その“ぽっこりお腹”の原因は!?無理せず解消できる食事と運動

「ぽっこりお腹」が気になる人は多いもの。なかには「別に太っているわけでもないのに、お腹だけぽっこり出ている…」という人もいるのでは? 実はぽっこりお腹の原因には腸内環境が大きく関係しており、普段の食生活などを見直すことで改善することがあります。今回は、すぐに実践できるぽっこりお腹の解消法について紹介します。
ぽっこりお腹の原因は?
ぽっこりお腹になってしまう原因は、大きく分けて「腹筋の衰え」「骨盤の歪み」「便秘」「皮下脂肪・内臓脂肪」の4つ。ただし、どれか一つに起因しているとは限らず、複数の原因によって、ぽっこりお腹になっているケースがほとんどです。
(1)腹筋の衰え
腹筋には「内臓を保護する」という働きがあります。私たちの身体は、肺や心臓は骨に守られていますが、胃や腸はとくに骨など硬いものに守られているわけではありません。そのため、骨の代わりに内臓を守っているのが腹筋になります。
この腹筋が衰えると、支えを失った内臓の位置が本来あるべき位置よりも下がり、下腹部がぽっこりと出てしまいます。また、腹筋は便を押し出すときにも必要な筋肉です。そのため、腹筋の筋力が低下すると便秘が引き起こされ、便が腸内に滞留し、ぽっこりお腹になる可能性もあります。
(2)骨盤の歪み
骨盤の歪みもぽっこりお腹の原因となります。腹筋の衰えと同様に、骨盤の歪みによって内臓の位置が下がることで、ぽっこりお腹になる可能性があります。
(3)便秘
便秘は「便意の我慢」「過度な食事制限」「不規則な生活(夜型など)」「水分不足」「運動不足」といった要因が複合的に影響し、腸内環境の劣化や腸の動きが鈍ることで引き起こります。これによって腸内の消化・吸収機能や便を送り出す「ぜん動運動」の働きが鈍ると、便をうまく排泄できず、便が腸内に長期間残ってしまい、お腹がぽっこり出てしまいます。
(4)皮下脂肪・内蔵脂肪
便秘などによって腸の働きが鈍ると、腸の栄養吸収効率が下がります。その結果、食べ物から消化しきれなかった糖分は脂肪として体内に残り、これらが皮下脂肪・内臓脂肪となりぽっこりお腹を引き起こします。
また、人間の腸内には善玉菌と悪玉菌が混在しており、善玉菌が活発な状態だと、天然の“ヤセ物質”といわれる、脂肪の蓄積を防ぐ「短鎖脂肪酸」を作り出します。しかし、腸内環境が悪化した状態では、悪玉菌の数が優勢となり短鎖脂肪酸をうまく作り出すことができません。その結果、身体の代謝が落ちたり脂肪が蓄積されやすくなったりします。
ぽっこりお腹の解消法 -食事サイクル編-
ぽっこりお腹解消のカギを握るのが「便秘の解消」。まずは普段の食事のサイクルを見直し、腸内環境を整えることから始めましょう。
1日3食、規則正しく食べる
1日3食、規則正しく食事を摂ることで、腸のリズムが安定し、定期的な排便へつなげることができます。朝の時間帯は忙しいという人は、プレーンヨーグルトやバナナだけでもいいので、朝食を習慣化するように心掛けましょう。ヨーグルトを食べることで、善玉菌であるビフィズス菌が増え、悪玉菌が減少し、腸内環境の改善にもつながります。
朝食は抜かない
便意を起こすには「大ぜん動」と呼ばれる腸の収縮運動が欠かせません。食事で口にした物が胃の中に入ると、腸がぜん動運動を起こし、便意を誘発するのです。これは1日に何回もあるわけではなく、特に起こりやすいのは朝食の1時間後と言われています。そのため、朝食をとることは、スムーズな排便を促し便秘の解消に役立ちます。
また、朝は起床後すぐにコップ1杯の水を飲むことも効果的です。水分によって便が硬くなるのを防げるのはもちろん、空っぽの胃に水が入ることで大腸のぜん動運動のスイッチが入ります。
夕食は就寝3時間前までに食べる
ヒトの身体は、睡眠中に「モチリン」というホルモン(体内の働きを調整する物質)が十二指腸から分泌され、寝ている間に消化管の内部をきれいに掃除してくれる役割があり、朝の食事や排便に備えてくれます。
しかし、モチリンは空腹にならないと十分に分泌されません。そのため、寝るまでに胃の中がある程度空になっている状態が理想的です。遅くとも就寝の2〜3時間前には食事を終わらせ、モチリンが分泌されやすい状態を作っておきましょう。
ぽっこりお腹の解消法 -栄養バランス編-
食べ物の通り道である腸は、食べ物に含まれる栄養成分の影響を強く受けます。まず、胃や十二指腸で吸収されやすい形に分解された食物は、おもに小腸で栄養分が吸収されます。腸壁で吸収された栄養分は、腸壁から血液中をめぐり、身体全体に行き渡ります。このように私たちが普段口にするものは、体型や体調と大きく関係しているのです。
たとえば、痩せ型の人の腸内には「バクテロイデス属菌」という善玉菌が多く存在すると言われています。このバクテロイデス属菌が腸内で作り出す「短鎖脂肪酸」には、余分な脂肪の蓄積を防ぐほか、脂肪を燃焼させる働きがあります。また、腸内を弱酸性に保ち、悪玉菌が繁殖しにくい腸内環境を作ります。
この「短鎖脂肪酸」は、痩せ型の人の腸内にだけ存在しているわけではなく、腸内にすむ善玉菌が食物繊維をエサとして食べることで生まれる物質です。そのため、食物繊維を摂取することで「短鎖脂肪酸」が生まれやすくなり、ぽっこりお腹の原因となる、便秘や皮下脂肪の蓄積を防ぐことができるのです。
ここでは、食物繊維をはじめ、ぽっこりお腹の解消に役立つ栄養素について、紹介します。
食物繊維
腸の動きを活性化させる働きがあり、便秘解消に欠かせない栄養素です。1日25グラムを目安に摂取するのが理想的とされています。
食物繊維は、大きく「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」にわけられます。「不溶性食物繊維」は、水に溶けない性質を持ち、便のカサ増しをする効果があり、「水溶性食物繊維」は、水に溶ける性質を持ち、便を軟らかくする働きがあるほか、腸内細菌のエサとなって短鎖脂肪酸を作り出す役割を持ちます。
また、「水溶性食物繊維」は、水分を含むことによってゲル状になる粘性があります。粘性が増すことによって食べた物がゆっくり時間をかけて腸内を移動し栄養を吸収するため、血糖値が上がりにくくなる効果もあります。この「水溶性食物繊維」は、和食の定食のようなバランスの良い食事をとることで摂取できます。また、第3の食物繊維と呼ばれる「レジスタントスターチ」をあわせて摂取することでより効果を高めることができるため、最近非常に注目を集めている栄養素です。
不溶性食物繊維
穀物類(ライ麦、とうもろこし、スーパー大麦など)きのこ類(しいたけ、しめじなど)豆類(枝豆、大豆、あずき、いんげんなど)
水溶性食物繊維
一部の穀物類(ライ麦、スーパー大麦など)ネバネバした食材(オクラ、なめこ、納豆、やまいもなど)根菜類(ごぼう、にんじんなど)イモ類(サツマイモ、さといもなど)海藻類(ワカメ・昆布など)フルーツ類(りんご、バナナ、みかんなど)
第3の食物繊維
食物繊維の中には「レジスタントスターチ」という発酵性の食物繊維も存在します。腸の入り口に近い所で善玉菌のエサとなる「フルクタン」や「β-グルカン」といった水溶性の食物繊維とは異なり、第3の食物繊維であるレジスタントスターチは善玉菌に食べられるのに時間がかかるため、腸の奥まで届きます。そのため、水溶性食物繊維とともに摂取することで、腸の入り口(小腸)だけでなく奥(大腸の奥)でも「短鎖脂肪酸」が生み出され、腸内環境を弱酸性に保ち、悪玉菌が増えにくい健康的な腸内環境を作り出します。
オレイン酸
脂質の主な成分である脂肪酸の一種です。小腸で吸収されにくい性質があるため、成分の働きが大腸まで届き、排便を促進する効果があります。オリーブオイルに多く含まれることで知られています。
オリゴ糖
グルコースなどの単糖が複数つながって構成される糖で、摂取した後、消化酵素で消化・分解されずに大腸まで届く性質があります。大腸に届いたオリゴ糖はビフィズス菌のエサとなって善玉菌を増やし、腸内環境の改善につながります。
乳酸菌
ヨーグルトなどに代表される乳酸菌は、食物繊維をエサとすることで乳酸や酢酸といった短鎖脂肪酸を生み出します。また腸のぜん動運動を促す働きもあるため、便秘予防にも役立ちます。
マグネシウム
腸内に水分を集め、便を軟らかくして便秘を改善する効果があります。同時に体温や血圧を調節し、身体の代謝を助ける働きもあります。マグネシウムは発汗やストレスによって消費されやすい特徴があるため、毎日摂取することが理想的です。
ビタミンC
実はビタミンCにも、腸内に届くと乳酸菌のエサとなり、善玉菌を増やし、腸内環境を良好にする効果があります。ビタミンCには、分解時に発生するガスによって腸のぜん動運動を活発にする働きがあるほか、水溶性であるため便を柔らかくする作用もあります。
グルタミン
大腸を動かすエネルギー源です。大腸の運動だけでなく、健康な身体を作るために欠かせない栄養素です。小腸の粘膜を修復したり、粘膜の細胞の働きを高めて吸収を促したりと、小腸の免疫機構にも欠かせないものです。
メントール
腸内に溜まったガスを排出させる働きや、腸管のけいれんを抑える作用があります。また、血管を拡張する働きがあるため、血液の循環促進によって冷えの解消にも役立つ栄養素です。
ぽっこりお腹の解消に効果的な食材とは?
ぽっこりお腹の解消に役立つ栄養素が多く含まれる食品群として「穀類」「野菜」「豆・海藻」「フルーツ」「良質な油」「乳製品」「発酵食品」などが挙げられます。なかでも茶色い穀類は、野菜に比べて食物繊維量が豊富で、特に不足しがちな水溶性の食物繊維を効率的にとることができます。
ここでは、穀類をはじめ、ぽっこりお腹の解消に役立つ栄養素が具体的にどのような食材に含まれているのか、おすすめの食材と食べ方をご紹介します。
穀物
<大麦、玄米、そば、パスタ、ライ麦パンなどの茶色い穀物>
食物繊維を効率的に摂取できるのは、野菜よりも穀物、なかでも茶色い穀物が良いと言われています。日本人の主食である米にも食物繊維は少量含まれていますが、脱穀し白米に精製する過程で多くの食物繊維が失われてしまいます。茶色い穀物の中でも特に不足しがちな水溶性食物繊維が豊富なものを選ぶのが良いでしょう。水溶性と不溶性食物繊維をバランス良く含んでいるスーパー大麦や、もち麦などを白米に混ぜて炊くことで、食物繊維を効果的にとることができます。
また、シリアルを食べる場合は食物繊維の多い玄米や大麦を加えると便秘解消により効果的です。麺類の場合は、うどんよりも食物繊維を多く含むそばやパスタがおすすめです。

→ 「ぽっこりお腹」解消の救世主「スーパー大麦」の働きについて紹介しています。
野菜
<ごぼう、にんじん、しいたけ、しめじ、かぼちゃ、サツマイモ、パセリなど>
ヘルシーな食べ物として生野菜サラダを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、どんな野菜でも食物繊維を豊富に摂れるわけではありません。レタスやキャベツなどはあまり食物繊維が含まれておらず、目標の1日25グラムを摂取するには、レタスを10玉ほど食べなければなりません。ごぼうやにんじんなどの根菜類や、しいたけやしめじなどのきのこ類を食べましょう。
野菜は生ではなく加熱したほうが、かさが減り多く食べられますが、水溶性と不溶性の食物繊維を含む食材を適度に織り交ぜ、バランスよく食べることが大切です。
豆、海藻
<寒天、もずく、ワカメ、ひじき、のり、昆布、大豆、えだまめなど>
和食の副菜などで食べる機会が多い豆類や海藻類。そのために一品作るのが面倒だという人は、どれか食材一品をサラダに載せて食べるだけで摂取しやすくなります。もちろん味噌汁の具材にも適しています。
フルーツ
<キウイフルーツ、りんご、バナナ、ブルーベリー、アボカド、イチジク、いちごなど>
食物繊維以外にもビタミンなどの栄養素が豊富に含まれています。朝食ではヨーグルトに混ぜて食べるのもよいでしょう。夕食後の口直しなどデザートにもぴったりです。
以下に、食品100gあたりの総食物繊維量の比較を示しています。

良質な油
<エキストラバージンオリーブオイル>
オリーブオイルに含まれるオメガ9系脂肪酸のオレイン酸は、便秘解消に効果的です。特に、エクストラバージンオリーブオイルは、腸内の滑りをよくし、便がスムーズに排出されやすくなります。
パンにオリーブオイルをつけて食べる、サラダを食べるときのドレッシングの代わりとしてオリーブオイルをかけるだけで、オイルの風味を楽しみながら摂取できます。普段食べている料理にさっとかけて摂取できる手軽さが魅力です。
乳製品、豆乳
<ヨーグルト、チーズ、豆乳>
乳製品には乳酸菌が多く含まれており、タンパク質、カルシウムなどの栄養素も同時に補給できます。一方で、食材によっては動物性脂肪が多くカロリーが高いものもあるので摂り過ぎには注意しましょう。
豆乳には、乳酸菌などのエサになるオリゴ糖が含まれているため便通の改善につながります。
ぽっこりお腹の解消法 -運動編-
食事内容の見直しとあわせて、適度な運動を取り入れることで、ぽっこりお腹をより効果的に解消することができます。
身体の奥深くにあるインナーマッスルである腸腰筋(ちょうようきん)という筋肉を動かすことが効果的です。腸の後ろにあるこの筋肉を動かすことで、腸が刺激されてぜん動運動が促されるほか、腹圧を高めて便を押し出しやすくすることができます。
腸腰筋を鍛えるためには、できるだけ階段を使う、速歩で大股で歩くなど、特別な運動でなくてもよいので、毎日こまめに身体を動かすように心がけるとよいでしょう。
<参考書籍>
『排便力をつけて便秘を治す本』(光文社知恵の森文庫)松生恒夫
『寿命の9割は腸で決まる』(幻冬舎新書)松生恒夫
『もち麦で腸イキイキ革命!』(日本文芸社)松生恒夫
『キレイにおいしくやせる! スーパー大麦ダイエットレシピ』(永岡書店)庄司 いずみ、青江 誠一郎
『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(東洋経済新報社)津川友介