対談する森保一監督(右)と二宮清純氏

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 いよいよ1月5日に開幕が迫ったAFCアジアカップUAE2019。西野朗前監督の下、2大会ぶりのベスト16入りを果たしたロシアワールドカップを経て、日本代表の指揮を託された森保一監督が就任後初の国際大会に臨む。2018年に戦ったキリンチャレンジカップの5試合は4勝1分の無敗。10月16日にはロシアワールドカップ8強のウルグアイを4-3で下すなど、順調な滑り出しを見せている。12月25日発売の『週刊現代』(講談社)2019年1月5・12日合併号に、森保監督を現役時代から取材するスポーツジャーナリストの二宮清純氏が特別寄稿。ゲキサカでは『週刊現代』本誌におさまらなかった部分も含め、2人の対談を掲載する。

二宮 ウルグアイ戦は3点を取られながらも4点を取って勝ちました。見ている私たちからすると非常に面白い試合でしたが、監督としても面白い試合だったのではないですか?

森保 そうですね。FIFAランキングで見ればウルグアイの方が上のチームですし、これまでの歴史や結果を見ても、彼らの方が上だと思います。ただ、我々も日本代表としてベスト16の壁を越え、ワールドカップでベスト8以上に行くことを目標としている中で、格上のチームに対してただチャレンジするのではなく、彼らと同じ目線で戦うことが必要です。その意味で選手が堂々とした戦いを見せてくれたことが何よりも良かったですね。勝つことはすごく大切だと思いますし、勝つことにこだわってやっていく中で勝てたことは良かったですけど、それ以上に選手が堂々とアグレッシブに戦ってくれたところが良かったと思います。

二宮 若い選手のプレーを見ていると、まったく気後れしていない感じですね。

森保 その言葉がピッタリかもしれません。気後れせずに戦ってくれたというところは、私の中で今後がすごく愉しみだなというふうに思いました。

二宮 南野拓実選手はウルグアイ戦でも2点取りましたが、彼の評価というのはいかがですか。

森保 現代サッカーにすごく合っている選手だと思いますね。攻撃が特徴の選手ですが、チームのためにハードワークできますし、守備に関わりながら得点も奪える。ポジションは違いますけど、タイプとしてはクロアチアのモドリッチに近いかもしれないですね。

二宮 それはすごい評価ですね。

森保 モドリッチは2018年のFIFA年間最優秀選手に輝きましたが、これまで賞を取ってきたメッシやクリスティアーノ・ロナウドと比べると、攻撃だけでなく、献身性を持ってチームのために戦える選手です。チームのためにハードワークしつつ、個としても高いレベルのプレーを見せる。モドリッチが今回、受賞したことは、現代サッカーにおけるスーパースター像がちょっと変わったような気がしています。

二宮 堂安律選手を見ていると、中田ヒデ(英寿)が出てきたときをちょっと思い出しました。代表デビュー戦だった韓国戦で、相手にぶつかっても倒れない。これは強いなと思ったんですけど、堂安選手も強いですよね。

森保 強いと思いますね。気持ちも強いです。彼らは志を持って海外に出て、そこで成功したいというハングリーな気持ちを持っています。それが代表での戦いにも表れていたと思います。海外の当たりの強さに負けず、その中でどうやってプレーするのかというところを身に付けて、それを代表でも見せてくれているのかなと思います。


二宮 中島翔哉選手は何かやってくれそうな雰囲気を持っていますよね。あそこにボールが行くと何か起こるんじゃないか。そういう楽しみがあります。

森保 本当にそうですね。攻撃のアイデアをすごく持っている選手だと思いますし、相手に囲まれていても、それをあまりプレッシャーに感じていないようなところがあります。

二宮 プレッシャーを楽しんでいるような感じですよね。

森保 楽しんでいるという言葉がピッタリですね。

二宮 サッカー小僧みたいな感じですよね。シュートも上手い。

森保 貪欲にまずは自分がゴールを奪う。得点に絡むということを一番に考えている選手だと思います。得点を奪うための上手さを持っている選手ですね。

二宮 森保さんは現役時代はボランチだったわけですが、同じボランチの遠藤航選手あたりを基準にして見ているのかなと思ったんですけど、いかがですか。

森保 基準といいますか、自分がやってきたポジションでもありますし、ディフェンシブなボランチというのは自然と見ているところはあります。私には守備しかなかったですけど(笑)。今の選手は守備で強く行きつつ、攻撃にも絡んでいく。まさに遠藤はそういう選手ですね。その意味では自分が現役でやっていたころとはレベルが違うなと思います。

二宮 そんなことはないでしょう。ハンス・オフト元日本代表監督が言ってましたが、森保さんはディシジョンスピードが速いんだと。森保さんについてオフトさんに聞いたとき、僕が技術やスピード、体力について聞いたら、「それはサッカー選手にはあまり重要ではない」と言ったんですね。それでは彼は何が一番優れているのかと聞いたら、シンキングスピードだと。考えるスピードがチームで一番速いんだと言っていて、そのとき僕はシンキングスピードというのはいい言葉だなと思ったんですよね。

森保 技術がない分、判断力を速くして次の展開につなげていくというのは、自分がサッカーの世界で生き残っていくために必要なことだと思っていたので、そこを磨いていったというのはあると思います。


二宮 ウルグアイ戦に話を戻すと、3点取られても4点取ったことの方が僕はいいと思うんですけど、一方で課題も残ったと思うんです。カバーニあたりが突破を仕掛けてくると、なかなか止められないですよね。

森保 そうですね。

二宮 ああいうプレーを日本の勤勉さや連携で止めるとなると、どのような課題がウルグアイ戦で見えてきましたか?

森保 一つは個の力。もっと上げていきたいと思います。ロシアのワールドカップで日本代表がいい戦いをできたというのは、個のレベルが上がって、かつチームとしての連携、連動があったからだと思っています。その中で、二宮さんがおっしゃるとおり、カバーニのような選手が個で突破してくるときには、局面の1対1で勝てるような強さをさらに身に付けていかなければいけないなと思っています。プラス日本の良さであるカバーし合う連携、連動ができれば、世界とも対等に戦っていけると思いますし、より高いところにいけると思っています。

二宮 チームを見ていると、やはり青山敏弘選手が効いているなと思うんですけど、サンフレッチェから一緒にやってきて、彼はある意味、森保イズムの体現者ですよね。彼に期待するのはどういうところですか。

森保 森保イズムというのがどういうものなのかは説明しづらいですが、広島で長く一緒に戦ってきた中で、私がやろうとすることをピッチで体現してくれる選手だと思っています。大前提として代表に選ばれるレベルの選手でなくてはなりませんが、私がやろうとすることをプレーで他の選手に伝え、チームに浸透してもらえればと思います。

二宮 ある意味、分身と言ってもいいんですかね?

森保 メンタル的にはそうですね。プレーに関しては彼の方が全然上ですよ。自分なんかよりよっぽどレベルの高いことをやっています。彼はスーパーなワンタッチパスであったり、見ていて美しいと思うような華麗なプレーも見せますが、泥臭くやり続けることもできます。そこは自分と似たところも持ち合わせてくれているのかなと思います。

二宮 よく規律という言葉を使われていますが、あれはオフトさんの影響ですか? 当時からよくディシプリンという言葉を使っていましたよね。

森保 そうですね。そこはオフトさんの影響が大きいと思います。サッカーをやる上で、ベースとなる規律、立ち返るところがなければ、自由にプレーしていいよと言っても、なかなかその自由なプレーにはつながっていかないのかなと思っています。

二宮 立ち返るところがないといけない。

森保 そうですね。チームとしてのルールといいますか、最低限の規律がなければ、選手それぞれの良さも出せないし、チームとしての戦いもやはりできないのかなと思いますね。


二宮 歌舞伎の中村勘三郎さんが「型破りというのは、型を身に付けてから、それを破るから型破りなんだ。型がないのは、ただの形無しだ」と言っているんですね。つまり、基本がない、規律がないのは単なる形無しだと。

森保 素晴らしい言葉ですね。

二宮 森保さんもまず規律を作る。

森保 規律ですね。確固たるベースがあって、そこが安定していればいるほど、上積みとなるオプションも増えていくと思いますし、より力のあるものが出来上がっていくんじゃないかなと思います。

二宮 ロシアワールドカップで日本代表を率いた西野朗前監督は魂のあるチームを作ったというふうにおっしゃっていましたよね。

森保 はい。日本代表を応援してくださったみなさんも、日本人としての心を感じていただける部分があったとしたら、西野さんがそういうチーム作りをされていたんだろうなと。そこはしっかり次につなげていきたいと思っています。

二宮 ありがとうございました。