通信料金は4割も値下げできるは、本当か? 通信と端末を分離プランに潜むリスクと現実

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携帯電話の料金は、本当に、まだ下げられるのか?

官房長官の「4割値下げ」発言以降、繰り返し議論が行われています。
その中で
「通信と端末の分離」
この言葉が、トレンドワードのように耳にするようになってきました。

「本体の代金と通信料金は分割で支払っているので、分離と言われてもピンとこない」
そんな人も多いかと思います。

いま議論されている「通信と端末の分離」とは、
どういうことを指しているのでしょうか?


○わかりづらい料金を「分離」すると簡単になるのか?



NTTドコモの料金を例に、通信と端末の分離について解説していきます。

NTTドコモで新しい機種を購入すると、「月々サポート」がつきます。
この「月々サポート」は、
月額の通信料金から一定の割引を毎月受けられる仕組みです。




例えば、スマートフォンを分割で買って、月々2,000円の機種代金を支払う場合、
「月々サポート」で通信料金から2,000円の割引をすれば、足し引きで「0円」になります。
これを「実質0円」など、実質価格と呼んでいます。

この「月々サポート」の割引は
・機種を購入しなければ受けられない
・割引されるのは通信料、本体代金ではない
・割引期間は最大24ヶ月で、以降は一切の割引が受けられない
・途中で機種を買い替えたり、プランを変更したりすると割引が受けられない
など、いくつもの条件があります。

店頭で「実質0円」と表記すれば、まるで本体代金を0円にする割引を行っているかのようにも見えますが、実は、そうではないのです。

例えば、「月々サポート」の途中で
・使っている機種が壊れてしまった
・紛失してしまった
など、仕方なく買い替えを行ってしまった場合でも、「月々サポート」の割引が消失してしまいます。

ことから利用者からは「わかりづらい割引、料金」と認識されているのが現状です。

もちろん、通信料からの割引で、スマートフォン本体料金の支払いを肩代わりするため、NTTドコモを利用していなければ「月々サポート」の割引は受けられません。

つまり「月々サポート」の割引を受けている最中に、他社へのりかえをすれば「月々サポート」割引は消失します。

そうなると、どうなるのか?

10万円の本体代金が0円になると言われて購入。
→途中で買い替えや解約を行った
→「残り5万円の支払いが残ります」と言われてしまった。

これでは利用者としては納得できないのも無理はありません。

こうした「月々サポート」の割引が、利用者にとってわかりにくい原因は、
残金請求されなくなるまで、
・いつまで使えばいいのか
・いつ他社に乗り換えできるのか
これがわかりにくい点にあります。
もし利用者がわかったとしても、「月々サポート」割引きの期間が終了するまで、
解約や他社への乗り換えは制限(残金請求)されますので、利用者の選択肢を狭くすることなります。

利用者の自由な選択肢を狭めるということは、結果的に市場での競走をうまず、それが料金の高止まりの要員だと、指摘されているのです。


また、最近のスマートフォンは
・本体代金が10万円を超える高額商品も珍しくなくなった
・完成度が高まり、壊れない限り買い替えずに使い続ける人が増えた
・SIMフリーという選択肢も用意された
これらの変化により、従来のように
・2年毎に買い替える
・携帯電話会社から機種を購入する
といった必要がなくなりつつあります。

そこで携帯電話会社でスマートフォンを購入しなければ「月々サポート」のような割引が受けられないような仕組みを撤廃しようという動きがでたのです。
つまり、
・通信サービスの契約は携帯電話会社
・スマートフォン本体は通信サービスとは別に購入する
こうすれば、
機種購入を条件とした「月々サポート」のような割引は、通信料金から割引ができるので、
通信料金そのものを4割の値下げができるだろうと考えられているのです。

こうした仕組みにすれば、消費者は、解約や他社へに乗り換えを好きなときにできるので、適切な競走が生まれるとも考えられています。


○分離していても、わかりづらいものは、結局、わかりづらい?
KDDIとSoftBankはすでに通信と端末を分離したプランを提供しています。
どちらも少し前まではNTTドコモ同様に「機種購入を条件とした通信料の割引き」を行うプランを主軸としていました

しかし、昨年から順次新プランの提供を開始。
従来と比較して通信料の引き下げやデータ容量の増量を行い、本体代金と分離するプラン提供を訴求するよう切替を進めています。




しかしながら、どちらの会社も最も安い料金を広告やCMで打ち出す場合には
・のりかえを前提に、一年間だけ優遇される料金
・固定回線とセットにした場合の割引き
これらを含めた最安料金として宣伝しているため、真の料金がわかりづらいのが現状です。

また通信料金は、たしかに安くはなりました。
しかしスマートフォンの本体価格と合わせた総額は、従来と比較して極端に安くならない場合もあります。
これは、10万円を超える機種も珍しくなくなったスマートフォンの本体価格の値引きや割引がなくなったことにも要員があります。

さらにスマートフォンの本体価格が高額な場合は、
従来よりも高くなってしまうケースも多く、これを防ぐために「24回払い」から「48回払い」を推奨するようにもなりました。
48回払いの場合は、
半分の24回の支払いを終えた時点で、機種を下取りに出せば残る半分の支払いを免除する仕組みも設けられましたが
・残債はポイント還元で相殺(KDDI)
・下取りを条件とするため、破損があれば還元が受けられない
など、通信と端末を分離して、自由な選択肢を確保したはずなのに、下取りに出すため、今まで以上に「縛られる」可能性も出てきています。


現在、大手の携帯電話会社のスマートフォン販売方式は、
・全国どこでも一定のクオリティを保った機種とサービスを組み合わせられる
こうしたメリットは存在します。
しかし同時に
・サービスを受けるには、本体を携帯電話会社で購入することが半ば強制される
こうしたデメリットが存在しています。

「通信」と「端末」を分離する場合、
実は、このメリットとデメリットがそのまま逆転する可能性があります。

分離すると、
スマートフォン購入での割引きの実施が難しくなる。
反面、真に通信サービスでの適性料金が算出され、
・料金の安さで通信サービスを選ぶ
・通信品質で通信サービスを選ぶ
こうした選択ができるようになる可能性もあります。
その結果、消費者にとって、わかりやすい料金体系が実現するかもしれません。

ただし、スマートフォンの本体は、
自分の好きな機種が選べる一方で、自分の選んだ通信サービスが正しく利用するのは自己責任となり、今よりもトラブルが多くなる可能性もあります。


現在、携帯電話料金の値下げの議論は「通信と端末の分離」を実施さえすれば、値下げが実現でき、すべてが良くなるかのような話が進んでいます。

筆者としては、単に安くなる、安くするのではなく、
・なぜ、この通信プランは、この料金なのか?
・なぜ、買い替えたいときに、残金発生や解約金などで、買い替えられないのか?
このような、利用者が不便と感じる疑問点をなくす。
明朗会計となる
・料金プランの提供
・端末機器の販売
これらが行われることが最も大事なことだと考えます。
こうした販売が行われれば、利用者の不満は解消し、支払う料金にも納得してもらえるのではないかと考えています。


本来、「通信」と「端末」の提供、販売は、別々であるべきだとは思います。

ですが、「値下げ=通信と端末の分離」ではありません。
それは現時点のKDDIやSoftBankが提供するプランを見てもわかることです。
また通信速度やサポートコストを下げて安さを実現した格安スマホ会社のサービスを見ても明かです。

通信と端末の分離は、
値下げを実現できるかもしれません。
しかし。利用者にとって、新しい負担が増える可能性もあります。
・広がった選択肢の戸惑い
・選択したプランや機種への自己責任
これらの変化を理解し、受け入れるには時間もかかると思われます。

昨今の「通信と端末を分離すれば、4割通信料金は値下げできる」報道を鵜呑みにするのは、少々危険も含まれていることを、是非、知って頂ければと思います。


迎 悟