋だが、彼の言う「流動性」の中心にいたのが、大迫なのだろう。

 確実にボールを収めてくれる大迫を基準点にして、周囲の選手は自分がどう動けばいいのかを判断できた。つまりは、大迫がいることで、チーム全体が「同じ絵を描く」ことができていたわけだ。

 半端ない大迫は、その穴の大きさも半端ない。個人的には、今大会の日本代表を見るうえで、「大迫不在時の戦い」をひとつのテーマとしていたのだが、そこにメドが立つどころか、穴の大きさが際立つ試合内容に終始している。

 どんなに内容がよくても、タイトルマッチは結果がすべて。負ければ終わり。勝ったものが強い――。そんな見方もあるだろう。

 その意味で言えば、日本は明らかにベトナムより強かったし、それは試合後、ベトナムの選手も認めている。最少スコアによる勝利だったとはいえ、結果に関しては、実力的に見て妥当なものだった。

 しかし、今の日本代表――昨年ロシアで悔し涙を流し、2022年カタールへ向けて新たに船出したチーム――に求められているのは、ベトナムより強いと証明することではないはずだ。これなら3年後にはワールドカップでベスト8進出が狙える。そんな期待膨らむ試合を見せてくれることではないのだろうか。

 だとしたら、あまりに物足りない試合だったと言わざるをえない。