眼科の代表的な病気「白内障」と「緑内障」 白と緑でなにが違う?

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執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ


さまざまな眼の病気のなかでも、

「白内障」

「緑内障」

の患者数は、近年増加傾向と言われています。

名前が似ているため、同じような病気と誤解されることも多いのですが全く違います。

「白内障」は水晶体が濁って見えにくくなる病気、「緑内障」は視神経が傷んで視野が欠けていく病気です。

それぞれ詳しく解説します。

白内障の症状

眼球にある

「水晶体」

は、カメラでいうとレンズに相当します。

健康な人では65%が水分、残りはたんぱく質などで構成されており、ほぼ透明です。

「白内障」はたんぱく質の変性により、この水晶体が酸化して白く濁って見えにくくなる病気です。

水晶体が濁ると光が乱反射し、像が正しく結べなくなります。

視力の低下や目のかすみ、まぶしさを感じるなどの症状がでます。

白内障のタイプ

白内障にはいくつかのタイプがあります。

加齢が主な原因となる

「加齢性白内障」

、他の病気の合併症として起こる

「併発白内障」

、そのほか、ステロイド剤など

「薬による白内障」

、目やその周辺をこする・打つなどして水晶体が傷つく

「外傷性白内障」

、生まれつき水晶体が濁っている

「先天性白内障」

などです。

「併発白内障」で合併する病気には、糖尿病、アトピー性皮膚炎、ぶどう膜炎(目の虹彩や毛様体、脈絡膜が炎症を起こす)が挙げられます。

「加齢性白内障」は50代で約半数、70代で8割、80代になるとほとんどの人に見られると言われますが、併発性の場合10〜30代でも発病することがあります。

白内障の治療や対応

問診から各種検査を経た結果白内障と診断されると、日常生活で不便がない軽度であれば「経過観察」をすることもあります。

また、水晶体の濁りが少し進行している程度では、点眼薬による薬物療法で進行を遅らせることができます。

しかし、生活に支障が生じている重度のケースや、少しの進行であっても患者さん自身が希望する場合は、手術療法が行われます。

最もよく行われる手術は、水晶体の核を砕いて眼内レンズと入れ替える

「超音波乳化吸引術(ちょうおんぱにゅうかきゅういんじゅつ)」

、重篤で濁りが酷い、水晶体が硬くなっているといったケースでは

「水晶体嚢外摘出術(すいしょうたいのうがいてきしゅつじゅつ)」

です。

とくにTVなどでもよく紹介される「超音波乳化吸引術」は、手術時間も大変短く10分以内で眼内レンズが水晶体と交換されます(片眼の場合)。

レンズには近・遠距離用、乱視用など単焦点のものと、多焦点のレンズがあります。

多焦点レンズは慣れるまで時間がかかり健康保険も適用されませんが、近くにも遠くにもピントを合わせることができます。

レンズはライフスタイルに合わせて選択するとよいでしょう。

術後しばらくは通院して経過をみます。

点眼をする、目の周りを清潔に保つ、入浴を控えるなど、医師から指示される日常生活上の注意事項を守り術後のケアをします。

緑内障の症状

正常な眼球は、

「毛様体」

(収縮によって水晶体の厚みを変える)から排出される房水(ぼうすい)の量が一定に保たれることで、眼球の内部から外側に向かって加わっている圧力(眼圧:がんあつ)もコントロールされています。

ところが、房水の流れが滞る・詰まるなどして流れなくなると、眼圧が上がってしまいます。

そうすると、視神経が強く圧迫され、傷ついたり視野が欠けてしまったりという症状が起こり、失明に至る危険も伴うのです。

眼圧が22mmHg以上になると

「高眼圧」

といい緑内障が疑われます。

緑内障のタイプ

緑内障にもいくつかのタイプがあります。

眼圧の上昇による

「原発緑内障」

、病気やけが、薬などが原因となる

「続発緑内障」

、子どもに見られる先天的な

「発達緑内障」

などです。

また、日本人には眼圧の高くない

「正常眼圧緑内障」

と呼ばれる注意を要する緑内障も多く、緑内障患者の7割ほどが該当すると報告されています。

ちなみに日本人の緑内障患者は全人口の5%とされています。

緑内障の治療や対応

緑内障の初期は自覚症状が少ないため、定期的に視野のチェックを行い、欠損を感じたらできるだけ早く医療機関を受診するよう奨励されています。

問診や検査の結果、緑内障と診断された場合、眼圧の高さや症状の進行度合いによって主に3つの治療法が選択されます。

点眼薬で眼圧を下げる(薬物療法)

いったん緑内障で視野欠損が起こると、傷ついた視神経を修復して視野を回復する、根本的な治療は今のところできません。

治療はこれ以上視野の欠損が拡がらないように眼圧を下げる対症療法が中心です。

房水の産生を抑制するものと房水の排出を促進するものがありますが、患者さんの状態に合わせて薬の種類を選択し、点眼薬として処方されます。

レーザー治療

点眼薬では効果がない場合、房水の流れを改善するために、虹彩(こうさい)に孔を開けるレーザー照射が行われます。

照射時間は5分程度、日帰りで受けられる治療法です。

また、レーザー治療は出力を弱くして白血球のマクロファージを活性化するためにも用いられます。

溜まった老廃物を除去して、房水の流れを改善します。

ただし、この方法は効果が出るまで3か月ほどの時間を要します。

繊維柱帯への手術法

房水がスムーズに流れるよう、房水が流れるフィルター役である繊維柱帯(せんいちゅうたい)を切開または切除する手術です。

レーザー治療が効果を発揮しない場合に用いられます。

手術後の管理が重要なので、どちらも7〜10日ほどの入院を要します。


このように、緑内障は症状の程度によって治療法は異なりますが、どの方法も定期的な通院と目の保護や生活の管理が求められます。

術後の点眼は生涯継続します。

また、基本的には普通に生活できますが、イライラやストレス、カフェインのとり過ぎ、ステロイド薬の長期使用などは注意が必要で、できるだけ避けるように指導されます。

白内障も緑内障も初期では自覚症状がなく、気がついたときには病気が進行していることも少なくありません。

定期的に目の健診を受けて早期発見を心がけましょう。


<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供