Appleは世界の直営店で「Today at Apple」と題した無料講座を行なっています。対象ジャンルは、写真、ビデオ、音楽、プログラミングなど幅広く、時には世界トップクラスのクリエイターを講師に迎えた特別プログラムも行なわれています。じゃあその中味はいったいどんなの? と気になる堅実女子のためにスーツウーマン編集部が自らワークショップを潜入体験してきました!

ビデオクリップを作ってみよう!

参加したのは、今年8月末にオープンしたApple京都(「日本初」が目白押し!和モダンあふれるApple京都へおこしやす〜の記事はコチラ)で開催されていたワークショップ「エクスクルーシブ:Baiyonに学ぶオリジナルのビデオクリップ」です。マルチメディアアーティストのBaiyonさんが用意した音のない映像をiPadを使って、自分だけのオリジナルクリップに仕上げようという内容で、iPhoneにも無料インストールされている映像編集制作アプリ「iMovie」と音楽アプリ「GarageBand」を使って、映像を加工したり、BGMを付ける作業を体験します。

講師役のBaiyonさんは、京都を拠点にミュージシャン、DJ、アートディレクター、グラフィックデザイナーなどさまざまな肩書きで活躍しています。独特な世界観が話題となったPlayStation 3/PCタイトル「PixelJunk Eden」のアートとサウンド、またステージを自由にデザインできるPlayStation3専用ゲームタイトル「リトルビッグプラネット2」のサウンドの一部を手掛けたことでも世界的に知られ、DJとしても人気です。講座の前半はそんなBaiyonさんのこれまでの作品や活動が紹介され、ストアに訪れていた人たちの多くが足を止めて話に聞き入っていました。

Apple京都で行なわれたワークショップに潜入! まずはスタッフによるイベントの説明からスタート。

続いて講師のBaiyonさんのプロフィール紹介。ミュージシャン、デザイナー、ゲームクリエイターというマルチな肩書きを持ち、世界で活躍されています。

これまで手掛けた作品もいろいろ紹介されました。

Baiyonさんがこれまで手掛けてきたさまざまな作品に想像力をかきたてられつつ、いよいよ後半iPadを使った作業にとりかかります。

作業は大きく3つ。
1. ムービーを深く観察する。
2. iMovieでフィルターをつける。
3. GarageBandでサウンドを作る。

とシンプルですが、サウンドだけはGarageBandで複数の音を使うことがルールとして決められました。参加者にはiPadとヘッドホンが貸し出されますが、自分のデバイスを使うのもOKです。アプリの使い方や操作はスタッフとBaiyonさんがゆっくり説明してくれて、わからないことがあれば近くにいるスタッフに直接手伝ってもらうこともできます。

大きく3つの作業を2つのアプリを使って行ないます。

一見難しそうですがスタッフがハンズオンでていねいに教えてくれるので作業はさくさく進められます。

具体的には、IMovieのフィルター機能を使って色を付け、場合によっては長さを調整したりします。次にGarageBandの中にあるサウンドから2つ以上を選び、iMovieで加工した映像に貼り付けます。潜入参加した編集部員はアプリをさわるのは全く初めてでしたが、わからないところを教えてもらいながら数十分で作業を完成させることができました。

参加者はBaiyonさんのファンや、ビデオ制作に興味がある若い人たちが中心かと思っていましたが、意外にもばらばらで、年配の方やデートの途中に立ち寄ったという感じのカップル、海外からの観光客らしき人たちもいました。みんな真剣に作業に集中しているのが印象的で、1人に付き2つの映像を仕上げるのが目標でしたが、だいたいの人が問題なくできていたようです。

できあがった作品のいくつかが店内にある大きなディスプレイ・Forum Displayで紹介されましたが、どれも短時間で作ったとは思えないほどの出来栄えで、同じ映像でも全く違う仕上がりになっているのが面白かったです。参加する前は「ほんとに作品ができるのかな?」と思ってましたが、おどろくほど作業はカンタンで、ワークショップが終わる頃には「せっかく作ったからみんなに見てほしい!」という気持ちになるほどでした。

作業に使われた動画はBaiyonさんが普段から何気なく撮り貯めているもので、電車からの風景や池を泳ぐ鯉というシンプルなものがチョイスされていました。

みんな熱心に作業に集中しています。

Baiyonさん自らアドバイスしてくれるというなかなか貴重なワークショップでした。

何かを作る作業は楽しいもの

今回のワークショップについて感想をBaiyonさんにも聞いてみました。

「今回のワークショップでやってみたかったのは、音楽が持っている見えない情報と映像を合わせるとどうなるのかを実験してみようというところでした。音楽は人の感情を動かす力があって、たとえば好きな音楽を聞いてたら街中でサラリーマンのオッサンにぶつかられても『この人も人生いろいろあるだろうなぁ』とか思えるし、聞くと昔の彼氏を思い出す音楽とか記憶にも影響があります。
 
実際にやってみて、同じ映像でもわりとみんな楽しい方にとる人が多いんだなぁと。僕自身は感傷的なタイプなんで、素材に使った映像なんかはついマイナーコードでエレピを入れてビートもシンプルで……となるのですが、そうでないところが面白かったです。 今回はGarageBandですごくカンタンに音楽ループを付けてるので、個人差がすごくでやすかったと思います。中国風の音楽で半音だけ使うとか、ピアノでしっとりさせるとか、音の構成がしっかりできてたと思います。」
 
実際にスーツウーマン編集部員もやってみて「わたしって天才じゃね?」と思えるぐらいの気持ちになれるのはとても面白い体験でした。自分の好きなジャンルで音楽が作れるというのが一番の魅力かもしれません。
 
「自分が最初にPCで音楽をやりはじめた時はうまくいかなくて、数秒の作業だけでも大変でしたが、今はiPadに入ってるアプリだけでもいろいろできて、指先だけで操作して何度でもやり直しもできます。Appleのおかげでパラダイムシフトがおきたから、誰でも家にスタジオ環境があるわけですが、それもまだあまり知られてないですよね。それに日本人は自己表現する人がまだまだ少ないし、その面白さもあまり知らないので、『Today at Apple』はそのきっかけとして開催されてるんだと思ってます。
 
自分の場合、インスピレーションはエラーをきっかけにしてて、まずは猫にやらせるとか、目をつぶって選んだ絵の具で描いてみるとか、あまり堅苦しく考えずにやってます。そうやってもっと多くの人がものづくりを体験すれば、僕自身が何にこだわりを持って作品を作っているかがわかってもらえると思っているので、いろいろなことをきっかけに増えてくれるとうれしいですね」。
 
そんなBaiyonさんの最新作は、Q-Games入社後に初ゲームディレクションも務めた『Eden Obscura』です。オリジナルのグラフィックとスマホカメラで映る映像が融合した万華鏡のような世界をリアルタイムで楽しめるユニークなアクションゲームのスマホアプリで、ゲームになじみのない方でも気軽にプレイできるようになっています。そういうところにもBaiyonさんの「いろいろ体験してみてほしい」という思いが感じられます。  ゲームアプリ「Eden Obscura」は基本無料でAndroid版もありますよ。 

オリジナルのグラフィックスとスマホカメラで撮った画像を音にあわせて万華鏡のように動かせるゲームアプリ『Eden Obscura』は基本無料でAndroid版もあります。

京都在住のBaiyonさんに、せっかく京都に行くなら他にもどこがオススメかたずねてみたところ「ちょっと高いけれど京都南禅寺にある懐石料理店の瓢亭が最高に美味しい」ということでした。

Apple京都では他にもいろいろな「Today at Apple」が毎日開催されています。参加は基本無料で、Apple IDを持っていれば1クリックでカンタンに登録できます。内容も今回のようなビギナーから本格的なものまでいろいろあるので、サイトで気になるプログラムをチェックして参加してみてはいかがでしょうか?

Apple京都 http://www.apple.com/jp/today/store/kyoto

Baiyonさんのサイト http://baiyon.com/

Eden Obscura 
iOS版 https://itunes.apple.com/jp/app/eden-obscura/id1248666805
Android版 https://play.google.com/store/apps/details?id=com.q_games.edenobscura&hl=ja

取材・文/野々下裕子