「年収500万なんて論外」と条件で見切った、28歳婚活女の痛恨ミス。五反田男はまさかの御曹司
東京23区ー。
東京都の中心となる23の「特別地方公共団体」の「特別区」のことを、私たちは東京23区と呼ぶ。
23ある中の、どの区に住んでいるかによって、その人の傾向や特徴は如実に表れるもの。
料理研究家として活動する青柳里香(28歳)が、各区の男たちとデートを重ねることで感じた、それぞれの特徴と生態とは・・・?
前回は、渋谷区スタートアップ系男子、絶対王者港区男子を見てきた。今週は?
「はぁ・・・面倒だなぁ」
本日のデート相手は、知り合いから紹介してもらった拓人・28歳。
ソフトウェア開発会社に勤める拓人は肌が綺麗で優しいのだが、何故私がこんなにも心が沈んでいるか?それは、デートに指定された場所が五反田だったからだ。
-五反田、行きたくないなぁ。
山手線でも滅多に降りることのない五反田駅。偏見かもしれないが街にはピンク系の店が連なるイメージがあり、女一人で行くこともなければ、友達との食事やデートで行くこともない。
とにかく足取りが重いまま、 年末の忘年会帰りだと見受けられるような、既に酒に酔っている人たちに紛れながら私は五反田駅に降り立った。
しかし、この時の私は気がついていなかったのだ。
この五反田には、とんでもない可能性が秘められていたことに・・・・
見切った男の損失は大きい。ダークホース・品川区男子!
日本のシリコンバレー・五反田!?
「あ、里香ちゃん!こっちこっち!」
五反田駅を出ると、ダッフルコートを着た拓人が待ってくれていた。今日も拓人は肌が綺麗で、彼の周囲だけ爽やかな風が吹いているように感じてしまう。
「五反田とか来ることある?あまりないよね?」
無邪気に問いかけてくる拓人に、私は曖昧に頷きながら 「あまり来ないかもです...」と小さな声で呟く。
「はは、そうだよね!みんな五反田に対してあまり良いイメージないみたいだからなぁ。ごめんね、僕の会社が近いという理由だけで来てもらっちゃって」
そして笑顔で歩く拓人の背中を見つめながら、“一体私はどこへ連れて行かれるのだろうか”という不安がよぎり始めた。
黒いスーツ姿を着た怪しげなお兄さんやチープな電光掲示板が光る建物。そんな気まずい空気が流れる街を歩きながら、今日この場に来たことを私は既に後悔し始めていた。
-この前の港区とは大違いだなぁ...
そんなことを考えているうちに、この街を歩き慣れた様子の拓人の足が一軒の店の前で止まる。拓人が予約してくれていたのは、『鳥料理 それがし』だった。
「みんな知らないかもだけど、五反田っていい店が多いんだよ」
そう言いながら、スタスタと中へ入っていく拓人の後を慌てて追う。たしかに、気取ってなくて良い店だったが、私はさっきから気になっていたことがある。
「五反田、詳しいんですか?」
「まぁ会社が近いからね」
彼の会社名を前に聞いたことがあるが、年収は多く見積もっても500万くらいだろう。東京基準で考えると、ちょっと心もとない数字だ。そんなことを気にもしていない様子の拓人は、意気揚々と五反田について語っている。
「あまり良いイメージがないかもしれないけど、今五反田がなんて呼ばれてるか知ってる?日本のシリコンバレーって呼ばれてるんだよ」
「日本のシリコンバレー・・・?五反田が、ですか!?」
「そう。称して“五反田バレー”とも言うんだよ」
拓人によると、最近注目株のIT関連の会社が続々と五反田や大崎界隈にオフィスを移してきているという。
都心で山手線沿線にも関わらず土地代が安く、この界隈なら広いオフィスが借りられる。また品川駅や羽田空港にも近いという利便性も抜群だ。
「港区や渋谷区と比較すると賃料が安いから、若手たちは住みやすいしね」
お酒をすすりながら嬉しそうに五反田の話をしてくれる拓人を見ながら、私は一人考える。
この先、この街は変わっていくのだろうか。そして拓人は、将来何者かに化ける可能性があるのだろうか、と。
「やっぱりここの料理はうまいなぁ。里香ちゃんは料理研究家だよね?普段、どういった料理を作るの?」
拓人が良い人なのは分かる。
しかしどこか摑みどころがないというか、大きな引っ掛かりが、良い意味でも悪い意味でもないのだ。
そう値踏みを始めた途端に、今日は1軒目で帰ろうと私は決意していた。
里香が見過ごしていた、拓人の本当の価値とは!?
まさかのダークホース・品川区男子
「じゃあ、今新進気鋭のIT関連の会社は五反田に集結してるんですね」
「そうそう!あと5年もしたら、ここから様々なサービスが生まれてるかもしれないなぁ」
そんな会話を繰り返しながら、楽しそうに話す拓人の顔をじっと見つめているうちにすっかり夜も更け、なんとなく私は帰るモードに入っていく。そんな私の反応を察したのか、2軒目へ行くまでもなく解散することになった。
しかし、私は解散間際まで重大なミスを犯していたことに気がついていなかった。
それは、駅の改札口で別れようとした時だった。
「今日はありがとう!じゃあ、僕はここで」
たしか、彼は今大崎に住んでいる。駅で言ったら一駅だが、歩いて帰るのだろうか?
「あれ?拓人さん、今からどこかへ行かれるんですか?」
「今日は実家に帰ろうかなと思ってるんだ」
「え?ご実家、五反田なんですか?」
「そうそう。ちょっと坂を登らないといけないんだけどね(笑)」
この言葉を聞いて、私はsuicaを取り出そうとした手がピタッと止まる。
-ま、まさかの・・・・城南五山出身・・・!?
そう、私は大事なことをすっかり忘れていた。
武家屋敷をルーツとする、都内屈指の高級住宅地を称して“城南五山”と呼ぶが、その5つのエリアのうち、品川区は4つも有していることを。
東五反田にある島津山、池田山。そして上大崎の花房山と北品川の御殿山。いずれも品川区だったという重要なことを。
「あ、ご自宅はそちらの方なんですね・・・」
“五反田”と聞いてイメージするような、駅周辺の雑多な雰囲気からは想像できないほど、由緒正しき高級住宅地である島津山や池田山には大豪邸が建ち並んでいる。
正式な住居表示はないものの、昔からの武家屋敷の名残を継承する素晴らしい場所だ。
「ちなみにお父様はお仕事、何をされているんですか・・・?」
「父?父は不動産関係だよ。昔から土地をいっぱい持っていて。僕も将来は会社を継がないといけないんだけどね」
声すら出ず、その場に私は呆然と立ち尽くしながら、拓人を現在の肩書きや年収だけで判断していた自分を責める。
五反田という街のイメージに引っ張られ過ぎていた私は、なんてバカなのだろうかと。
「じゃあ気をつけて帰ってね!またご飯行けたら嬉しいな」
笑顔で手を振る拓人。
さっきまでは「特徴のない男」に見えていた彼が、今では育ちの良さが滲みでる「上品な男」に見えるから不思議だ。
混み合う電車に揺られながら、私は品川区の無限の可能性を感じるのだった。
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【品川区ダークホース男子まとめ】
・見た目だけだと分からない可能性を秘めている
・ひけらかさない、自慢しない、フレンドリー
・都内の中心部にいながら、堅実
・居酒屋でもOK
(ちなみに、品川駅は品川区ではない)
・大企業で働くよりも、やりがいや夢の実現に重きを置く
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