一時的に体の一部がしびれてしまうことは、誰にでもあること。一時的に神経が刺激されたり、血流が悪くなってしまうことで、しびれの症状が出てくる。しかし、そのしびれがずっと続く、あるいは、全身に広がっていくということがあると、これは大きな疾患などが関わっている可能性があり、十分な注意が必要となる。

 全身がしびれてしまう時の大きな原因としては、脳や脊髄に関する疾患、症状があって脳の機能が正常に機能しない、あるいは大きなダメージがあることがある。

 また、しびれだけでなく機能不全に陥ったりと、かなり重篤な症状になってしまうこともあるので、非常に注意が必要なのだ。

 このような状態になってしまったときは、救急車を迅速に手配し、少しでも早く専門医に診てもらう事をお勧めする。

 東京・府中市の小林義彦さん(60歳=仮名)は、ひざの内視鏡手術を受けた後、杖をついて歩いていた。無理な姿勢が続いたせいか、首や肩の凝りや痛みが出て、右手の先がしびれだし、やがて左手もしびれるようになった。

 いつもジンジンして力が入らず、大好きだったコーヒーのカップを持つことも出来なくなった。2年前のことだ。

 近くの整形外科にいくと「頚椎症」と診断された。加齢により、首の骨や、骨と骨の間でクッションの役割をする「椎間板」が変形して、神経が圧迫されて起きる症状。背中を走る脊髄から分かれて腕へと繋がる「神経根」の部分が圧迫され、肩の痛みだけでなく、手や指先にしびれが出ていると考えられた。

 しびれの正体は神経の働きの異常だ。手足の感覚を脳に伝える神経のどこかに異常があると、感覚が麻痺したり、何も触れていないのにジンジンしたりする。

 昭和大学横浜北部病院整形外科・前田雄介医師はこう語る。
「しびれの感覚や表現はさまざまで、客観的な評価が難しい。しびれを伴う病気は、糖尿病の合併症や中枢神経(脳、脊髄、視神経)が侵される多発性硬化症、主に筋肉を動かす運動神経が損傷され、四肢に力が入らなくなるギラン・バレー症候群などがあります。しびれている場所やその近くに原因があるとは限らない。治療している時に、糖尿病など隠れている病気が見つかることがあります。神経内科や整形外科への早めの受診を勧めたい。なかでも、左右どちらかの手や口の回りに急に強いしびれを感じる場合、脳の視床と呼ばれる部分の脳卒中が原因として疑われ、急を要します。頚椎症と診断された小林さんの場合は、過敏になった神経を鎮める薬を処方され、しびれは治まったはず。完全に治ったとは言えませんが、日常生活に不自由はなくなったといいます。今は、部屋に閉じこもらず外出を心がけ、前向きな気持ちを保つようにしているようです」

 頚椎症のように神経の圧迫で起きるしびれは、高齢者にしばしば見られる。神経の異常がある部位によって、しびれを感じる場所も変わってくる。

 都内で整形を含む「総合クリニック」を営む遠藤茂樹院長は、こう説明する。
「手の指先のしびれる病気として『手根管症候群』というものがあります。どんな症状かといえば、手首付近で、靭帯と骨で挟まれた神経の通り道(手根管)が圧迫され、親指から薬指のしびれがでます。手の仕事が多い人がなりやすいといわれ、ひじの内側の神経が骨などで圧迫される『肘部管症侯群』でも、薬指や小指にしびれが出ます。また、頚椎症で脊髄が圧迫される『頚椎症制脊髄症』の場合、手や腕だけでなく、下半身にもしびれや痛みが出ることがある。これで日常生活に困る場合には、手術ということを検討せざるをえなくなります」

 他に頚椎症の場合、手術をしないときは、症状を和らげる薬や首を固定する装具を使い、首を安静にさせる方策をたてる。装具を使う時は、転ばないように注意し、さらに痛みやしびれが出ないように注意する。痛みやしびれが酷くなる姿勢は避け、首に負担がかからない枕の高さを調節したりして、患者へかかる負担を考慮しているという。