先制点を与えても吉田らロシアW組に動揺は見られなかった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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[アジアカップ・グループリーグ第1戦]日本 3-2 トルクメニスタン/1月9日/アルナヒヤーン・スタジアム

 終ってみれば、3-2の逆転勝ち。
 情報が少ないトルクメニスタンとはやりにくさがあっただろうし、日本の立ち上がりも悪かった。親善試合では良い面が多く出ていたので、もうちょっとやれる感を持っていたのだろう。なかなかうまくいかないなぁというのは試合後の森保一監督の渋い表情からもうかがい知れたが、それでも初戦の勝利は04年中国大会以来である。

 国際大会の出足としては、上々だ。
 この試合で改めてその存在の大きさを見せたのは、ロシアW杯のメンバーだった。トルクメニスタン戦はスタメン中7名がロシアW杯経験者。彼らが違いを見せたのは、26分にアマノフのゴールで失点した後の試合運びだ。

 普通は、初戦で相手に先制されるといくらかの動揺が感じられるのだが、ロシアW杯での経験が自信となっているのだろう。シュート自体はスーパーゴールなので、この1点は仕方ない。そう割り切った吉田麻也らは動揺をまったく見せず、平然とプレーした。それが冨安健洋や堂安律ら若手選手に伝播し、彼らは失点後も堂々とプレーしていた。

 戦い方も中東の環境を活かして、賢く戦っていた。36℃と気温が高い中、日本は前線をワイドにして、パスを回し、相手の体力を序盤から奪って行った。ビルドアップの精度が低く、時々、引っかかってカウンターを受けたが、それが後半に活きた。トルクメニスタンは動きが落ち、ギアを上げた日本の動きについていけなくなっていた。足に乳酸がたまり、ボックス内に追い詰められ、内に入るパスに反応が遅れてきていたのを、大迫勇也ら攻撃陣が見逃さなかった。
 
 エースがゴールを決めればチームの雰囲気は盛り上る。
 さらに若手1番株の堂安律も3点目を決めたことで、攻撃陣は良いムードになった。苦しんだが、主力が点を取り、勝点3を獲れたことはチームを勢いづけるだろう。
 
 ただ、今後を勝ち抜いていくために放っておけないポイントもある。
 
 2失点は、崩された形ではないので、それほど気にすることはない。
 それよりも気になったのは、攻守の切り替えだ。
 FIFAランク127位のトルクメニスタンのカウンターは、ランキング下位のレベルとは思えない迫力と鋭さがあった。5バックにして守備のブロックを敷き、球際に厳しく、インターセプトを狙って、カウンターを仕掛けるプレーは非常に日本に効いていた。
 それを許していたのが、攻から守備の切り替えの緩さだ。日本は相手が格下ということで甘く見ていたのか、それがロシアW杯の時より10倍ぐらい遅かった。攻守の切り替えの早さこそ、日本のウリであり、生命線だったはず。これからの対戦相手は個の能力も高くなり、カウンターの質も上がっていく。最終ラインとボランチだけではなく、全体でその意識を高めていく作業が必要だ。
 
 もうひとつ気になったのは、サブ組の意識である。
 76分、相手GKが痛み、給水の時間になった。ピッチサイドに選手が給水のために集まってきたが、その時、ベンチからビブスを着たままペットボトルの水を選手に渡していたのは、三浦弦太だけだった。
 
 大会を勝ち進み、優勝するためには「一体感」が必要なのは間違いない。それは過去優勝したチームのどの選手も口々に語っている。サブ組は「自分たちが支えるから全力でピッチでプレーしてくれ」というメッセージを練習でレギュラーの選手にぶつけ、彼らはサブ組のその意気を感じて『やらないといけない』と思い、必死にプレーする。もちろん、練習だけではなく、試合でも給水やタオルを出すなどあらゆるサポートをする。そうした補完関係を築き、勝ち続けることでチームは、ひとつにまとまっていく。

 だが、この時のシーンには、サブ組が試合でプレーする選手をサポートするという意識があまり見られなかった。選手が給水に来た時、コーチよりもサブの選手から水をもらい、一声かけてもらうことがどれほどの力水になるのかを、サブのメンバーは理解していないのだろうか。
 
 ベンチには、青山敏弘や乾貴士がいる。
 04年中国大会での藤田俊哉、三浦淳宏らのようにベテランが先頭に立ち、ピッチ戦っている選手をサポートするムードを作っていくことが求められる。
 
 ただ、大会は始まったばかり。次のオマーン戦では途中出場の選手が結果を出してレギュラーとサブをつなぎ、チームの一体感作りを進めていってほしい。
 
文●佐藤俊(スポーツライター)