税金で損をしないために、今からでも知っておきたい確定申告と税務調査のしくみ(イラスト:若林杏樹)

政府による働き方改革により副業解禁などが進められ、「副業元年」とも言われている2018年。ランサーズ株式会社の調査によると、フリーランスの人口は1100万人を突破し、今後ますます増えていくと予想されています。
そこで今回、フリーランス初心者で漫画家の若林杏樹さんが、税理士の大河内薫さんに税金にまつわるあれこれを学んでいく様子を描いた『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!』から、フリーランスの「経費の基本」をご紹介します。

会社員であれば、会社が税金の計算や支払いを行ってくれます。しかし、フリーランスになるとこれらを全て自分で行う必要があります。なかでもよく聞くのが「経費」という言葉。「とりあえず、領収書は全部もらって保管しておくように」と言われたことがある人も多いのではないでしょうか。

この経費が大きく関係してくるのが「所得税」です。日本は累進課税制度といって、稼いだ額が多いほど税率が段階的に上がる仕組みになっています。その幅は5〜45%とかなりの幅があり、収入から経費などを引いた額によって税額を計算します(これが、いわゆる「確定申告」です)。

つまり、節税への近道は「いかに経費を計上できるか」にかかっているとも言えるでしょう。


経費についてよくある勘違いとして「確定申告の時に、領収書を全部提出しなくてはいけない」と思っている人が多いです。しかし、そんなことをしたら税務署の受付はパンクします。

「領収書の提出」は必要ない

税務署は受付時はその場で受理だけをします。そして、申告内容に気になる点があった場合などに、後から国が調査する権限として「税務調査」があります。


つまり、税務調査の対象となって税務調査官が来た時に、初めて領収書や経費を提出するシチュエーションが訪れるのです。法人は大体4〜5年に1度来ると言われており、個人にくる確率は1〜2%です。フリーランスがその場面にあたる可能性はかなり低いですが、0とも言えません。

ちなみに「税務調査=マルサ」のイメージが先行していて"怖いもの"と思われていますが、そんなことはなく、あくまでも話し合いです。結局、チェックするのは税務調査官=人間です。ぱっと見で気になる箇所が多いと怪しまれますし、印象も悪いです。人間が調査するわけですから、印象点数というのはあると思います。

だからこそ、いつ調査をされても、きちんと自分の言葉で説明することが必要です。事業との関連性について相手を納得させる準備をおくことが、経費を扱う上で大切なことと言えるでしょう。

必要性と経緯をきちんと説明できればOK


では、実際にどこまで経費になるのでしょうか? ここがフリーランスの皆さんがいちばん知りたいところだと思います。

経費になるかどうかは自分次第

経費には明確なルールがあるわけではなく、「本人の仕事に関係しているか」「世間の常識的にどうか」をもとにジャッジされます。「世間の常識的」というと難しく感じるかもしれませんが、「その仕事をしていなければ支出する必要のなかったもの」と考えるとイメージがしやすいかもしれません。


「勘定科目」は、大体以下のように記載をすれば問題ないでしょう。職種によっては、下記に当てはまらないものも出てきますが、その際は自分で「○○費」と設定して大丈夫です。

確定申告前に参考にしたい「勘定科目一覧表」


ちなみに「雑費」は何にでも使えて便利そうですが、あまりに多いとチェックされる際に「これって本当に経費?」と怪しまれる可能性もあるので、できるだけ自分で設定した方がよいでしょう。

よくあるのが「これって何費でしょうか?」という質問。「勘定科目を間違ってはいけない」と思っている方も多いのですが、ぶっちゃけ間違ってもそこまで問題ではありません。

勘定科目はバランスが重要


経費を提出するのがゴールではなく、あくまでも税額を計算するのが目的なので、言ってしまえばどの項目に入っていても一緒なのです。

たとえばクラウドファンディングの支援金や、noteの購入代など、最近のWebサービスへの支払いは経費になるのか迷うところですよね。これらも仕事に関連する支出であれば立派な経費です。


領収書がないときの解決策

領収書がもらえない場合は、高額でなければレシートでも問題ありません。ご祝儀やお香典、セミナーの参加費など、領収書もレシートももらえないシチュエーションがありますが、その際は「出金伝票」に自分で明細を記載しておけばOKです。




いかがでしたでしょうか? 経費については、インターネット上では、「あれは経費でOK」「これはダメ」など無数の情報が散乱しています。しかしそれらは税務調査で認められたものではなく、あくまでも一般論。万に一つ、税務調査で認められた事実だとしても、あなたのケースに置き換えたら、結論はいくらでも変わります。

だからこそ、自分で支払った経費とその関連性をきちんと説明できるように、しっかり日々の管理をしておくことが大切です。