大量に食べても太らない人のことを「どうして?」「羨ましい」と思ったことはありませんか?確かに存在する「食べても太らない人」のメカニズムを解説し、「太りにくい食事の仕方」を教えてくれるのは、メルマガ『届け!ボディメイクのプロ「桑原塾」からの熱きメッセージ』の著者、桑原弘樹さんです。冬にこそ効果が上がるというその方法とはどんなものなのでしょうか。

食べるとすぐ脂肪。「痩せの大食い」は本当にある?

Q.痩せの大食いという言葉がありますが、実際私の友人は大量に食べるのに肥満になりません。特段、運動をしているわけでもないのです。ところが私の場合は、週に数回ジムにも通っているにもかかわらず、気を許すとすぐに脂肪がついてしまい、危機感を感じています。 何か原因があるのでしょうか。(43歳、男性)

桑原塾長からの回答

幾つかの理由が絡んでいるかとは思いますが、実はたくさん食べるという行為はたくさんエネルギーを消費するということにも繋がるのです。これをDIT(食事誘発性体熱産生)といいます。

このDITが高い人は、食べても太りにくいという現象となりやすいと思います。DITは食事をすることで代謝が上がり、エネルギーを消費することです。たくさん食べる人であっても痩せているという人は、その逆のあまり食べないのに太ってしまうという人に比べて、食後の酸素摂取量が多いことが分かりました。 酸素摂取量はエネルギー代謝の指標なので、これが大きいということはエネルギーをたくさん消費しているということでもあります。つまり、食べる量が多くても酸素摂取量が多ければ、それだけエネルギーを大量に消費しているということになります。これがDITと密接な関係にあると考えられるのですが、DITは大きく二つの要素で成り立っています。

ひとつは視覚、嗅覚、味覚といった食事そのものを行うことで神経が興奮してエネルギー代謝が上昇するというものです。つまり、食事は楽しく美味しくする方が実際に代謝も高くなるというわけです。

もうひとつは、実際の食事の消化吸収の際にエネルギー消費がされていくことによる代謝の高まりです。一般的には、食事のボリュームが多いと代謝があがり、少ないと低くなるということになります。この点だけで考えるならば、先の痩せの大食いという現象も理にかなっているといえるかもしれません。

素質だとか、体質などと呼ばれる中に、このDITが低いために太りやすいとか、逆にDITが高いから太りにくいという原因が入っていることは間違いなさそうです。肥満の人はDITが低いという仮説が成り立ちますが、これは実際ラットなどでの実験でも証明されています。

実験用に用いられる肥満の遺伝子をもったラットは、通常の餌を食べても肥満になっていきます。通常のラットを低温の部屋で飼育をすると、当初は寒さによる震えで熱を作り出して、やがて通常の食事によって体熱産生を行います。ところが肥満遺伝子をもった元々太りやすいラットを同じ条件下で飼育した場合、震えて熱を作り出しても、その後、食事による熱産生が行われずに死んでしまうそうです。

これは肥満体質の人のDITが低いということの一つの証と言えそうです。一方で、DITは努力によって上げていくことも可能です。単純にたくさん食べることでDITは上がります。また、代謝は既に高い時ではなく、低い時に食べることでより効率よく上がります。

問題は何を食べるかということです。三大栄養素とはエネルギーをもつ栄養素ということなので、DITは三大栄養素によってあがるわけですが、その割合については脂質が7%、糖質(炭水化物)10%、タンパク質が30%となっていて、圧倒的にタンパク質が効果的といえます。

また、体内では過剰摂取分は脂肪として蓄えられますから、タンパク質も糖質も脂肪へと変化する可能性がありますが、いずれもその過程において20%程度エネルギーとして使われていきます。ところが、脂質に関してはほぼ変化なくそのまま脂肪細胞に蓄えられてしまうので、そこでのエネルギー消費は行われません。

つまり、タンパク質はDITを上げることによって太りにくく、一方脂質はDITを上げにくい栄養素ということになり太りやすいわけです。加えて脂質は1gあたり9kcalと圧倒的な高カロリーという点も影響しています。

DITを上げるには、一般的にもっとも代謝が低い朝食の時間帯にタンパク質のボリュームを伴って摂取するのが効果的となります。ただし一般食材としてのタンパク質の多くは脂質を含んでいるという点、そして腐るという特徴から加熱などの調理を必要とする点から、朝食にタンパク質を十分量摂取することは意外にハードルが高いのです。ここでもプロテインの存在価値があるといえるでしょう。

タンパク質の摂取という以外にもDITを上げる方法はあります。ひとつは温かい状態にして食べるということです。例えば、温かいスープを飲めば体温は上がり、代謝もあがります。また、同じ温かいものの場合は、脂質よりもタンパク質の方が効率がよく、これは消化のためのエネルギー消費がタンパク質の方が高いことによるものです。

冬の季節に温かいタンパク質を食べるのは、DITという観点からも正しいことになります。そして、意外に感じるかもしれませんが、食べ物は味覚以外の影響も大きいという点です。例えば、鼻が詰まった状態で味が分からないというケースは、経験があるかと思います。

味覚以外に嗅覚が相当に影響しているということです。また、器の色や材質によっても食欲は左右されます。高級料亭で使われる器と給食の容器では、同じ食材でも美味しさに差を感じるのです。青色は食欲を抑える色と言われていますが、青色のサングラスをした状態で食事をすると、いつもよりも食べられないという現象も起きるのです。

食べ物への反応は五感すべてで行われていて、それがうまくいくと、ノルアドレナリンやアドレナリンなどの興奮系の神経伝達物質が活発となり、ひいてはエネルギー代謝が促進されていきます。つまり、より美味しく食べるという行為自体がDITを上げる方向に繋がっていくというわけです。

また、カプサイシンやカフェインといった成分も、同様にアドレナリンの分泌を刺激しますから、DITを上げるのに役立つといえます。

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