GII京都大賞典(10月8日/京都・芝2400m)でサトノダイヤモンド(牡5歳)が勝利し、「復活」という言葉があちこちの媒体で踊った。多くの競馬ファンにとって、それは本当に待ち望んでいた瞬間だった。

 思えば、一昨年のGI有馬記念(中山・芝2500m)。GI菊花賞(京都・芝3000m)を制したばかりの3歳馬サトノダイヤモンドは、当時の現役最強馬キタサンブラックとの激しい叩き合いを制して、クビ差の勝利を飾った。

 グランプリレースにふさわしい、見応えのある名勝負だった。


2年前の有馬記念ではキタサンブラックを撃破したサトノダイヤモンド

 あのとき、競馬ファンの多くが、次に”現役最強”の名を継ぐのは「この馬だ」と確信したに違いない。

 実際、続く古馬となって初戦となるGII阪神大賞典(阪神・芝3000m)でも、堂々たる”横綱競馬”で快勝した。

 だが、その次に出走したGI天皇賞・春(京都・芝3200m)で3着に敗れる。そして、海外遠征――ここでも結果を残せず、世界の強豪が集う凱旋門賞(フランス・芝2400m)では15着と惨敗を喫した。

 馬も生き物。まして、サラブレッドは常に厳しい”勝負”の環境の中にある。それゆえ、負ければショックを受けるし、惨敗すればより大きなショックを受けるという。

 サトノダイヤモンドは、おそらく海外における惨敗のショックが尾を引いてしまったのだろう。帰国後も、勝利に見放された。

 今年に入ってから、GII金鯱賞(3月11日/中京・芝2000m)、GI大阪杯(4月1日/阪神・芝2000m)、GI宝塚記念(6月24日/阪神・芝2200m)と敗戦を繰り返した。

 昨年の天皇賞・春以来、6戦連続して勝ち鞍なし。しかも、その間は3着が最高成績だった。

 かつての”現役最強”候補は、ごく普通の”重賞級”程度の馬になりかけていた。

 京都大賞典の勝利は、そんな矢先のことだったのである。

 およそ1年7カ月ぶりの勝利。不振の原因が敗戦による精神的なショックだとすれば、この1勝は、それを払拭するための、何よりのカンフル剤になったはずだ。

 陣営もこの勝利によって、GI天皇賞・秋(10月28日/東京・芝2000m)には目もくれず、よりハードルが高い今週のGIジャパンC(11月25日/東京・芝2400m)を、次の勝負の舞台に選んだ。

 では、サトノダイヤモンドの「復活」は本物なのか。京都大賞典の勝利によって、完全に立ち直ったと見るべきなのか。

「完全復活と言うには、前走の内容は物足りない」

 そう話すのは、関西の競馬専門紙記者である。

 何が「物足りない」のかと言えば、まず2着が4歳牝馬のレッドジェノヴァだったという点だ。

 レッドジェノヴァは、直前に準オープンを勝ち上がったばかりで、京都大賞典が初の重賞出走だった。その後、GIエリザベス女王杯でも4着と健闘しているものの、1、2着からは3馬身以上離された、「勝負あった」の4着だった。

 強い馬には違いないが、「最強クラス」というほどではない。

 京都大賞典において、サトノダイヤモンドは同馬に最後の直線でグイグイ追い上げられ、半馬身差にまで迫られている。それが、いただけない。

 原因はゴール間際、サトノダイヤモンドのペースがガクンと落ちたからだ。

 同レースの最後の2ハロンのラップは、11.2秒、11.8秒だった。サトノダイヤモンドが直線を迎えて早々に先頭に立ったことを考えれば、このラップは同馬のラップに近いものと想定できる。

 この数字からもわかるとおり、ラスト1ハロンのペースの落ち具合がレッドジェノヴァに迫られる原因となった。それこそ、このレースの内容を高く評価できない最大の理由。したがって、サトノダイヤモンドの完全復活は「まだ先」という評価になるという。

 専門紙記者が続ける。

「もし絶好調のサトノダイヤモンドなら、あそこまでレッドジェノヴァに迫られないし、あそこまでラスト1ハロンで”歩く”ことはない。逆に、ゴール前で突き放して、2〜3馬身差をつけて圧勝していたはず。それができなかったのは、最後(の1ハロン)が11秒8と時計がかかってしまったから。

 あそこは、11秒2は無理としても、11秒4くらいで上がってこなければいけない。であれば、評価も違っています。最後を、加速ラップで上がる。それができなければ、ラップの落ちを最小限で食い止める。それが、一流馬です。その点、サトノダイヤモンドはまだ物足りない」

 京都大賞典のレース後、同馬を管理する池江泰寿調教師も次のように話している。

「どん底は脱出したけど、ピークにはまだ達していない」

 とはいえ、である。一方でこんな話もある。

「池江厩舎ではいろいろな身体的な要素を数値化して、(管理馬の)状態面を把握するようにしているのですが、サトノダイヤモンドが勝てなかった頃は、この数値がなかなか上がってこなかったそうです。でも、京都大賞典の前は(数値が)上昇ぶりを示していて、それが結果につながりました。

 つまり、サトノダイヤモンドがよくなっていることは間違いないんです。あとは、それがピークに達するのが、ジャパンCなのか、そのあとなのか、ということだと思います」(専門紙記者)

 また、ジャパンCでは「マジックマン」こと、ジョアン・モレイラ騎手が鞍上を務める。「日本人騎手なら掲示板がいっぱいのところを、モレイラ騎手は馬券圏内に持ってくる」と評される、名手がもたらすプラスアルファーは計り知れない。 はたしてサトノダイヤモンドは、その名のとおりの”輝き”をジャパンCで取り戻すことができるのか。最後に研きをかけるのは、ファンの熱い声援かもしれない。