国土交通省が首都圏の主要鉄道路線における2017年度の遅延発生状況を公表。30分以上の「大規模な遅延」が多い路線、10分以下の「小規模な遅延」が多い路線とで、顔ぶれが大きく異なりました。

30分以上の「大規模な遅延」多発路線ワーストは

 国土交通省は2019年1月18日(金)、資料「東京圏の鉄道路線の遅延『見える化』(平成29年度)」を発表。首都圏の鉄道路線別に、遅延証明書の発行状況や、遅延の発生原因などをまとめました。


JR宇都宮線を走るE231系電車。同線と高崎線は、30分を超える遅延が多く発生している(画像:photolibrary)。

 この資料では、2017年度の各路線において、1か月のうち平日20日間あたりの遅延証明書発行日数や、そのなかで10分未満の「小規模な遅延」、30分以上の「大規模な遅延」などが発生した平均日数が明示されています。

 まず、2017年度に1か月(平日20日間)当たりで遅延証明書の平均発行日数が多かった路線ワースト5は、次の通りです。

・1位:JR中央・総武線各駅停車(三鷹〜千葉)、19.2日
・2位:JR宇都宮線・高崎線(上野〜那須塩原・神保原)、19.0日
・3位:JR中央線快速・中央本線(東京〜甲府)、18.8日
・4位:東京メトロ千代田線、18.4日
・5位:JR埼京線・川越線(大崎〜新宿〜武蔵高萩)、18.2日

 次に、30分以上の「大規模な遅延」が多く発生した路線ワースト5と、その平均発生日数は次の通りです。

・1位:JR宇都宮線・高崎線(上野〜那須塩原・神保原)、2.7日
・2位:JR埼京線・川越線(大崎〜新宿〜武蔵高萩)、2.6日
・3位:JR中央線快速・中央本線(東京〜甲府)、2.1日
・4位:JR横須賀・総武快速線 (大船〜東京〜稲毛)、1.8日
・5位:JR東海道線(東京〜湯河原)、1.7日
・5位:JR中央・総武線各駅停車(三鷹〜千葉)、1.7日

 国土交通省によると、大規模な遅延の要因は、自殺(人身事故)や線路内への立ち入りといった「部外原因」が77%、車両や施設の故障などの「部内要因」が18%。事故防止対策として転落防止のためのホームドア整備、車両における主要機器の二重系化(故障時のバックアップ機能)などを挙げています。

10分以下の「小規模な遅延」多発路線ワースト4

 10分以下の「小規模な遅延」の多い路線ワースト4と、1か月のうち平日20日間あたりの平均発生日数は次の通りです。

・1位:東急目黒線、11.6日
・1位:都営三田線、11.6日
・3位:東京メトロ東西線、11.4日
・4位:JR常磐線各駅停車(綾瀬〜取手)、10.5日
・4位:東京メトロ千代田線、10.5日
・4位:東急東横線、10.5日


東急目黒線の車両。都営三田線、東京メトロ南北線と相互直通運転を行う(2011年5月、草町義和撮影)。

 東急目黒線と都営三田線、JR常磐線各駅停車と東京メトロ千代田線はそれぞれ、相互直通運転を行っています。なお、東急目黒線と相互直通運転を行うもうひとつの路線、東京メトロ南北線も、小規模な遅延は平日20日間あたり10.4日発生し、ワースト7位にランクイン。一方、東京メトロ千代田線と相互直通運転を行う小田急線は6.8日、東急東横線と相互直通運転を行う東京メトロ副都心線は9.1日と、一方の路線と比較して遅延日数が少ないケースもあります。

 国土交通省によると、10分未満の遅延は「もっぱら利用マナーに起因すると思われる」という「利用者起因」の原因が全体の60.4%、うち「乗降時間の超過」が54%、荷物の挟み込みなどによる「ドア再開閉」が6.4%だそうです。また、車内の急病人や、乗客どうしのトラブル対応といった要因も27.1%を占めるといいます(2017年11月の平日20日間に発生した遅延要因を割合にしたもの)。

路線別の「混雑率」と比較してみると

 首都圏の通勤ラッシュを示す指標として、国土交通省が発表している路線別の「混雑率」もよく取りざたされます。参考までに、今回挙げた路線の2017年度における混雑率を高い順に見てみましょう。なお、路線名/混雑率/国土交通省資料に基づく混雑率のワーストランキング順位/最混雑区間/最混雑時間帯の順で記載します。

・東京メトロ東西線/199%/1位/木場→門前仲町/7時50分〜8時50分
・JR総武線各駅停車/197%/2位/錦糸町→両国/7時34分〜8時34分
・JR横須賀線/196%/3位/武蔵小杉→西大井/7時26分〜8時26分
・JR東海道線/187%/5位/川崎→品川/7時39分〜8時39分
・JR埼京線/185%/8位/板橋→池袋/7時50分〜8時50分
・JR中央線快速/184%/10位/中野→新宿/7時55分〜8時55分
・JR総武線快速/181%/11位/新小岩→錦糸町/7時34分〜8時34分
・東京メトロ千代田線/178%/12位/町屋→西日暮里/7時45分〜8時45分
・東急目黒線/171%/16位/不動前→目黒/7時50分〜8時50分
・東急東横線/168%/19位/祐天寺→中目黒/7時50分〜8時50分
・JR高崎線/166%/22位/宮原→大宮/6時57分〜7時57分
・都営三田線/156%/35位/西巣鴨→巣鴨/7時40分〜8時40分
・JR常磐線各駅停車/154%/37位/亀有→綾瀬/7時23分〜8時23分
・JR宇都宮線/143%/47位/土呂→大宮/6時56分〜7時56分
・JR中央線各駅停車/97%/75位/代々木→千駄ヶ谷/8時01分〜9時01分
※JR川越線、中央本線(高尾以西)は集計対象外


東京メトロ東西線は、混雑率上位の「常連」となっている(2017年11月、草町義和撮影)。

 なお、日本民営鉄道協会は混雑率の指標を、180%で「体が触れ合うが、新聞は読める」、150%で「肩が触れ合う程度で、新聞は楽に読める」、100%で「定員乗車。座席につくか、吊り革につかまるか、ドア付近の柱につかまることができる」としています。

 国土交通省は、特に小規模な遅延を防止するためには「マナーアップを働きかけるなど利用者の行動に着目した取組が重要」といい、ソフト対策としてマナーアップの啓発活動や、ホームにおける乗降位置サインの変更、係員や警備員の増員などを挙げています。また、各事業者もホームドアの整備による安全確保の推進、「時差通勤」や「分散乗車」を促すといった活動も実施しています。