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イタリアを代表するチーズのひとつ、パルミジャーノ・レッジャーノ。2018年、グローバル・マーケティング・リサーチ会社、イプソス株式会社がイタリア国内の消費者向けに毎年行っている「世界で最も影響力のあるブランド」調査において、パルミジャーノ・レッジャーノが2017年に引き続き、「世界で最も影響力のあるPDO(イタリアにおいてはDOP)製品」に選ばれた。まさしく、チーズの王様というのにふさわしいパルミジャーノ・レッジャーノ。イタリア国内だけでなく世界的にも有名なのはご存知のとおりだ。

ところで、パルミジャーノ・レッジャーノとはどんなチーズなのか? 詳しくご存知ない読者のために説明すると、その名前はパルマとレッジョ・エミリアの谷間で生まれたことに由来する。北イタリアのパルマ、レッジョ・エミリア・モデナの各県全域とボローニャおよびマントバ県の一部(画像右の地域)、という限られた地域内で作られ、厳しい審査に合格したものだけが、刻印を押されてパルミジャーノ・レッジャーノを名乗ることができる。こうして出来たチーズはDOP認定(EUにおける原産地名称保護制度)を受けている。材料は生乳、塩、レンネット(天然の凝乳酵素)の3つだけ。乳牛の飼育から、その主な飼料となる青草や干草の生産もこの地域内で行われ、土着の微生物の働きを活かすため加熱殺菌をしない生乳が使われている。さらに添加物は一切使用していない。また熟成期間は、最低12か月と定められており、平均24か月もの長い時間を経て独特の風味、食感、香りが深まっていく。特徴的なジャリジャリとした食感は、熟成を経たことによってアミノ酸が結晶化して白い斑点ができるためだ。1000年の時を経て受け継がれてきたチーズ職人の技とその地域で生産されるナチュラルな材料が、パルミジャーノ・レッジャーノの風味豊かな美味しさを生んでいるのだ。

去る11月12日、パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会は、丸の内のイタリアンレストラン「トラットリア・クレアッタ」にて報道関係者向けに来日プレスランチを開催した。この日のためにパルマ郊外の「リストランテ・レ・カーヴ」の若き女性オーナーシェフ、マリア・アマリア・アネッダシェフも来日し、パルミジャーノ・レッジャーノを使いながら、和のテイストを取り入れた特別メニューを開発し、披露した。

(写真上:左から)パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会の広報担当者、アンドレア・ロブスキ氏、パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会、広報責任者、ファブリッツィオ・ライモンディ氏、マリア・アマリア・アネッダシェフ。

まず始めに、熟成期間の違いによってどれだけチーズの味と風味が変化するのかを知るために、24か月、36か月、82か月の3種のチーズを比較してテイスティング。若いチーズはミルキーでフルーティーな風味があり、熟成が進むとナッツやスパイスなどの複雑な風味やコク、そしてアミノ酸の結晶化が進んでよりジャリっとした食感が出てくる。一般的に24か月熟成のものを好む消費者が多いとファブリッツィオ・ライモンディ氏は話す。熟成が進んだ82か月のものになると、その豊かなアロマと旨みはさらに濃厚になり、食感もまるで砂のようなジャリっとした舌触りになる。熟成期間によって味わいが変わってくるのは、チーズそのものが生きている証拠だ。

(写真)左:「パルミジャーノ・レッジャーノの比較テイスティング」、右:「バッサテッリ、マッシュルームのスープに浮かべて」。

続いてアネッダシェフによる最初の⼀⽫は、来日は初めてというシェフだが、イタリアの伝統と⽇本の伝統を掛け合わせる趣向で、⼲し椎茸と乾燥ポルチーニを半々で使⽤した出汁のスープに、バッサテッリというパン粉、卵、おろしたパルミジャーノ・レッジャーノ、ナツメグ、レモンピールから作られる郷⼟料理の⼿打ちパスタを合わせた。キノコのスープとパスタに加えられたスパイスが奥行きのある和のテイストを生み出した。

(写真)右:「ホタテのパルミジャーノ・レッジャーノ グラタン、パンプキンマスタードムースと赤キャベツを添えて」、左:「温かいマラサラ・ザバイオーネ、ナッツとカルダモンのクランブルとタンジェリン」。

メインディッシュは、シェフも挑戦的な一皿と話すこの料理。チーズと魚介類の組み合わせはそれほど一般的ではないが、今回パルミジャーノ・レッジャーノの持つ幅広い可能性を知ってもらうために帆立と合わせたという。オーブンで少し焦がしたパルミジャーノ・レッジャーノの味と香りが繊細な帆⽴の⾵味を引き立てている。最後に登場したデザートは、イタリアの家庭の味だというザバイオーネをパルミジャーノ・レッジャーノでアレンジしたもので、みかんのコンフィチュールを混ぜ、アクセントにブラックチョコレートとカルダモンパウダーを散らした⼀品。エミリア・ロマーニャの作りてによるパッシートワインの、古酒のような香りと上品な甘みと絶妙にマッチした。

豊かな風味と味にコクを与えるパルミジャーノ・レッジャーノを、スパイスや出汁、食材の旨みと融合させ、スタイリッシュな盛り付けで仕上げた料理の数々は、パルミジャーノ・レッジャーノをよく知り、伝統を重んじながら個性的でインターナショナルな料理を得意とするアネッダシェフならでは。
(写真上)パルミジャーノ・レッジャーノを製造するための伝統的なツール

美味しくて心豊かになるパルミジャーノ・レッジャーノは、ちょっと贅沢に友人や大切な人をおもてなししたい時や、自分のご褒美にもぴったり。より美味しく食べるためにパルミジャーノ・レッジャーノ専用のナイフもあるので、ぜひチェックしてみて。これからのフェスティブシーズンに、ワインと同じように、良質なチーズを嗜んで至福のひとときを感じてみてほしい。

■パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会とは?
1934 年に設⽴されたこのチーズの全⽣産者が所属している⾮営利団体。チーズの品質審査および本物の証としての押印を⾏い、世界中に広く出回る模倣品から本物を守り、正しい知識や認知度、そして消費量を向上させるための活動も⾏っている。
https://www.parmigiano-reggiano.it/
※一部写真提供:パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会

※パルミジャーノ・レッジャーノのDOP認定について
元来イタリアにはDOCという原産地名称保護制度があり、パルミジャーノ・レッジャーノは1955年に認定を受けた。1996年からEUレベルでの保護が始まり、DOPという名称に変更されている。EUの制度確立にはパルミジャーノ・レッジャーノが多いに参考にされており、DOPは英語ではPDOだが、ヨーロッパ各国の現地語で表記される。(フランスではAOP)
パルミジャーノ・レッジャーノ自体がDOP認定を受けており、まずパルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会の審査員が1玉1玉、審査をして合格したチーズだけに本物の証である焼印を押される。こうして初めてパルミジャーノ・レッジャーノが出来上がる。その製品がDOP認定されている。