11月25日に行なわれるGIジャパンC(東京・芝2400m)。今年は、三冠牝馬アーモンドアイ(牝3歳)が断然の人気を集めそうだが、スワーヴリチャード(牡4歳)、サトノダイヤモンド(牡5歳)、シュヴァルグラン(牡6歳)など、”復権”を狙う実力古馬も名を連ね、ひと筋縄にはいかないレースにも見える。

 まずは、アーモンドアイの取捨である。

 デイリー馬三郎の吉田順一記者は、アーモンドアイの強さを認めたうえで、逆転候補については以下のような見解を示した。

「調整過程や1週前追い切りなどからは、前走のGI秋華賞(1着。10月14日/京都・芝2000m)以上の雰囲気を醸し出しています。また、その秋華賞、京都の内回りで直線が短い同舞台において、後方から追い出しを遅らせる騎乗を見せたのは、鞍上のクリストフ・ルメール騎手が(アーモンドアイの実力に対して)相当な自信を持っているからに他なりません。

 そうした状況にあって、外国招待馬が穴馬の域を出ない前評判であれば、狙いは日本馬となりますが、アーモンドアイの後ろでレースを運ぶ馬が勝つことは、常識的に難しいでしょう。あと、スローペースの団子状態で、直線を向いてからの瞬発力勝負になっても、対アーモンドアイという意味では、どの馬にとっても分が悪いと思います。

(対アーモンドアイの)狙い目であり、逆転の可能性が残っているとすれば、硬めの馬場を生かして、前でセーフティーリードを保ちながら、粘り込めるタイプなのではないでしょうか」

 一方、日刊スポーツの松田直樹記者は、秋華賞のレース後に見せた様子から、アーモンドアイについて「不安あり」と見ている。

「これまでの三冠牝馬、メジロラモーヌ(※)、スティルインラブ、アパパネ、ジェンティルドンナの4頭は、三冠レースのどこかで接戦を経験していましたが、アーモンドアイはすべて完勝。しかも、秋華賞においては、同馬を管理する国枝栄調教師が『8分ぐらい(の出来)だった』と、余力残しで挑んだことを認めています。

 それほどの馬が、今度のジャパンCに向けては、古馬をなで斬りにするだけの能力を完全に開放できるよう、抜かりない仕上げを施してくるはず。普通に考えれば、勝ち負け必至でしょう。

 ただ、秋華賞後の、アーモンドアイの挙動が気になりました。『熱中症のような状態』(国枝調教師)となり、歩様に異常をきたしました。常に全力で走り切る馬だけに、中5週に詰まるローテーションも気がかりですね。

(歩様について)国枝調教師は『一過性のものだと思う』と話していましたが、フィジカル面はともかく、メンタル面に少なからず影響を及ぼしているとすれば……不安材料となります。

 データ的にも、過去に1番人気に支持された3歳馬の成績は、1着0回、2着1回、3着3回、着外5回と未勝利。強力古馬からマークされる側になるアーモンドアイの挑戦は、冷静に見れば、結構ハードルが高いと思います」
※秋華賞創設前のメジロラモーヌは、桜花賞、オークス、エリザベス女王杯による三冠。

 こうした両記者の分析からすると、アーモンドアイは上位争いに加わってくるだろうが、他馬に先着を許す可能性も十分にありそうだ。

 その候補として、吉田記者がまず推すのは、昨年の菊花賞馬だ。

「この秋、GII毎日王冠(10月7日/東京・芝1800m)、GI天皇賞・秋(10月28日/東京・芝2000m)と連続3着のキセキ(牡4歳)の、もうひと押しを期待したいです」


ジャパンCでGI2勝目を目指すキセキ

 ジャパンCはこの秋3戦目。叩き良化型のルーラーシップ産駒としては、確かに絶好の走り頃だが、この短期間で関東への長距離輸送が3回、という点については不安が募る。しかし吉田記者は、次のように語って周囲が抱く懸念を払拭する。

「関東圏への3度目の長距離輸送。ここ2戦も前でしのぐ、きつい競馬をしてきたことを思えば、上昇度という点を含めて、同馬に対して疑問を感じるのはわかります。とはいえ、1週前の時点で、トモの膨らみは文句なしの状態でした。馬体のシルエットや調教の動きからすれば、秋3走の中で一番の出来に思えます。

“超”がつく極悪馬場となった昨年のGI菊花賞(京都・芝3000m)を勝った実績とスタミナは伊達ではなく、ここ2走は先手を奪ってもスピード負けすることなく、確かな存在感を示してきました。ベストとも思える芝2400m戦で、適度に上がりのかかる競馬を演出できれば、ここ2走の積極策が実を結ぶことでしょう」

 そして、吉田記者はもう1頭、穴中の穴の名前を挙げた。

「ウインテンダネス(牡5歳)です。前走のGIIアルゼンチン共和国杯(11月4日/東京・芝2500m)では、2度目の騎乗となる松岡正海騎手が手綱をとりましたが、ハナを切ってスローペースを引きつける形で4着。この形では、今ひとつ持ち味が出なかった印象を受けました。

 同馬のベストパートナーは、やはり今回鞍上を務める内田博幸騎手。これまでに4回騎乗して、2勝、2着1回、3着0回、着外1回と、この馬の能力をもっとも引き出していて、ここでも期待が持てます。

 中2週で再度の関東遠征となりますが、この秋はジャパンCを目標としたローテーションで、まだ上積みは見込めそうです。持ち時計があり、気分よく行けば、アッと言わせられるだけの下地はありますよ」

 片や、松田記者が一番に期待するのは、昨年の覇者シュヴァルグランだ。

「同馬は、GI天皇賞・春(京都・芝3200m)で2年連続2着となるなど、ステイヤーの地位を確立していますが、実際のところ、もっとも得意としているは、8戦4勝、2着1回、3着2回、着外1回という2400m戦です。唯一、馬券圏外に敗れたのは、休み明けの前走・GII京都大賞典(4着。10月8日/京都・芝2400m)だけ。東京コースも3戦2勝、2着0回、3着1回、着外0回と相性がよく、巻き返すだけの舞台は整っています。

 また、ハーツクライ産駒の6歳馬という点でも魅力を感じます。成長力に富む同産駒は、年齢を重ねるごとに完成していくからです。父ハーツクライもシュヴァルグラン同様、若駒時代は末脚で勝負するタイプでしたが、古馬となって体が完成していくと、先行策が取れるようになって、新境地を見出しました。ディープインパクトを下した有馬記念がいい例です。

 シュヴァルグランにとっては、好位のインから抜け出した昨年の走りが、その理想型。今年は未勝利でも、実績は見劣りしません。叩き2戦目で大一番を迎えられる今回は、昨年の再現が大いに期待できます」

 松田記者ももう1頭、意外な馬を推奨する。

「イギリスからやって来たサンダリングブルー(せん5歳)です。国際レーティング119は、もう1頭の外国招待馬カプリ(牡4歳)よりも上(※ちなみに、日本馬最上位のレイデオロの国際レーティングは123)。5歳となった今年、重賞で2勝するなどようやく本格化した感があって、とても楽しみな存在です。

 しかも、英インターナショナルS(3着。8月22日/イギリス・芝2050m)、カナディアン国際S(2着。10月13日/カナダ・芝2400m)と、今年のGIで好走した2戦は、どちらも左回り。府中コースの適性も高そうで、一発あっても……」 今年の東京開催のフィナーレを飾る大一番。はたして、ひと足早い”ビッグボーナス”をもたらしてくれる馬はいるのか。ここに挙げた4頭が、その候補であることは間違いない。