急激な「最低賃金上昇」の悪影響か…韓国で65年間続く“手当”が議論対象に

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韓国では新年に入って、最低賃金の引き上げ問題に続き、“週休手当”の議論が過熱している。

週休手当とは、1週間の規定された勤務日数をすべて満たした労働者に支給される有給休暇手当のこと。韓国では一日3時間、週15時間以上働いた労働者は、週休日に働かなくても、一日分の日当を受けとることができる。例えば、一日8時間、週5日勤務すると、計40時間分の賃金を受け取れる計算になるが、実際はそこに週休手当の8時間分が加わり、計48時間で計算される。

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韓国政府は12月31日、最低賃金(8350ウォン=約835円)時給算定時、週休手当と週休時間を含む最低賃金法施行令の改正案を最終議決した。

韓国経済界と事業主らは、今回の施行令改正について強い不満を表した。最低賃金引き上げに続き、週休手当を最低賃金算定基準に含めると、急激な賃金上昇で経営悪化が懸念されるという理由からだ。

一方、韓国政府は「今回の施行令の改正はこれまでの行政慣行を明文化したものに過ぎず、企業の負担が増えるわけではない」と経済界の不満を一蹴した。最低賃金の上昇で浮上した今回の“週休手当論議”が、悪化した経済状況とかみ合い、両者の攻防はさらに拡大する見通しだ。

韓国経済界は、週休時間の算入を反対

今回の施行令改正案は、給料を時給に換算して最低賃金を満たしているか計算するとき、分母となる勤務時間に週休時間を含むように求めるものである。分子となる月給に対して、分母となる勤務時間が既存の174時間から、35時間増えた209時間になる。相対的に時給が下がることで、最低賃金違反のリスクが高まることになる。経済界が反発する理由だ。

特に小規模な事業主らは最低賃金の上昇に続き、週休時間まで最低賃金法に明文化されると、法違反者が増えて、それを避けるための“分裂雇用”(週14時間だけ働くように何人も雇用すること)が増加すると強く不満を訴えた。憲法裁判所に違憲命令審査を請求するとして、強い反発を予告している。

とある零細事業主は「週休手当を含めると実質的な最低賃金は1万30ウォン(約1030円)となり、4大保険などを考慮すると、1カ月の支給額は200万ウォン(約20万円)を超えることになる」とし、「これは中小企業など正規職の初任給水準で、事業主の立場としては下げることを考えるしかない」と話した。

基本給を減らした奇形的な賃金体系が問題

一方で、大企業や中小企業の不満は、自ら招いた結果との指摘も多い。

基本給の割合を最小限に抑え、代わりにボーナスなど各種手当を増やし、複雑で奇形的な賃金体系を作り出したことが問題だという指摘だ。最低賃金を遵守しているかどうかを選別する基準は、基本給である。初任給が5000万ウォン(約500万円)を超える大企業社員が最低賃金違反にかかる理由だ。

企業が基本給を最小限にするのは、延長勤労手当などを決定する通常賃金が基本給を基準に決定されるからである。企業としては、基本給を少なくすることで延長勤労手当を減らすことができるし、基本給ではない各種手当は容易になくすこともでき、さまざまな面で有利である。

韓国政府は今回の施行令改正案に経済界の意見を取り入れ、定期賞与と福利厚生費を最低賃金の計算に含むようにした。つまり企業は、分子である基本給を分母である所定労働時間と割って計算する最低賃金の計算時に、分子の部分を育てることができるようになった。そのため大企業らの反発は説得力に欠けるという指摘だ。

韓国政府、週休手当は「法定手当」...企業負担は増えない

韓国政府はまた、「今回の施行令の改正は30年間行ってきた行政の指示を明文化するだけで変わるところはない」という確固たる立場だ。

ソウル市内のスーパー

今回の改正は、時間当たりの最低賃金を換算するとき、週休手当が支給される時間(週休時間)を含めるもので、これまでに存在しなかった「週休手当」を新たに作り出したものではないという話である。

イ・ナギョン国務総理も12月31日、「週休手当は1953年の勤労基準法制定以来、65年間も持続された法定手当」とし、「今回新たに追加されるものではない」と強調した。

最低賃金引き上げの負担…「適用猶予などの緩衝地帯も」

専門家は、施行令の改正をめぐる今回の論議は実質的に、週休手当に関する議論ではないと口をそろえている。

高麗大学労働問題研究所キム・ソンヒ教授は、「施行令の改正の趣旨は、これまであいまいに表現していた部分を整備するということで、何も変わることはなく、新たに負担が発生するものでもない。企業の負担が大きくなるという主張は誇張」と指摘した。

専門家は、低迷した経済状況と最低賃金引き上げの問題がかみ合いながら、週休手当の議論が巻き起こったと分析した。

また最低賃金引き上げの負担を減らす補完策を用意して、週休手当については零細企業に限って緩衝地帯をおくことが必要だという意見もある。

西江大学経営学部イム・チェウン教授は「大企業、中小企業は事実上、関連規定を守ってきただろうし、現実的には零細事業者がこれを遵守することに問題の核心がある」とし、「施行令を改正しても従業員5人未満の零細事業所には適用を猶予するなどの緩衝地帯が必要だ」と強調した。