降機させられた車椅子の男性(画像は『Metro 2019年1月2日付「Disabled teenager ‘thrown off Ryanair flight after wheelchair sparked concerns’」(Picture: CEN)』のスクリーンショット)

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障害を抱える人にとって、飛行機での旅は決して容易ではないだろう。このほどドイツ在住の電動車椅子で生活している19歳男性が、アイルランドの格安航空会社「ライアンエアー」に乗り込んだところ、乗務員から降機を命じられた。『Metro』などが伝えている。

ドイツのアーヘンに住むノエル・ディアズさん(19歳)は12月24日、クリスマスと新年をスペインのアリカンテにいる親族らと過ごすため、父親のホゼさんと一緒にドイツのケルン・ボン空港へ向かった。

ノエルさんは筋肉が部分的もしくは完全に痩せて力がなくなる筋萎縮症で、12歳の時から車椅子生活をしている。今回、電動車椅子での移動になるため、出発日の何週間か前に航空券を予約した際には、電動車椅子のバッテリーのタイプを正確に必要書類に明記して航空会社に提出した。

しかしシートベルトを装着し離陸直前という時になって、ホゼさんとノエルさんはライアンエアーから降機を命じられた。乗務員から「電動車椅子は爆発の危険性もあり、安全上の理由から輸送はできない」と伝えられた父子はその場で抗議したが、結局飛行機を降ろされてしまった。

「ライアンエアーの職員は冷たく、無防備な息子を飛行機の座席から降ろし駐機場へ追いやったのです。」

楽しみにしていた家族らとのクリスマスや新年を迎えることが叶わなくなった父子は、なす術もなく自宅に戻るしかなかった。ホゼさんによると、ライアンエアーは2人の航空券代120ユーロ(約15,000円)を返金することを拒否したそうだ。今回の件がトラウマとなったノエルさんは「金輪際、飛行機には乗らない」と口にしているようで、母のナタリアさんは「このような経験はしたことがありません。夫と息子は、事前にライアンエアーに全てを申告し問題なしとされていました。フライト当日の搭乗券にも、電動車椅子利用者であることが明示されてあったんです。息子がこの出来事を乗り越えるにはきっと時間がかかるでしょう」と語っている。

航空専門家ディーク・ブッセ氏によると、乗客は事前に航空会社に申し出ることを前提としたうえで、ゲル電解質を用いたリチウムイオン電池を使用したデバイスを持ち込むことが許可されているという。ブッセ氏は「しかし今回の場合は、車椅子のパワーや重量、サイズが規定範囲を超えていたことも考えられます。いずれにしても、飛行中はバッテリーを外した状態にしなければならなかったのでは」と話している。

なお、ライアンエアーのスポークスマンは「フライト中は安全のため、車椅子のバッテリーは取り外されていなければなりません。しかしながらお客様のバッテリーは取り外された状態ではなかったため、私たちは次の可能なフライトをオファーしました。ご迷惑をおかけしたことは深くお詫びいたしますが、乗客と機体の安全は我々にとって最優先すべきことです」と述べている。

画像は『Metro 2019年1月2日付「Disabled teenager ‘thrown off Ryanair flight after wheelchair sparked concerns’」(Picture: CEN)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)