カー用品販売大手の(株)オートバックスセブンが車を通じたライフスタイルショップ「JACK&MARIE」をオープンさせた。1号店は今年の3月に横浜ベイクォーターの3階に、この秋にはららぽーと名古屋みなとアクルス、横浜ランドマークプラザ、MARK  IS 福岡ももちと、一気に3店舗をオープンして4店舗体制となった。カー用品の取り扱いを本業とするオートバックスは国内603店舗、海外41店舗とグローバル展開をし、売上高も2116億円(営業利益72億円、ともに2018年3月末)。業界2位のイエローハットを売上高(1378億円)でしのぐが、その業界1位の企業がなぜ今、新規参入をするのか。

 この背景に「日本人の車離れ」があるわけだが、ファッション同様、車についての価値観も変わりつつある。地方では生活の足として定着している半面、都会では若者を中心として車を所有しない層が増えている。

 国内の新車販売台数は年間約400万台、中古車では800万台前後と、ここ10年くらいは増減を繰り返しながらほぼ横ばい。そうした中、車でもサブスクリプション化は始まっており、現在、カーシェアリング車両ステーション数は1万4941カ所(前年比16%増)、車両台数は2万9208台(同19%増)、会員数は132万794人(同22%増)と増加傾向にある(公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団による2018年3月の調査)。

 少子高齢化を迎えている国内市場。オートバックスセブンも従来の車を中心にしたメンテナンス、装備品といったサービスの拡張には限界を感じていることだろう。

オートバックスセブン 国内事業(全売上高の84%)の主力事業はカー用品販売+サービス(国内事業の8割)。直近の売れ筋はドライブレコーダー関連で、これは今、話題になっている「あおり運転」からの防衛心理も影響しているのだろう。国内事業だが、同社では改革を進めており、2017年6月に2つのPBをローンチ。1つが『クルマを使って楽しみたい(体験価値)』からJKM、もう1つが『クルマをもっと楽しみたい(自己表現)』からGORDON MILLERと、ともにクルマを通じて新たに価値を提供しようとするもの。JKMでは主にカーアクセサリーを、GORDEN MILLERではガレージキッドを展開している。

 実際、オートバックスセブンの直近10年の業績推移を見ると2009年の売上高2591億円をピークにややシュリンクしている印象を受け、ディラー事業、BtoB事業、ネット事業、ドローンの販売と主幹業務以外の収益の拡大を計画中。海外進出もフランス、タイ、シンガポール、中国、マレーシアと5カ国に進出しているものの、苦戦しているように見える。

 そこで同社の強みでもある車を核にライフスタイルに関連する商品まで取り扱い品目を広げたのが、「JACK&MARIE」といえるだろう。今回はファッション性というスパイスを効かせたことで新たなお客との接点を模索する、このライフスタイロショップについて評価をした。

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店内を回る中で感じた「バラエティさによる新鮮さ」

「JACK&MARIE」は、西オーストラリアのサーファーの聖地「バイロンベイ」を舞台にオーストラリア人男性のJACKと日本人女性のMARIEがこよなく愛する「Café×Nature×Car life」がキーコンセプト。アウトドアライフを楽しむ人をターゲットとして、 屮僖奪ング」、◆崟僂濆む」、「移動中も妥協しない」、ぁ崋崔翡顱廖↓ァ屮汽ぅ箸Caféスタイル」の“5つの心躍るシーン”を提案するライフスタイルブランドとなっている。

 ショップは、これらカー用品関係のPB商品を軸にしつつ、関連商品、雑貨をうまくセレクトして1つの世界観を作り出しているのが面白い。カー用品を背景にしているというよりも、ネイティブ感漂うアウトドアな印象を持ってしまうほど。実際、店舗の前面にはセレクトされたアパレル商品を着た男女のマネキンが出迎えている。

 そのアパレルもシカゴのワークウエアブランドの「ユニバーサルオーバーオール」との協業商品や、国産ワークウエアブランドの「Johnbull」を品揃え。バッグ、シューズの他に腕時計、リング、ネックレス、サングラスやビニール傘まであり、ユニークな品揃えでは持ち歩き収納型オリジナル・スリムキャビネットやポータブルBluetoothスピーカー、レトロファン(扇風機)などもある。さらにオリジナルデザインのポケットティッシュケースもあるなど、なかなか洒落た小物まで取り扱っている。

JACK&MARIEの店内

 横浜ランドマークプラザ店の売場面積120坪ある広い店内を探索気分で回ってみた。そのときに感じたのが「豊富なバラエティ感から生まれる新鮮さ」だった。「カーライフ」を背景にした品揃えは、他社での取り扱いがあまり無いが、店舗の雰囲気で“クルマ感”を程よく消していて、アウトドアな印象にまとめられている点にはセンスを感じる。特に食器やホームウエアまで取りそろえられているのには感心した。

 カーアクセサリー用品でも日用品として代用できる商品もある。洗車ブラシは家の掃除に用具として、LA直輸入のスポンジセットは台所用品としても使えるだろう。実際、オリジナル・マルチペーパーは台所周りの掃除用として使えた(ただし、調理用としては使えないので注意は必要)。これは、取り扱い品目をライフスタイルにまで広げたから生まれた、新たなお客との接点となる要素だ。

アパレル構成比が低い点を武器に独自性を!

 この「JACK&MARIE」はライフスタイルショップとしてはどのようなポジショニングを目指しているのだろうか。

Ron Herman


BAYFLOW


 サーフカルチャーを感じさせるショップとしては、(株)サザビーリーグが運営する「RonHerman」や(株)アーバンリサーチの「UR Sony Label」、(株)アダストリアの「BAYFLOW」、(株)ライトオンの「Naughty Dog」があるが、これらショップ群には価格帯がハイエンドなものからロウエンドなものまでそろっている。

 この中で考えると「JACK&MARIE」は「UR Sony Label」と「BAYFLOW」の中間くらいの価格感だろうか。

 この点が重要になるのは、将来的にどのくらいの店舗数の規模を考えているかと関係するからだ。これらショップをハイエンド側から順に並べると「RonHerman」14店舗、「UR Sony Label」のオンリーショップ8店舗、「BAYFLOW」46店舗、「Naughty Dog」32店舗。これに当てはめると、20〜40店舗になりそうだが、思い切って品種を縛り込んで、生活雑貨中心とした店舗業態にして出店しても面白いかもしれない。そうすれば、パルグループの「salut!」(36店舗)あたりの競合店としても浮上しそうだ。

「JACK&MARIE」の評価だが、現在、横浜を中心に店舗展開しているのは良かったと思う。やはり、日本のサーフカルチャーを発信する地として横浜はベストな選択。しかも米国産を中心とした“クルマ文化”も盛んな土地であることを考えても良い環境だ。

 気になるのは取扱商品の価格。店舗運営面から考えると、テナント賃料や人件費、展示車のリース代などショップコストは決して安くない。その割に商品のプライスポイントが低く、だから、その全体感からみるとセレクトしているアパレルが割高に感じてしまう。

 新規参入店の難しい点の1つが知名度の低さ。それはよく知らない店では高額商品を買うのにためらうというお客の行動につながり、買上げ点数を上げるか、客数を上げるしかなくなる。そう考えると、「JACK&MARIE」は新規参入店としてお客との信頼関係を築くことを優先すべきで、オートバックス客との相互乗り入れメリットなど企業規模を生かした施策があってよいだろう。

 そして、商品がバラエティ豊かであることは、言い換えると在庫リスクも抱えること。当然、商品によって回転率にバラツキも生じる中で、いかに鮮度のある売場を維持させられるか、ストアマネージメントが求められる。

「JACK&MARIE」はここで挙げたライフスタイルショップよりもアパレル構成比が低い点を武器にしたい。豊富な雑貨、用品の品揃えを特徴として独自のポジションを築いていけるのか、興味のあるところだ。