安藤政信

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 昨年、主演を含む映画が3本、ドラマが4本放送されるなど多忙を極めた安藤政信。今年も山田孝之プロデュースの映画『デイアンドナイト』(1月26日公開)のほか、「神酒クリニックで乾杯を」(BSテレ東、毎週土曜21:00〜)が放送中、WOWOWの「連続ドラマW それを愛とまちがえるから」(2月9日スタート、毎週土曜22:00〜)などが控えている。主演から脇役まで、強烈な個性を発揮し続ける彼が20代から40代までの変化を振り返った。

 北野武監督の映画『Kids Return キッズ・リターン』(1996)で鮮烈なデビューを果たし、社会現象を巻き起こした深作欣二監督作『バトル・ロワイアル』(2000)では冷酷な殺人マシンを演じた。純真無垢な役から、真逆に振り切った悪役まで徹底して役づくりに打ち込んだ。30代になった安藤は、二部構成の歴史大作『セデック・バレ』(2011)など中華圏の映画に積極的に出演。一時期は国内での露出が減ったものの、2018年には『劇場版 コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』『きらきら眼鏡』『スティルライフオブメモリーズ』でタイプの異なる役を演じ分けてみせた。最新出演作『デイアンドナイト』では児童養護施設の心優しいオーナーという表の顔と、もう一つの裏の顔を持つ複雑な役に挑戦している。

 『デイアンドナイト』は山田孝之がプロデュース、主演の阿部進之介が企画を担当した“俳優発信”の社会派サスペンスだ。2017年、安藤は山田から出演オファーを直接もらったものの、いつもなら断っていたほどクランクインまで余裕のないスケジュールだったという。

 「ここ1〜2年は『恋のツキ』(テレビ東京系)や『ブラックスキャンダル』(日本テレビ系)などのテレビドラマにも出て、忙しかったですね。(山田)孝之から連絡をもらったんですが、『きらきら眼鏡』を撮り終えた直後で、その前に『コード・ブルー』があり、『スティルライフ』の追加撮影もあり、それまでの俺だったら断っていたと思います。でも、『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』(2016)で孝之と共演したときに全力を出し切った感が持てず、孝之に“貸し”を作ってしまったなという気がしていたので、絶対に断りたくなかった」

 安藤が『デイアンドナイト』で演じたのは、タイトルが示すように「昼の顔」と「夜の顔」を併せ持つキャラクターで、作品の世界観を成立させる重要な役割を担っている。

 「俺が演じた北村がブレていたら、(作品そのものが)ダメでしょう。孝之と呑みながら打ち合わせをしていたらベロベロになってしまい、翌日になって初めて台本を読んだんですが、簡単な役ではないなと(苦笑)。それだけの役づくりをする余裕がなかったので、とにかくロケ地の景色の中に身を置いて、共演者たちとのやりとりの中で作っていくしかないなと腹をくくりました。実際、雪の積もる秋田に着き、寂れたスクラップ工場を眺めていたら、そういった景色がキャラクターの心情を表していることが分かって、作品の中に入っていけたように思います。雪山の渓流に頭からつかるシーンもありましたが、とにかくやるしかありませんでしたね(笑)」

 20代の頃は自分が演じる役にひたすら没頭したが、近年は作品全体を支えるような難しい役を好んで演じるようになった。サッカーで例えるなら、FWからボランチ的なポジションへのシフトチェンジ。40代という年齢に加え、30代後半にそれまで所属していた事務所を離れ、フリーで活動した経験が大きく影響しているようだ。

 「フリーになって、契約書を交わしたり請求書を用意したりとか、細かいこともすべて自分でやるようになり、それまでいろんな人たちに支えられてきたことを痛感したんです。連絡先も分からない状態の俺に、オファーしてくれる人がいたこともありがたかった。若い頃は気に入らないことがあると撮影中に勝手に帰ったりしたこともありました。どれだけ多くの人に迷惑を掛けたんだろうなぁと。もちろん今は自制していますし、作品の選り好みもしません。『印象に残る役でしたね』とか『作品を支える役でしたね』といった感想を、作品を観た方から言ってもらえると、すごくうれしいんです」

 結婚し、子どもが生まれたことで責任感が芽生えたという安藤だが、未だに自分の出演作は恥ずかしくて観ることができないという。これからも素晴しい作品に出続けるだろうに、映画ファンにしてみれば何とももったいない話である。(取材・文:長野辰次)