経験を糧にさらなる結束を!…アジア制覇へ酒井宏樹に求められるリーダシップ

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 予想外の大渋滞に巻き込まれ、アップも不十分なまま戦う羽目になった。

 16日、森保体制となり4試合目のベネズエラ戦。日本代表の選手たちを乗せたバスは会場の大分スポーツ公園総合競技場までなかなか辿り着けず、パトカーに先導されるトラブルに見舞われた。ドタバタの中、予定通りキックオフを迎えると、中島翔哉・南野拓実・堂安律の2列目トリオと1トップの大迫勇也が、チャンスを作りながらもゴールを奪えず、苦しい立ち上がりとなった。そんな中、貴重な先制弾を挙げたのが、右サイドバックの酒井宏樹だった。

「ゴールに関しては翔哉のボールが本当に素晴らしかったですし、練習からあそこに蹴ってくれるように言っていた。ピンポイントで来たので、翔哉を褒めてください」

 前半39分、中島の右サイドからのフリーキックにファーサイドから飛び込んだ。右足でダイレクトボレーを放つと、相手GKの手を弾いてボールはゴールへと吸い込まれた。酒井が奪ったこの1点は、代表49試合目の初ゴールだった。しかし、1点リードのまま残り10分を切ったところで、酒井は相手選手をエリア内で倒し、PKを献上してしまう。これを決められ同点とされると、試合は1−1のままタイムアップ。森保ジャパンの連勝は3でストップし、酒井にとっては悲喜こもごもの一戦となった。

 それでも、「僕はサイドバックなので、アシストの方が重要ですし、DFなので失点しないことが大事。その2つが一番の仕事。得点に絡んだところだけがフォーカスされがちだけど、他のシーンの方がすごく大事。そこには充実感を得たので、次につなげたいですね」と、いたって冷静な口ぶりで語った。ロシア・ワールドカップの激闘から約4カ月、確かな成長を垣間見せた瞬間だった。

求められるのはリーダーとしての役割

 来年1月、UAEで開催されるアジアカップでは、培ってきた経験を遺憾なく発揮してもらう必要がある。森保一監督がアジアカップで選ぶ23人がどのような顔ぶれになるかはまだ分からないが、今回呼んだメンバーがベースになるとすれば……、

 2011年カタール大会:権田修一、吉田麻也
 2015年オーストラリア大会:東口順昭、吉田、柴崎岳

 以上、アジアカップを経験している選手は、わずか4人しかいない。チームの経験不足は明らかで、ゆえに、酒井の存在はチームにとって不可欠だ。クラブではヨーロッパリーグ、代表ではロンドン・オリンピックや2度のワールドカップに出場してきた。アジアカップは初出場となるが、現在の代表チームでは最も“世界”を知る存在だ。

「アジアカップは自分が経験したことのない唯一の大会。すごく楽しみですし、勝てれば1つの達成感を得られるんじゃないかと思います。トーナメントなので、その期間のコンディション、レフェリングだったり、色々な要素が勝利に関係してくる。優勝は難しいタスクだけど、ベストを尽くしたいですね」

 ゴール前に人数をかけて引いて守る相手が多いアジアでの戦いでは、いかにしてゴールをこじ開けるかが至上命題になる。オプションの1つがセットプレーだ。サイドバックながら185cmの長身を誇る酒井は、空中戦でも大きな武器となる。ベネズエラ戦で見せたようなリスタートからのゴールを計算できれば、試合を優位に進めることができる。

「ベネズエラ戦ではたまたま僕でしたけど、トミ(冨安健洋)だったり、麻也君だったり、サコ(大迫)もそうですけど、高さがあって点を取れる選手がいるのは非常に素晴らしいこと。以前の代表でも、(中村)俊輔さんがCKを蹴って、中澤(佑二)さんが決めるっていうのをよく見ていた。あれくらいDF陣がストロングポイントになれれば非常にいいことですね」

 意識改革も待たれるところだ。これまでは「自分はゴールにそこまでこだわっていない」と話してきたが、もっと貪欲にゴールを狙っていい。堂安らとのタテ関係に関しても、自分からイニシアティブを取って、前線のアタッカーを動かすくらいの統率力を示していい。いわゆる“気が利く”性格の酒井は、スペースのカバーリングや相手のカウンターに対するディレイなど、味方のサポートに尽力する反面、自己主張することは少なかった。しかし、アジアでの真剣勝負を目前に控え、期待されるのはチームを引っ張る役割だ。これまではチームを支えることに徹してきたが、個を前面に押し出したリーダーシップを見せることで、チームワークはより強固なものとなるだろう。

 来るアジアカップまで、テストマッチは残り1試合。名実ともに日本代表のリーダーへ、“世界”を知る男の奮闘に期待したい。

文=元川悦子