2018年春に開業した新業態「アルペンアウトドアーズ」。不採算店を新業態店へ転換を進めていく(写真:アルペン)

「スポーツデポ」「アルペン」「ゴルフ5」などのスポーツ用品店を展開するアルペンが1月9日、45〜64歳未満の社員を対象に、社員(アルペンと子会社ジャパーナ)の約1割に相当する300名程度の希望退職者を募集すると発表した。

アルペンと言えば、1972年に名古屋市でスキーのプロショップとして設立以降、スキーブームともに成長してきた会社だ。テレビCMの影響もあって、社名を聞くと冬のゲレンデを連想する人も多いだろう。

ただ現状、スキーやスノーボードなどウィンタースポーツ用品のグループ全体の売り上げに占める割合は5%未満。過半を占めるのは、野球、サッカー、スポーツアパレル、アウトドアなど一般スポーツ用品だ。

7〜9月期は上場来初の赤字に

アウトドア関連は好調ながら、野球やサッカー、テニスなどの競技スポーツはここ数年、中学や高校の部活に参加する学生が減少し、市場が縮小している。加えて、ネット販売との競争で値引き販売が常態化。2018年は販売ピーク期である夏場に猛暑や豪雨、台風などの自然災害が重なったことで、レジャー関連用品の需要が低下し、業績悪化に拍車をかけた。直近2018年7〜9月期の決算は、2006年の上場来初の赤字に転落している。

同業で「スーパースポーツゼビオ」「ヴィクトリア」などの店舗を展開するゼビオホールディングスなどと比べると、アルペンは自社ブランド商品の占める割合が全取り扱い商品の4割と高い。


アウトドア専門店の内部。週末は車列ができるほどの人気に(写真:アルペン)

アルペンは創業当初から自社商品の開発に取り組み、ウィンタースポーツ用品では「キスマーク」や「ハート」、ゴルフウエアの「コラッジオ」、競技スポーツ用品からスポーツカジュアルウエアの「イグニオ」など11のブランドを展開。スポーツメーカーの商品と比べて低価格でありながら、品質にこだわった競争力のある商品で利益を稼いできた。

だが、ユニクロ(ファーストリテイリング)や、最近では作業服のワークマンなどが高機能、低価格のスポーツウエアやアウトドア商品を展開し人気となっている。スポーツ用品販売のボーダーレス化は加速している。

5年ほど前まで、アルペンの売り上げの約3割を占めてきた利益率の高い自社ブランド商品は直近、2割程度にまで落ち込み、2013年度117億円だった営業利益は18年度30億円と、上場来の最低水準にまで収益力は悪化している。今回の希望退職者募集はこのコスト構造を改善するためであり、アルペン本体と自社ブランド商品開発を行う子会社ジャパーナ社員の約1割にあたる希望退職者募集に踏み切った。


前2018年6月期の決算説明会で、水野敦之社長は「今2019年6月期は粗利益率にこだわる。プライベートブランドの売上高の回復を図り、街着としても使えるTシャツ、スウェットなど汎用性の高いスポーツカジュアルやアウトドア領域のアパレルを強化する」と、業績挽回に向けての意気込みを語っていた。差別化できる強い自社ブランド商品の開発に向け、商品1つ1つの素材の見直し、企画内容やデザインの精査だけでなくバリューチェーンの根本的な見直しにも着手していくという。

キャンプ用品、山岳用品専門店で挽回

業績挽回に向け、不採算店舗の統廃合だけでなく、新業態の出店にも意欲的だ。2018年春に愛知県春日井市の老朽化した「アルペン」店舗を改装し新規オープンしたのが、キャンプ用品の専門店「アルペンアウトドアーズ」だ。テントだけで300種類超という品ぞろえで、実際テントを張ってみることもできる。他店に置いていない商品を手に取ることができるとあって、ほぼ値引きなしの定価販売でありながら、土日は駐車場に入るための車が列をつくる人気ぶりだ。


アルペンマウンテンズでは、ボルダリングを体験できる壁も設けている(写真:アルペン)

2018年10月に名古屋市にオープンした新業態店「アルペンマウンテンズ」では、ボルダリングやトレイルランニング、バックカントリーなど専門的な山岳用品から、街着としても使えるアウトドアウエアまで280ブランド、5万点を販売している。店内には、床から天井まであるボルダリングの壁を設置し体験できるようになっている。国内に3台しかないブーツフィッティングマシンを置き、専門知識が豊富な店員に相談しながら商品を選べるなど、ネット購入にはない実店舗の価値を高めた店舗となっている。

前2018年6月期は、例年より早く訪れた11月からの寒波が後押しし、ウィンター用品が好調だったが、2月発表予定の2018年7〜12月期決算はその反動があり、「前年比の営業減益幅は期初想定より拡大する可能性があり、厳しい状況」と会社側は説明している。今回のリストラ断行が吉と出るか凶と出るか。結果は来期以降の新業態の育成、自社ブランド商品の開発力にかかっている。