マンガマーケティングで漫画家の仕事を生み出し、マンガ文化を支える シンフィールド谷口晋也氏のマンガ愛

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株式会社シンフィールド代表取締役 谷口晋也(たにぐち しんや)氏 37歳。
谷口晋也氏は、マンガをマーケティングツールとして活用するビジネスで、漫画家の仕事を生み出し、漫画家の生活を支え、日本のマンガ文化を支援している。

彼は、なぜマンガにこだわり、マンガ文化を守ろうとするのだろうか?

大学卒業後、介護業界にビジネスチャンスを感じて、介護系の会社に就職。
2006年、株式会社シンフィールド代表取締役に就任した。

起業後に介護制度が変更されたことから、ビジネスをホームページ制作に転換する。
ホームページを作るだけでなく集客にも力を入れたいと考え、インタースパイア(現:ユナイテッド)に就職。
その後、株式会社シンフィールドでマンガマーケティング事業を開始した。


■マンガ×Webマーケティングでトップ企業へ

株式会社シンフィールド代表取締役 谷口晋也氏


谷口氏は高校時代にサッカーをやっていた。その頃からチームで目標を設定しそれを仲間とクリアすることにやりがいを感じていたため、そういったことを仕事でもやっていきたいとの想いからいつかは起業したいと考えていたという。
それが現在のビジネスへと繋がっていくことになる。

なぜ、マンガマーケティングを始めたのか?

谷口晋也氏
「前職の広告代理店に勤めていたときに、自分のクライアントが広告のバナーにマンガを使っていました。そのマンガのバナーのクリック率が高いのをみて、マンガは集客効果があるなと思いました。

また進研ゼミでマンガで説明された小冊子が送られてきていましたがマンガというだけで、見ていたこと想い出しマンガは人に見てもらえるきっかけを与えられると思いました。」

当時、広告やマーケティングなどのビジネスツールとしてマンガを扱うケースは珍しかった。
そこでマンガとWebマーケティングをかけ合わせれば、他者と差別化したサービスが提供できるのではないか?と谷口晋也氏は、考えたという。

谷口晋也氏
「この事業を思いついてからは、サービス設計後、サービスサイトを作り、そこからは協力してくれる漫画家さんを人づてに紹介してもらいました。

その際はマンガ業界って、どういう感じなのですか?
とマンガ業界のことをまずうかがって、仕事の依頼をさせてもらいたいと話をしました。
最初に話をした方のことは今でも覚えてますね。
その後は、ネットで探して直接電話やメールをして、
こういうビジネスをやりたいと思っているので、協力してもらえませんか?
といったアプローチを、ひとりずつやってきました。」

漫画家一人ずつ連絡をとっていたこともあり、最初の100人を登録するまで2年くらいかかったそう。
50人くらい登録した段階でウェブからの取り合わせも来るようになり、現在は800人以上の漫画家が登録されている。


ランディングページにマンガを投入した事例
事例:日本直販 提供:シンフィールド


■漫画家と日本のマンガ文化に貢献したい
谷口晋也氏
「漫画家さんには基本的に弊社に登録いただいて、企業から案件があったときにご相談するかたちです。シナリオも僕らと企業が調整して、企業に確認をとったものを漫画家さんにお渡しして作画をしてもらっています。」

マンガを提供する企業は、今では多くあるが、谷口晋也氏のシンフィールドの違いはどこにあるのだろうか?

谷口晋也氏
「僕らはマンガの制作会社ではないと思っていて、マンガをマーケティングツールとして活用する会社だと思っています。」

マンガを作るのは漫画家で、シンフィールドはマンガでクライアントの商品やサービスを訴求するためのプロモーション設計の役割を担っているそう。
実際、クライアントの投資対効果を上げるという点を意識してWebマーケティングと一緒にマンガを提供している会社は少ないという。

谷口晋也氏
「弊社のクライアントで成約率が1.5倍になったり、クリック率が2倍、3倍になったりする成功事例も多数あります。
一定の形で実施すれば効果が出るという勝ちパターンを、社内で体系化しているのである程度の成果は出せると思っています。」

この約9年間で2500件くらいの実績があるという。
その中には大手企業も非常に多く含まれている。

管理部以外のスタッフは、基本、マンガマーケティングに関わっているそうで、営業が受注した案件を制作チームがディレクションして作っている。

谷口晋也氏
「納期は、ページ数や漫画家さんによって変わってくるので、一概には言えませんがだいたい2週間から1ヵ月くらいです。

シンフィールドは、現在、東京、福岡、高知に3つの拠点を置き、ビジネス展開している。
実は、高知県は「まんが王国・土佐」として外部発信していて、マンガ文化の振興に力を入れている。
漫画家の排出率も、人口に占める割合からすると、全国1位とのこと。

高知県は、
「全国高等学校マンガ選手権 まんが甲子園」
「漫画家大会議」
など、マンガに関わるイベントも多く実施されている。

高知県出身の有名な漫画家には、
・「アンパンマン」の、やなせたかしさん
・ 「ぼくんち」「毎日かあさん」の西原理恵子さん 
など、名前を聞いただけでも、そうそうたる漫画家が名を連ねている。

谷口晋也氏
「僕らは、マンガを応援している高知県で社員を採用し、雇用を増やして、県にも貢献したいという想いもあります。」


■マンガマーケティングを当たり前にしたい

有名漫画家とのコラボ事例
事例:Dell 提供:シンフィールド

谷口晋也氏
「僕らは世の中にマンガのマーケティングをもっともっと広めたいと思っています。
そうすることによってマンガを描いて生活したい人にどんどん仕事を提供できると考えているんです。

ご存じのように、日本は少子高齢化でどんどん人が減っている。
そういったなかで漫画家さんの数も確実に減っていくと思います。

そうなると、世界的に認知されている日本=マンガというイメージが崩れていきますし、日本のマンガ文化も衰退していくのではと危惧しています。

僕らがマンガマーケティングというかたちで、マンガの仕事をたくさん作りだせれば、
・昼間はマンガ広告を描いて、
・夜は商業誌に掲載するためのマンガを描く
というマンガで生活できる環境を提供できるのではないかと思います。

マンガを描いていきたいけど自分の好きな仕事をしていない方や、アルバイトをされている方、
こうした人にもマンガの仕事が提供できれば、マンガを描く機会がどんどん増えていくと考えています。

そうすることによって、商業誌にデビューする可能性も増えると思いますし、漫画家全体の数も増えていくと思います。

僕らの事業は日本の文化発展に貢献できると考えていますし、マンガ業界にも貢献できると思っています。」

谷口晋也氏は、
「Googleは、検索を当たり前にし、
Facebookは、インターネット上で人と人が繋がることを当たり前にした。
食品だとキューピーが生み出したマヨネーズは、世の中の冷蔵庫のどこにでもあることが当たり前の存在になった。
一企業がこうした、世相を作り出したことはすごいことだ」という。

そのため自分達もマンガマーケティングを当たり前にすることを目指していきたいと語る。


■越境ECへ! マンガマーケティングで海外展開を

海外展開の事例(中国)
事例:国際通信 IX-NET(縁通) 提供:シンフィールド

今後、谷口晋也氏は、2つの分野に力を入れていきたいという。一つは越境EC分野でのマンガマーケティングの展開を強化したいと考えている。日本企業が海外でプロモーションを行う際にマンガを活用し広告効果を高める手法が広がってきているという。

「2020年には越境EC市場は109兆円の市場規模になると言われています。そういった成長市場で日本企業の支援をしていきたいと思っています」

もう一つは有名マンガタイアップ。多くの人が知っているマンガと企業をコラボレーションさせ話題性を持たせ拡散を狙うといったものだ。

「マンガを軸にしたビジネスはまだまだ多くのチャンスを秘めています。マンガマーケティングで漫画家、漫画業界、そして日本の文化の発展の一躍を担えればと思っています」

マンガマーケティングのシンフィールド


執筆:ITライフハック 関口哲司
撮影:2106bpm