2018年11月20日、日本代表が豊田スタジアムでキルギス代表に4-0と勝利。これで森保一政権下では5戦無敗と安定飛行を続けている。来年1月のアジアカップに向けて視界は良好と言いたいところだが、キルギス戦に関しては森保監督の采配に疑問が残った。
 
 要するに、大迫勇也、堂安律、南野拓実、中島翔哉の前線4人を途中から同時起用するメリットがどこにあったのだろうか、という疑問を感じてしまったのだ。
 
 10月のテストマッチでは南米の強豪ウルグアイの守備網を掻い潜り、先のベネズエラ戦でも違いを見せつけた4人である。明らかに格下のキルギスとの一戦で活躍できるだろうことは容易に想像できたはずだ。なのに、どうして試す必要があったのか。
 
 そもそも、ベネズエラ戦から先発11人を総入れ替えする必要があったのだろうか。仮にチームの融合を進めたいなら、2試合を“まったく別のチーム”で戦うのはナンセンス。11月シリーズの選手起用からも、ベネズエラ戦がレギュラー組で、キルギス戦がサブ組という線引きが見えてしまった。この段階でレギュラー組とサブ組を明確にしてしまうことで、募るのは危機感だろう。
 
 例えば大迫、南野、中島、堂安のいずれかがなんらかのアクシデントに巻き込まれて、アジアカップに出られなかったとしよう。その場合、森保監督に有効な次善策はあるのか。11月の代表活動で浮き彫りになったのは前線4人への依存であり、こうした起用法が今後も続くとチームはマンネリズムに陥る可能性がある。
 
 アジアカップに向けてチームの骨格が固まらないよりも、ある程度見えたほうがいいという意見には賛同できる。その意味で、前線4人に現段階で依存するのは悪くないとも思う。ただ、起用法に問題があった。
 
大迫、堂安、中島、南野を同時起用するなら、キルギス戦でも彼らを先発させるべきだった。この4人をまずスタメンで使って、そのうちの誰かを交代させ、残された3人と新しく入った選手の相性をチェックするといったように、徐々に手を加えていってテストするやり方のほうがよほど効果的だったと感じる。今回のキルギス戦でスタメンを張った前線の4枚──北川航也、杉本健勇、伊東純也、原口元気がレギュラー組4人とどういう化学反応を起こすのか、結局のところ、よく分からなかったというのが正直な感想だ。
 
 確かに、伊東と杉本を下げた59分から13分間ほど、北川、大迫、原口、堂安の4人でプレーした時間帯はあったが、果たして“サブ組”でアピールできた選手はいただろうか。おそらく現状でベストな前線4枚は、大迫、南野、堂安、中島で、彼らを脅かすような選手が見当たらない。これが大方の見方だろう。
 
 ロシア・ワールドカップで躍動した原口も当時に比べると、やや元気がないように見えて実際、ゴールに迫るシーンも少なくなった。
 
 気になるのは、キルギス戦のスタメンを知った時の観衆の感想だ。わざわざチケットを買って、日本代表戦を観に来たのである。名古屋の豊田スタジアムで年に何回も代表戦が開催されるわけでもなく、地元の子どもたちからすれば待ちに待ったゲームなのだ。なのに、スタメンにはサブ組がズラリ……。
 
 そう考えると、途中出場とはいえ大迫、堂安、南野、中島、柴崎岳、吉田麻也という現レギュラー組がピッチに立ったことは、観衆にとって良い思い出になったはずだ。とはいえ、森保采配を肯定できるかと言えばそうではない。
 
 現状では最前線で圧倒的な存在感を放つ大迫が負傷でもしようものなら、攻撃が一気に停滞する恐れがある。杉本も北川も大迫ほどの威圧感はなく、むしろ大迫との差を見せつけられた印象だ。杉本に関してはキルギスの守備陣にさえ手を焼いていた感がある。
 
 大迫、南野、堂安、中島のいずれかでも欠場したら大丈夫? 結局のところ、キルギス戦でより感じたのは、そういう不安だった。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)
 
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