エントリーシートや面接で評価される自己PRの特徴とは(写真:mits / PIXTA)

今回のテーマは「人事が評価する自己PR」についてです。

エントリーシートでも面接でも、自己PRがしっかりできなければ、どんなに素晴らしい人材でも選考に通過することができません。「自己PRの仕方がもう少し上手ければ評価できたのに……」ということはよくある話です。


それは、本人にとっても選考している企業にとっても、非常にもったいないことです。多くの人事担当者も、学生のみなさんが、自分を伝える術を少しでも身につけて選考に向かってほしい、と思っています。

実際、どんな自己PRを人事が評価するか、触れていきたいと思います。しかし、その前にまず一言伝えたいのは、「全ての企業に通用する自己PRはない」ということです。なぜなら、実は企業によって、また企業がどんな人材を求めているかによって、評価しているポイントは違うからです。

評価ポイントは会社で異なるが共通項も

もし、志望する企業が明確に決まっていれば、大学受験の志望校の試験対策と一緒で、志望企業の選考実績、選考中の質問、選考内容など、実際に内定をもらった先輩からの情報などを頼りに、どんな人材を採用しているかを調べ、そこから自己PRを練っていくのが、いちばん正しいやり方になります。

ただそうなると、選考を受ける企業の数だけ自己PRを用意する必要がある、という話になってしまいます。ここではあくまで、人事や経営者の方と話す中で共通する、評価する自己PRと評価しない自己PRを分けるポイントにのみ絞って、紹介していきます。

絞ったポイントは以下の3つです。

1. 高い目標に向かった主体性+再現性
2. 自己分析&他己分析
3. 壁を突破した成長

それぞれ見ていきましょう。

1. 「高い目標に向かった主体性+成果の再現性」があるか

これは、誰かが考えたことに乗っかったり、誰かに言われたことで動いたりするのではなく、自らが考えて動いた経験がきちんとあり、その経験から出せたような成果が、社会人になっても再現できそうな内容かどうか、ということです。

社会人になって仕事ができる人たちは、自分が目指す目標や自分が出したい成果に向けて、時間をとても大切にしています。一緒に目標や成果に向けてがんばるのに、極力むだなコミュニケーションを必要としない人材を好みます。

正直、新卒社員に対して、即戦力としての期待はあまりしていないのがほとんどです。その一方、高い目標に向けて考えて行動できる、自身を強く動かせるエンジンを持つ人なら、知識やスキルを身につけさせて、一緒に目標・成果に向かっていけるという期待が生まれます。

主体性のない「副・サブ話」にはうんざり

しかし、自分の考えを持たない指示待ちの人や、いちいち全てを言わないと何もできない、自身を動かすエンジンが小さい人に対しては、必要以上のコミュニケーション、気配りがいるとして、敬遠されがちです。働き方改革が叫ばれ、時間あたりの生産性をより強く求められる時代に、将来の自立が見えない”かまってちゃん”人材に対し、時間と労力を割く余裕はないのです。

また、よくサークルの副会長だとか副キャプテンだとか、バイトのサブリーダーの自己PRは、人事の間ではうんざりエピソードで、「本当よくある副・サブ話」としてよく語られています。

なぜかというと、エピソードに主体性があまり見られないケースが多く、さらに、リーダーの存在があってこその成果であり、そのリーダーがいなくなったときに同じ話ができるのかという、再現性の部分が見えにくいからです。それに加えて、同じようなエピソードをする人が多く、差別化が難しいというネガティブ要素も加わるため、人事としては「また、この話にうんざり」となりやすいのです。

私個人としては、この「副・サブ話」は大好きです。なぜなら組織は、リーダーばかりで成り立っているわけではないので、「副・サブ」の役割をしっかり担えるのも才能ですし、どの組織にも、その人にあった適正なポジションがあると思うからです。

ただし「副・サブリーダーとしての主体性と再現性」は求めます。「副・サブ」としての役割をどう捉え、自分で何を考え行動し、どんな成果を出したのか、その成果は当たり前のレベルのことなのか、それともその人だからこそ産み出せた成果なのか、といったことを見ます。

当然、私以外にも、「副・サブ話」を前向きに捉えてくれる人事の方はたくさんいます。ただしそれは、選考する人数がそれほど多くない人事や、1人の選考に相応の時間をかけられる会社の人事なら、ある程度できると感じています。一方、人気企業で選考人数が多く、面接時間も少ない会社や、1人の選考に時間をかけることに理解を示さない会社の人事は、そこまでていねいに話を拾うことは難しいと思っています。

また、どんなに自分で考えて行動しているとしても、その結果や成果であまりにもレベルが低いと、かえって評価を落とすことも多いです。「すごいね」「面白いね」と、他人から言ってもらえそうなエピソードを拾い出すことが大事です。それがなければ、今からすぐにでも、何か成果を実際に作りに動きだすことをしたほうがよい、とは思います。

「今からなんて無理」と思うかもしれませんが、いい就活をする学生は「足りないことに気づいたら、すぐに動くよね!」というのが、人事担当者の間での共通認識です。簡単に諦めるよりも、何かできることがないかを少し考えてみるだけでも、してみてはいかがでしょうか。

自己PRと他人の見方が違うのはマイナス評価

2. 自己分析に「他己分析」が加わっているか

「自己分析が、本当に自分だけの分析で終わっている人って、もったいない」。これも人事担当者の間でよく出てくる話です。

自己分析が自分の中だけで終わっている人は、自分視点だけで考えていて、他人にどう見られているかという要素がいっさい入っていません。そのため、自己PRしている内容と、人事から見えるその人の印象が全く噛み合わず、ものすごく違和感を覚えます。そこから、その人に対する信用度が崩れたり、その人とのコミュニケーションの取り方に難が出たりして、選考を通過する確率はグッと下がってしまいます。

自分のことは、自分がいちばん分かっているようで、実はそうでもありません。近くで見ている他人のほうが、自分のことをわかっていることはよくあります。自分のことは意外と見えていないものです。私自身もいまだ、よくも悪くも、他人から気づかされる自分に出会います。

自分で認識している自分も大事ですが、就職活動で選考をするのは「他人」だということを忘れないでほしいのです。自分で大切にしている価値観、将来のビジョン、好きなことは、当然、その人自身が一番わかっていることでしょう。しかし、強みや得意なこと、弱みや苦手、キャラクターや役回りは、実は他人のほうがよくわかっていることが多々あります。

他人の視点を入れずに自己PRをする人は、強みを過大評価してしまったり、逆に十分強みなのに過小評価、もしくは強みにまったく気づかなかったりする場合があります。そして、気づけば直せる弱みなのに、その弱みを修正できず、自己PRをして終わってしまう場合もあります。

選考時、そうした本人が気づいていない部分を教えてあげたいと、多くの人事が思っています。しかし選考はあくまで、会社に必要だと思う人材を獲得する時間で、学生を育成する時間ではありません。

また、選考という限られた時間の中では、NG部分を指摘して、それを素直に受け止めてもらえるほどの関係を作ることも難しい。下手したら、SNSで「○〇社の人事に偉そうにこんなこと言われた!」と書かれる時代でもあり、気づいてほしいことを、会社のイメージを損なわずにうまく伝えることも困難なのです。

ちなみにインターンシップは「学生と接触する時間に比較的余裕があり、いっしょに活動する中で信頼関係も生まれやすいため、気づいたことをしっかりフィードバックしてあげられる。参加した学生もそれを望んでいるから嬉しい」という人事の声を聞きます。

インターンシップを利用するのもよいですし、自分の友人や先輩、家族、学校や部活の先生、ゼミの教授など、自分をよく見てくれている人は、探せばたくさんいるはず。ぜひ、自己分析を自分だけで終わらせず、他人から見た自分を理解する場を設けて、自分が思っている自分とのギャップを埋め、等身大の自己PRにつなげて下さい。

人事としては、自己認識と他己認識のギャップが少ないほど、コミュニケーションが円滑になります。さらに互いに感じる強み弱みが一致することで、互いが納得し合う適材適所が考えやすいこと、そして将来に向けた成長イメージの共有もしやすいことなどがあり、とても安心するのです。

人事の多くが壁を乗り越えた話が好き

3. 「壁を突破した成長」が盛り込まれているか

これは、私が知っている人事や経営者の方、ほとんどが好きです。社会人になると、いろいろな壁にぶつかります。学生時代とは全く違う、複雑な利害関係がある中に巻き込まれながら、誰かの役に立ち、実際にお金を稼ぐということをしていきます。

そんな中、想像以上に覚えなくてはいけないことや、こなさないといけないことが多く、競争相手も多くなります。厳しい現実に接し、これまでなんとなくうまくいくだろうと思っていたことが、信じられないくらいにうまくいかないということに、たくさんブチ当たります。

よって人事は、選考している人材が壁にぶちあたったとき、どうなりそうなのかをとても気にしているため、いろいろな壁を乗り越えられそうな人材という印象が持てる話を好むのです。

たとえば、「目標に向かってメンバーに働きかけたが、誰もついてこず、空回りしたまま1度は終わってしまった。そこで、メンバーがついてくるような工夫をした結果、目標を達成することができた」というような、組織が関係する失敗や壁を乗り越えて成長し、成果を出せた話は、会社が組織なだけに、将来の活躍イメージができるPRにつながりやすいと感じています。ただ重要なのは、工夫をした内容です。そこにその人ならではの個性が発揮されます。

一方、学生時代にたいした壁にぶつからず、なんとなくやってこられた人は、「社会人になって壁にぶつかったとき、その壁を超えられるのか? 大丈夫か?」と、なるわけです。そして「自己PRが一見完璧なのに、これまであまりにもうまくいきすぎているため、失敗してしまったときのリカバリーが効かないのでは」と、選考で落としてしまうケースもあります。

逆に、大変な失敗をしたり、壁にぶつかったのに、そこから自分の努力と工夫で、その失敗を取り返したり、壁を突破したりして、できなかったことができるようになったというエピソードは、採用する側にとって、社会人になってからも、同じように諦めずがんばってくれるだろうという想像をかき立て、非常によい印象を持ちやすいのです。

ただ、その失敗や壁のエピソードが「その程度のことで……」と思われるようなことは、マイナス印象であるのは、あらかじめ伝えておきます。しかし、自分の現状レベルを超えるために挑んだうえでの失敗や壁にぶつかったことを、どう乗り越えたか、その人らしさが出る形でPRできれば、印象がよくなる可能性は高いと思います。また、そのような人材は、社会人になってからも実際に活躍する可能性が高い、というのが人事担当者の間での共通認識です。

“盛った”自己PRは深堀り質問でバレる

日本の新卒採用は、今のところ「即戦力採用」ではなく、入社後どれだけ伸びるかという期待を含めた「ポテンシャル採用」が主流です。だから選考でも、「今何ができるか」ということより、「今後、どれだけのことができそうか、成長できそうか」という視点が重視されます。そのため、その人が今後の成長を感じさせるPRは、とても刺さりやすいのです。

以上が人事担当者から見た自己PRのポイントです。なお、自己PRについて、「採用されるために実態以上に話を“盛った”場合、それを人事担当者は見破られるのか」を、気にする人もいるでしょう。

結論からいうと「選考の中で必ず見破られるわけではないが、真剣に選考している企業、優秀な面接者は、見破ることができる」です。

その話がどれだけ本当に自分で考え、工夫、努力し、行動した内容なのか、というのは、掘り下げて質問をしていき、複数の話を聞いていけば、わかるものです。適当な作り話では、かえって評価を下げる結果になりかねません。そして「もし見破られなかったとしても、実際に働き始めたら、その盛った部分はほぼバレて、結果、その組織にはいずれいづらくなる可能性は高い」と言うのが私の考えです。

盛ろうが何をしようが、採用されれば勝ち、という考えの人もいるとは思います。しかし、エピソードを“盛って”、嘘をついて入社することは、嘘の自分を買われたことになります。だからその嘘の自分とずっとつきあっていくことになります。その嘘に、すぐに追いつく成長と行動をする覚悟があるならともかく、その覚悟もないなら、私は、その生き方はしんどいのではないかと思います。

人の価値観の話になるので、何が正しいかは決められませんが、健全な心で長く気持ちよく働ける職場、仕事を手に入れるためには、嘘の自分ではなく、できる限り本当の自分を受け入れてもらえることが、大事だと考えているのです。