後半に3ゴールを奪ってトルクメニスタンに勝利。しかし多くの課題は残った。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 アジアの戦いはかくも難しいものかと、痛感させられるゲームだった。

 UAEで開催されているアジアカップの初戦でトルクメニスタンと対戦した日本は、大迫の2ゴールなどで逆転勝利を収めた。しかし格下と言える相手に大苦戦(FIFAランキングは日本は50位、トルクメニスタンは127位)。前半に先制を許し、3-1で迎えた79分にはPKで1点差に詰め寄られるなど、「ラスト8分は正直、これはヤバいなと思いました」とキャプテンの吉田麻也が苦笑いした通り、薄氷を踏むような白星スタートとなった。
 
 苦戦の要因はなんだったのか。吉田は「自分たちが本当にこの試合に懸ける決意と覚悟を持って臨めたのか自問自答しなければいけない結果になったんじゃないかと思います。入りは非常に悪くて、ミスもたくさん起きましたし、アンラッキーな形、もちろん素晴らしいゴールではあったと思いますけど、失点してから自分たち自身で試合を難しくしてしまいました」と振り返る。
 
 今大会は他グループでオーストラリアやタイが敗れるなど波乱の幕開けとなっただけに、選手たちは初戦に向けて「気を引き締めなくてはいけない」と口にしていたが、その危機感が逆に世代交代を果たしたばかりのチームから思い切りの良さを奪ってしまったのかもしれない。
 
 日本は丁寧にボールをつなぎながら、縦パスを打ち込んで中央を固めるトルクメニスタンを崩そうと試みたが、パスの微妙なズレやミスが多く、ボールをカットされて警戒していたはずのカウンターでピンチを迎えた。

 26分の失点シーンも同様の展開だ。堂安律から柴崎岳へのボールがズレ、相手にかっさらわれると、その流れからトルクメニスタンのキャプテン、アマノフに豪快なミドルを叩き込まれた。
 
 前半の状況をボランチの柴崎も「縦パスを配給できてもスペースが少なかったです。なかなかクオリティが上がらず、簡単なミスもありました。このチームでの初の公式戦ですし、フレンドリーマッチとは違う勝手もあったんだと思います」と語る。
 
 
 ただ日本はハーフタイムで修正ポイントを洗い出し、56分と60分には大迫が連続ゴール。さらに71分には堂安が3点目を奪い、前半は苦しんだトルクメニスタンの守備網を破ってみせた。前半と後半の変化を柴崎はこう説明する。
 
「(ハーフタイムでは)メンタル的な部分でチームとして焦らないという点は共通意識として持ちながら、攻撃の部分は綺麗に崩すというよりは前線へのアバウトなボールでも良いのではないかという意見がありました。そこからセカンドボールを拾っての2次攻撃を意識しましたし、実際に後半はそういったシーンが作れました。幅を持ったサイドチェンジも何回かありました。そこで5バックのギャップができて、足もとへのボールも入りやすくなったのかなと思います」
 
 また長友もハーフタイムの修正がこのゲームのポイントだったと話す。

「引いた相手に対して前半は綺麗なサッカーをしようとしすぎました。あれじゃ相手にとって、まったく怖くないです。綺麗なサッカーだけでは勝てません。そんなに甘くないですし、そんなに僕らはサッカーが上手くないです。ただ後半はガラッと戦い方を変えて、サイドから仕掛けたり、クロスを上げたり、ロングボールを入れてセカンドボールを拾ったりと、幅が出てきました。綺麗なサッカーだけでなく、泥臭いサッカーを織り交ぜて、逆転できました。修正できたのは良かったです」
 
 そして長友はこの苦戦が逆にチームの成長につながるのではないかと続けた。
 
「(ベスト8で敗れた)2015年(オーストラリア大会)の時は上手くいきすぎて、ちょっと決勝トーナメントに行って気が引き締まらなかったです。皆、甘く見てしまった部分はあったと思うし、(優勝した)2011年(カタール大会)は厳しい戦いを通して成長できた日本代表を僕は見てきました。今回初めて経験した選手はアジアカップは甘くないんだなと感じたはず。これで精神的にひとつになっていくと思います」
 
 まだチームとして経験の浅い森保ジャパンが、初の公式戦、そして大事なアジアカップの初戦をモノにできた意味は大きい。ここで慢心してはいけないが、常々「成長と結果」を求めてきた森保一監督にとっては、チームをステップアップさせるための良い勉強の場になったはずだ。
 
 ただこの1勝の価値を活かすためにも、大事になるのが1月13日に行なわれるオマーンとの第2戦だ。このゲームで同じような失敗を繰り返すようでは、アジアカップの覇権奪回は難しいミッションになってしまう。ひとつずつ課題をクリアしながら、チームとして成長できるかが鍵になる。
 
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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