例年どおり、今年も東京開催のフィナーレを飾るのは、国際招待競走のGIジャパンC(11月25日/東京・芝2400m)だ。

 ジャパンCと言えば、注目されるのは海外からの招待馬。かつては、世界有数のトップホースが参戦し、外国馬が上位を独占することも多かった。

 ただ最近は、招待馬のレベルが下がったのもあるが、日本馬の活躍が目立ち、外国馬にスポットが当たることは少なくなっている。そして今年も、外国馬の参戦は過去最少タイの2頭のみ。いささか寂しいものがある。

 とはいえ、今回は久しぶりに「超」のつくビッグネームが出走予定。アイルランドのカプリ(牡4歳)だ。


昨年の英セントレジャーを制しているカプリ(右)

 カプリを管理するのは、アイルランドのエイダン・オブライエン調教師。競馬ファンにとっては、もはや説明不要の世界的な名調教師と言えるだろう。2016年の凱旋門賞(フランス・芝2400m)では、出走させた管理馬3頭で上位3着までを独占する快挙を達成。世界中のレースで勝ちまくった昨年は、年間GI28勝をマークして世界最多記録を樹立している。

 そのオブライエン調教師がジャパンCに管理馬を送り込むのは、今回で4度目。昨年もアイダホを出走させて、10番人気ながら5着に食い込ませる健闘を見せた。

 このアイダホと比較すると、カプリは数段格上。つまり、昨年の5着以上が期待できるということだ。

 なにしろカプリは、体調不良による戦線離脱があった今年こそ、際立った成績は残せていないものの、3歳時の昨年は、GIアイルランドダービー(アイルランド・芝2400m)と、GIイギリスセントレジャー(イギリス・芝2900m)と、欧州のクラシックレースを2つ制覇。やや強引な表現をすれば、日本で言う、ダービーと菊花賞を制した二冠馬といった存在なのだ。

 とりわけ、アイルランドダービーでは、イギリスダービー馬のウイングスオブイーグルをはじめ、のちに欧州の2000m路線で最強馬となり、現在のワールドベストホースランキング1位タイのクラックスマン、今年の凱旋門賞で2番人気に推された(結果は4着)ヴァルトガイストら、そうそうたる面々を一蹴。先行策から早めに抜け出して押し切るレースぶりは圧巻だった。

 だからといって、日本で通用するかどうかは、また別の話。力の要る馬場で勝ってきたことや、長距離戦のセントレジャーを勝っていることで、芝2400m戦とはいえ、日本の固い馬場、そしてスピード決着に対応できるのか、疑問に思う声は多いに違いない。

 だが、昨年のアイダホもそんな声を囁かれながら、後方から伸びてきて5着となった。その末脚は、戦前の疑念を払拭するには十分だった。

 カプリもアイダホも同じガリレオ産駒であるが、実はガリレオの血は、ヨーロッパのような自然な芝コースに限らず、日本のように整地された速い馬場への適性が意外と高いのだ。

 たとえば、一昨年の凱旋門賞の勝ちタイムは2分23秒61だった。日本でもなかなかお目にかかれない高速決着となったが、勝ったファウンド、2着ハイランドリール、そして3着オーダーオブセントジョージと、上位3頭は皆、ガリレオ産駒だった。

 さらに、このとき2着のハイランドリールは、馬場が日本同様に整地されている香港やアメリカのGIを4勝している。

 こうした例から、カプリも日本の馬場に対応できる可能性は高く、何ら心配する必要はないのではないだろうか。

 思えば、今年の凱旋門賞の前に、オブライエン調教師に話を聞く機会があった。その際、ガリレオ産駒の適性について、これら前例を含めて尋ねてみると、同師も同様の見解を示していた。

「欧州の自然な状態を保ったままの力の要る馬場と、きれいに整備されたタイムの出やすい馬場と、それぞれ相反する馬場にあって、ガリレオ産駒がその両方で高い適性を示していることについては、私も薄々感じていました。

 その理由が『これだ!』とは断言できませんが、おそらくガリレオ産駒特有の少し胸を張った走法に、何かしらのヒントが隠されているかもしれません。これは、興味深い特徴だと思います」

 このとき、カプリの距離適性にも聞いてみた。それに対して、オブライエン調教師はこう答えた。

「この馬のベストは、2000〜2400m。距離のあるセントレジャーを勝っていますが、それは距離適性というより、能力でカバーした結果です」

 先に触れたとおり、カプリは今年、目立った結果を出していない。それでも、凱旋門賞で5着と善戦。続くイギリスチャンピオンS(イギリス・芝1990m)では、勝ったクラックスマンにはちぎられたものの、2着クリスタルオーシャンとは1馬身半差の4着と奮闘している。

 ちなみに、そのクリスタルオーシャンは、最新のワールドランキングで6位タイ。天皇賞・秋(東京、芝2000m)を勝ったレイデオロ(牡4歳)が13位タイ、スワーヴリチャード(牡4歳)が28位タイということを考えると、カプリが決して侮れない存在であることがわかる。

 鞍上は、お馴染みライアン・ムーア騎手。ジャパンCはすでにジェンティルドンナ(2013年)で制しているが、主戦厩舎の馬で臨むとなれば、一段と本気度も増すことだろう。 そして何より、世界屈指のオブライエン調教師が、数多くの管理馬の中から、日本への”刺客”として選んだのが、カプリである。その事実からして、2005年のアルカセット以来、13年ぶりの海外招待馬の戴冠があってもおかしくない。