日本戦で先制点を挙げたショムロドフ(左)とサウジアラビアから2ゴールを奪ったカタールのアルモエズ・アリ(右)。今後、日本にとってやっかいな敵となりそうだ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)/Getty Images

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 トーナメント(大会)が広く認知され、出場国が増えると底上げ現象が起こる。これはどのレベルでも変わらない。

 ワールドカップも出場枠の拡大に伴い、逆に大陸間格差が解消されワンサイドの試合が減った。例えば、16か国で争われた1974年西ドイツ大会に唯一のアフリカ代表として出場したザイール(現コンゴ)は、グループリーグで絶望的なレベルの違いを思い知らされた。逆に他の3か国同士の対戦はすべて引き分けたため、ザイールから奪ったゴール数で{.罅璽乾好薀咼■硬性▲屮薀献襭嚇性スコットランド2点}順位が決まった。しかし最近では、逆にドイツ-ブラジル(2014年準決勝/7-1)のような屈指の大国同士の対戦で大きくスコアが動いている。EUROも枠が拡大し、前回2016年大会ではアイスランド、ウェールズなどが新たに旋風を巻き起こした。日本の高校選手権も各都道府県の代表が出揃うようになってから地域格差が消え、むしろPK戦が目立つ1〜2回戦より、無茶なスケジュールの影響を受ける決勝戦の方が点差が開く傾向が目につくようになった。

 こうした傾向を踏まえれば、アジアカップの出場国枠が広がるのは喜ばしいことだ。かつて北中米大陸はメキシコの独壇場だったが、逆にそんな時代は世界に出ると太刀打ちできなかった。1978年アルゼンチン・ワールドカップで北中米の出場枠は1か国しかなく、大陸代表として本大会に進んだメキシコは、グループリーグでチュニジア、西ドイツ、ポーランドを相手に3戦全敗、得点2・失点12で失意の帰国となった。だが米国を筆頭に、コスタリカなど世界に出ても戦えるライバルが登場して来ると、盟主メキシコの国際舞台での成績も安定するようになった。さらに欧州が大陸内でリーグ戦を整備し、他大陸との交流が激減する傾向などを考えても、日本が常に試合を重ねていかなければならないアジア内の国々のレベルアップは、自国強化の重要なポイントになる。
 
 今回のアジアカップで新興勢力という意味で最もインパクトを与えたのは、フィリピンとインドだろう。インドの方は、なんと1956年メルボルン五輪4位の実績があるので、古豪復活と表現するべきかもしれないが、スーパーリーグもできて躍進の兆しが見える。一方フィリピンはアマチュア時代に日本が最も「お得意さん」にしてきた国だ。日本が銅メダルを獲得したメキシコ五輪予選のスコアは15-0。大勝予告の韓国には5点差で粘ってくれたことが、日本の本大会出場につながった。それが今ではヨーロッパ育ちの選手たちを並べ、スベン・ゴラン・エリクソンを監督に招聘して韓国に1点差と肉薄。アジアでも楽に勝てる国が減ってきたことを印象づけた。
 
 だが近未来で本当に日本を脅かす可能性を示したのは、韓国、イランなど常連国を除けば、カタールとウズベキスタンである。

 特に次回ワールドカップ開催国カタールの攻撃陣の身体能力はアジアのレベルを超越している。逆に弱体化が顕著な北朝鮮は、個の競り合いの局面などでは完全に翻弄された。得点王争いを独走するアルモエズ・アリは、すでにフィニッシュの上手さ、強度、アジリティなどを含めた決定力では、ソン・フンミンを凌駕しているかもしれない。カタールは日本とは対照的に選手の輸入国なので、全員が国内でプレーし、それをスペイン人のフェリックス・サンチェス・バスが指揮している。日韓ワールドカップ当時の日本に似て、強化試合や合宿が自在に組み込めるので、短期的な代表強化には適している。中東開催も利点で、同グループのサウジアラビアとの力の差も明白。軽率な行為等で主力が出場停止などのアクシデントがなければ、頂点まで駆け上がる爆発力も秘めている。
 
 また若い世代の底上げが著しいウズベキスタンも大きな伸びしろのあるチームだ。日本戦は後半意識的に左サイドを崩されてから劣勢に回ったが、逆に攻撃に出る局面では主導権を握った。槙野智章を楽々と振り切ったショムロドフはすでにロシア(ロストフ)で活躍中のアタッカーだが、まだシディコフ、ハムダモフ、アリバエフら優れた素材が目白押しで、今後はJリーグの重要な取引先として注目を集めていきそうだ。

文●加部 究(スポーツライター)

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