無印良品が発表した「2019年2月期の業績見通しの下方修正」が話題となっています。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんは今回、自身の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』で、同社の最主力商品である生活雑貨の売上高が前年を下回った点を「看過できない出来事」と指摘。さらに競合するニトリやユニクロと互角に勝負するため無印良品が確立すべきコンセプトを提案しています。

無印良品、家具不振で業績下方修正。ニトリが一因か

無印良品」を展開する良品計画は1月9日、2019年2月期の業績見通しの下方修正を発表した。売上高にあたる営業収益は従来より3.5%少ない4,093億円(前期比7.8%増)とした。営業利益は従来より6.0%少ない470億円(同3.8%増)を見込む。海外は中国を中心に堅調だが、国内は冬物衣料が振るわなかったほか、生活雑貨が伸び悩んだため下方修正に至った。

冬物衣料の不振は暖冬が影響した。衣料品の既存店売上高は、10月が前年同月比0.4%増、11月が5.9%増とそれぞれプラスだったが、3〜8月が9.9%増だったことを考えると伸び悩んだといえる。衣料品に関して、10月と11月は客数は伸びたものの、客単価が大きく落ち込んだ。高単価になりやすい冬物衣料の販売が鈍かったことがこのことからも伺える。

もっとも、10月と11月に衣料品が振るわなかったのは無印良品だけではない。例えば「ユニクロ」は、9月こそ気温が低く推移したため6.0%増と好調だったものの、10月は10.0%減、11月は4.3%減とそれぞれ大きく落ち込んだが、その理由として「暖冬による冬物衣料の不振」を挙げている。「ファッションセンターしまむら」も同様で、10月は7.1%減、11月は12.3%減とそれぞれ大幅減となった。

冬物衣料の落ち込みは暖冬という外部要因が理由のため致し方ない面がある。一方、生活雑貨の不振は内部要因が主な理由となるため問題があるといえる。3〜11月の商品別の既存店売上高は、衣料品が8.2%増、食品が14.0%増とそれぞれ大きく伸びた一方、生活雑貨は0.3%減とわずかではあるが前年を下回った。生活雑貨は無印良品の最主力商品であり、その動向は業績に大きな影響を及ぼす。そのため最近の不振は看過できない出来事といえる。

生活雑貨のカテゴリー別の売り上げ動向(全店ベース)を見てみると、カテゴリーによって好不調がはっきりしていることがわかる。化粧品やトイレタリーが堅調だった一方、家具やインテリアが伸び悩み、ファブリックス(クッションなど布製品)が落ち込んだ。

ニトリに劣る訴求力

家具やインテリア、ファブリックスは好調なニトリと競合する分野だ。ニトリは近年、無印良品が得意とする都心部にも出店を強めている。例えば、15年4月に東京・銀座にある百貨店「プランタン銀座」に鳴り物入りで出店した。ニトリ初となる百貨店への出店ということで話題になった。その後も次々と都心部に出店を進めている。無印良品の生活雑貨が苦戦しているのは、ニトリに顧客を奪われた側面もあるだろう。両者の競合度は増しており、無印良品としてはニトリとの競争激化に備え、品ぞろえの強化を図りたいところだ。

品ぞろえの強化のほか、売り場における生活スタイルの提案力の強化も喫緊の課題だ。3〜11月は生活雑貨の客単価が前年同期比7.7%減と大きく落ち込んだが、売り場においてそれがうまくできていなかったことが影響した可能性がある。提案型の売り場にならず、訴求力が弱まっていたのではないか。私見だが、ニトリは売り場で生活スタイルの提案が高いレベルでできているが、無印良品はアイテム別の陳列一辺倒で、ニトリほどのうまさがない印象がある。

ニトリは提案する生活スタイルの案を複数用意し、それぞれを各売り場でうまく表現している。例えば、天然木のぬくもりが感じられる「ナチュラル」や、“和”の雰囲気が感じられる「ジャパニーズモダン」といった生活スタイルを提案し、それぞれの生活スタイルを表現するかたちで商品を適切に組み合わせて各売り場で陳列している。来店客は好みの生活スタイルが表現されている売り場で商品をまとめ買いすれば事足りる。無印良品もそういった提案力をニトリレベルにまで引き上げる必要があるだろう。

これを実現するには店舗の大型化が必要だ。アイテム別で陳列する売り場に加えて生活スタイルを提案する売り場を設けるとなると、それ相応の売り場面積が必要になる。ニトリがこれを実現できているのは、売り場面積を広くとれる郊外を中心に出店を進めてきたことが大きい。一方、無印良品は賃料が高い都心部での出店が中心だったので十分な売り場面積を確保することができず、生活スタイルを提案する売り場を構築することが物理的に難しかったといえるだろう。ただ、近年は大型店の出店を積極的に進めており、今後は変わっていきそうだ。

国内は伸び悩んだ一方、海外は好調だ。通期の業績見通しは、国内の営業収益が前期比0.9%増の2,368億円(従来予想は7.2%増)と微増にとどまり、営業利益は7.5%減の264億円と従来予想(同3.0%増)から一転して減益となる。一方、海外は営業収益が19.2%増の1,725億円、営業利益が26.8%増の204億円と従来予想を据え置いた。

海外は特に中国が好調だ。中国の店舗数は3〜11月の間に17店増えて246店となった。中国の全店の売上高は同期間に12.0%増収を確保。店舗数は18年12月〜19年2月に10店増やして256店にする計画だ。昨今は中国の景気減速が指摘されているが、良品計画は強気の出店を行なっていく考えだ。11月末の海外店舗数は482店で国内の423店上回る。国内は横ばいが続いているが、海外は中国がけん引するかたちで大きく伸びており、今後も成長ドライバーとなりそうだ。

「衣食住」すべてを扱う強みを活かす

良品計画は通期業績見通しの下方修正の発表と合わせて18年3〜11月期の連結決算も発表した。営業収益は前年同期比8.7%増の3,042億円、営業利益は3.9%増の348億円だった。純利益は30.2%増の303億円で、投資有価証券の売却が寄与した。

今後、国内では「食品」の充実化が成長のカギとなりそうだ。無印良品といえば、生活雑貨や衣料品のイメージが強いが、最近は食品が充実してきている。3〜11月期の食品の既存店売上高は前年同期比14.0%増と大きく伸びており、生活雑貨(同0.3%減)や衣料品(同8.2%増)よりも伸び率が大きい。食品は伸び代があり、今後の伸びが期待される。

良品計画は食品を強化するため、食品が充実した無印良品の店舗を次々と開発している。17年7月に旗艦店の「無印良品有楽町店」(東京・千代田、18年12月に閉店)をリニューアルオープンし、青果の販売(不定期販売)を始めた。18年3月には大阪の「イオンモール堺北花田」に食品をテーマにした大型店を開業し、青果や精肉、鮮魚の販売を始めている。同年4月には千葉県鴨川市に道の駅風施設「里のMUJIみんなみの里」を開き、農産物直売所を設けて青果を販売している。

18年9月には冷凍食品の販売を一部の店舗で始めた。おひたしなどの総菜や、雑穀米を使用したおにぎりなどのご飯もの、肉じゃがなどの煮込みものなどを扱っている。日本冷凍食品協会によると、17年の冷凍食品の生産量は過去最高だった16年と比べ3.0%多い160万トンとなり、金額ベースでは4.5%増の7,180億円と好調だった。背景には、共働き世帯の増加で食事を手軽に済ませたい消費者が増えて「時短需要」が拡大していることがある。無印良品としてもそういった需要を取り込むことで売り上げの拡大を図りたい考えだ。

無印良品は「衣食住」の3分野すべての商品を扱っていることが特徴だ。競合のユニクロやニトリなどカテゴリーキラーにはない大きな強みとなっている。ただ、食品はこれまでそれほど強くはなかった。現在の食品の売り上げ構成比は1割にも満たず、後回しになっていた感が否めない。これからは、食品を強化することで「衣食住」のバランスをよくして独自のコンセプトを確立し、ユニクロやニトリといった競合に対抗したい考えだ。

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