Nikon Z 6の登場でミラーレスの選び方が変わる? Z6とZ7のかつてない関係に隠されたビジネスモデルとは
2018年、ミラーレス一眼カメラのフルサイズ(35mm判フルフレーム)にビッグウェーブが来た年であった。
3月にソニーがスタンダードモデル「α7 III」を発売。
2420万画素で秒間10コマの連写可能で快適撮影に加えて、瞳でピント合わせ可能な瞳AFをさらに進化させミラーレス一眼の魅力をアピール。
この「α7 III」の性能は、ミラーレス一眼の“スタンダードモデル”のハードルを一気にあげた革新的なカメラであった。
革新的な新製品で勢いに乗るソニーは、国内外でも高く評価され、フルサイズミラーレス市場において一人勝ち状態となる。
カメラ界の巨頭ニコンとキヤノンは、このソニーの勢いに待ったをかけるため動いた。
ニコンは、9月に高画素モデル「Nikon Z 7」を発売。
ソニーのハイエンドモデル「α7R III」に、未来を見据えた大口径「Nikon Z」マウントの4575万画素のカメラで挑む。
それに続いたのが、キヤノンのフルサイズミラーレス「EOS R」だ。
28-70mmの標準ズームレンズでF2.0の明るさを実現する「EOS RF」マウントを搭載し、ボディはNikon Z 7とソニー α7 IIIの間に位置する3170万画素の製品である。
そして11月に、ニコンはNikon Z 7の兄弟機「Nikon Z 6」も発売。
画素数は2450万画素、最大秒間12コマの連写を可能としたまさにα7 IIIの対抗馬である。
α7 IIIはスタンダードモデルという位置づけであるため、使用パーツがα7R IIIと異なる。価格差以上の上下関係がそこにはあるのだ。
一方、Nikon Z 6の場合はベースとなるボディはNikon Z 7と同じ、イメージセンサーがNikon Z 7と異なるためAF機能などで違いはあるが、カメラとしての上下関係はない。
イメージセンサーが大きなフルサイズ機ともなれば、画素数が多い方が写真の表現力やトリミング耐性で優位性が生まれる。
とはいえ、4000万画素を超えると記録ファイルサイズが大きく、撮影中のメディアの書き出しにも時間を要し、画像編集でも高いスペックのPCが必要になるなど、運用には気を遣う面も多くなる。
Nikon Z 6は画素数2450万画素だが、印刷用途にも利用できるほか、秒間12コマの連写と高速書込が可能な「XQDカード」の組み合わせは、応用範囲が広いのは他社に比べて優位な点だろう。もちろん、PCでの画像編集も4000万画素より処理が軽くなるというメリットがある。
ニコンはNikon Z 6の立ち位置を“オールラウンドモデル”としている。
Nikon Z 7は高画素機を手軽に持ち出せるボディサイズにしたところにその価値があり、一方のNikon Z 6は連写をはじめとする軽快さと実用性に価値がある。
Nikon Z 6とNikon Z 7の関係は、これまでのニコンのカメララインナップにはなかったものだ。
デジタル一眼レフのラインナップには、
・高画素モデルの「D850」
・高速連写モデルはプロ仕様のフラグシップモデルの「D5」
・画素数2432万画素の「D750」
など、ベースとなるボディや堅牢性・耐久性をターゲットにあわせたマーケティングを行っている。
Nikon Z 6とNikon Z 7は、価格差があるものの、ボディの質感やファインダー性能などカメラとしての上下関係はない。
撮影用途にあわせて自分に最適なモデルを選ぶ、これがコンセプトなのだ。
これに対して、ソニーのラインナップは、ボディの形状はほぼ同じながらファインダーや液晶モニター、モードダイヤルなど上位機種と下位機種では異なる。
ちょうとニコンのデジタル一眼レフのようなラインナップなのである。
上位モデルと下位モデルというラインナップの場合、
価格差は10万円以上あるが、価格以外にもイメージセンサーなど構成パーツにも違いがある。
このため、用途に合わせて選んだにもかかわらず、ボディの仕様やスペックで妥協を強いられてしまうことも少なくない。
これは単にコストカットではなく、部品調達を分散することで数モデルを安定供給できるメリットを活かした戦略ともいえる。例えば、α7 IIIの生産数を増やしても、α7R IIIのパーツに影響しないというわけである。
このようにメーカー努力によるコストダウンで製品が安く購入できるのは嬉しいが、嗜好性の強いカメラの場合、ファインダーの見え方や液晶モニターの綺麗さも製品の価値となる。
消費者の多くは、そこにもコストをかけて欲しいと思っている。
Nikon Z 6とNikon Z 7は、同一のボディ品質で、異なる撮影用途の選択ができるラインナップなのだ。
デジタルカメラは、日本企業がグローバルマーケットで展開する製品だけに、量産によるコスト低減は消費者も期待している。そういった意味でも、Nikon Zシリーズのパーツ共通化によるコスト削減は、ユーザーにも恩恵があるといえるだろう。
コンパクトなボディで高画素のNikon Z 7は、
ポートレートやポスター出力用や、絶景の撮影用に。
Nikon Z 6は、
連写で決定的瞬間を収めたい、家族の写真を気軽に撮りたい、本格的なフルサイズの4K動画製作に、。
自分の用途にあった最高のカメラを用意した。
今回のニコンのマーケティングを改めて評価したいポイントである。
Nikon Z 6とNikon Z 7はデジタル製品なので、2世代、3世代と製品の世代が進むことで、製品の作り込みや使い勝手はもっと良くなっていくだろう。
生産の効率化とわかりやすいラインナップで買い換えサイクルを促すソニー。
部品の共通化をするとともにカメラを嗜好品として仕上げたのがニコン。
これから長く続くフルサイズミラーレスの三つ巴の覇権争い、次の一手はどうなるのか楽しみである。
執筆 mi2_303
3月にソニーがスタンダードモデル「α7 III」を発売。
2420万画素で秒間10コマの連写可能で快適撮影に加えて、瞳でピント合わせ可能な瞳AFをさらに進化させミラーレス一眼の魅力をアピール。
この「α7 III」の性能は、ミラーレス一眼の“スタンダードモデル”のハードルを一気にあげた革新的なカメラであった。
革新的な新製品で勢いに乗るソニーは、国内外でも高く評価され、フルサイズミラーレス市場において一人勝ち状態となる。
カメラ界の巨頭ニコンとキヤノンは、このソニーの勢いに待ったをかけるため動いた。
ニコンは、9月に高画素モデル「Nikon Z 7」を発売。
ソニーのハイエンドモデル「α7R III」に、未来を見据えた大口径「Nikon Z」マウントの4575万画素のカメラで挑む。
それに続いたのが、キヤノンのフルサイズミラーレス「EOS R」だ。
28-70mmの標準ズームレンズでF2.0の明るさを実現する「EOS RF」マウントを搭載し、ボディはNikon Z 7とソニー α7 IIIの間に位置する3170万画素の製品である。
そして11月に、ニコンはNikon Z 7の兄弟機「Nikon Z 6」も発売。
画素数は2450万画素、最大秒間12コマの連写を可能としたまさにα7 IIIの対抗馬である。
α7 IIIはスタンダードモデルという位置づけであるため、使用パーツがα7R IIIと異なる。価格差以上の上下関係がそこにはあるのだ。
一方、Nikon Z 6の場合はベースとなるボディはNikon Z 7と同じ、イメージセンサーがNikon Z 7と異なるためAF機能などで違いはあるが、カメラとしての上下関係はない。
イメージセンサーが大きなフルサイズ機ともなれば、画素数が多い方が写真の表現力やトリミング耐性で優位性が生まれる。
とはいえ、4000万画素を超えると記録ファイルサイズが大きく、撮影中のメディアの書き出しにも時間を要し、画像編集でも高いスペックのPCが必要になるなど、運用には気を遣う面も多くなる。
Nikon Z 6は画素数2450万画素だが、印刷用途にも利用できるほか、秒間12コマの連写と高速書込が可能な「XQDカード」の組み合わせは、応用範囲が広いのは他社に比べて優位な点だろう。もちろん、PCでの画像編集も4000万画素より処理が軽くなるというメリットがある。
ニコンはNikon Z 6の立ち位置を“オールラウンドモデル”としている。
Nikon Z 7は高画素機を手軽に持ち出せるボディサイズにしたところにその価値があり、一方のNikon Z 6は連写をはじめとする軽快さと実用性に価値がある。
Nikon Z 6とNikon Z 7の関係は、これまでのニコンのカメララインナップにはなかったものだ。
デジタル一眼レフのラインナップには、
・高画素モデルの「D850」
・高速連写モデルはプロ仕様のフラグシップモデルの「D5」
・画素数2432万画素の「D750」
など、ベースとなるボディや堅牢性・耐久性をターゲットにあわせたマーケティングを行っている。
Nikon Z 6とNikon Z 7は、価格差があるものの、ボディの質感やファインダー性能などカメラとしての上下関係はない。
撮影用途にあわせて自分に最適なモデルを選ぶ、これがコンセプトなのだ。
これに対して、ソニーのラインナップは、ボディの形状はほぼ同じながらファインダーや液晶モニター、モードダイヤルなど上位機種と下位機種では異なる。
ちょうとニコンのデジタル一眼レフのようなラインナップなのである。
上位モデルと下位モデルというラインナップの場合、
価格差は10万円以上あるが、価格以外にもイメージセンサーなど構成パーツにも違いがある。
このため、用途に合わせて選んだにもかかわらず、ボディの仕様やスペックで妥協を強いられてしまうことも少なくない。
これは単にコストカットではなく、部品調達を分散することで数モデルを安定供給できるメリットを活かした戦略ともいえる。例えば、α7 IIIの生産数を増やしても、α7R IIIのパーツに影響しないというわけである。
このようにメーカー努力によるコストダウンで製品が安く購入できるのは嬉しいが、嗜好性の強いカメラの場合、ファインダーの見え方や液晶モニターの綺麗さも製品の価値となる。
消費者の多くは、そこにもコストをかけて欲しいと思っている。
Nikon Z 6とNikon Z 7は、同一のボディ品質で、異なる撮影用途の選択ができるラインナップなのだ。
デジタルカメラは、日本企業がグローバルマーケットで展開する製品だけに、量産によるコスト低減は消費者も期待している。そういった意味でも、Nikon Zシリーズのパーツ共通化によるコスト削減は、ユーザーにも恩恵があるといえるだろう。
コンパクトなボディで高画素のNikon Z 7は、
ポートレートやポスター出力用や、絶景の撮影用に。
Nikon Z 6は、
連写で決定的瞬間を収めたい、家族の写真を気軽に撮りたい、本格的なフルサイズの4K動画製作に、。
自分の用途にあった最高のカメラを用意した。
今回のニコンのマーケティングを改めて評価したいポイントである。
Nikon Z 6とNikon Z 7はデジタル製品なので、2世代、3世代と製品の世代が進むことで、製品の作り込みや使い勝手はもっと良くなっていくだろう。
生産の効率化とわかりやすいラインナップで買い換えサイクルを促すソニー。
部品の共通化をするとともにカメラを嗜好品として仕上げたのがニコン。
これから長く続くフルサイズミラーレスの三つ巴の覇権争い、次の一手はどうなるのか楽しみである。
執筆 mi2_303