森保一日本代表監督の4試合目はドロー。先制点を奪い、追加点を奪えるチャンスをいくつも作りながら決め切れず、勝ちきれなかった。ただ、今までの3試合は複数得点を奪っての勝利ゆえ、出来すぎた感もあったので、これをアベレージと見れば、それほど悪くはない。
 
 このベネズエラ戦を観ていて興味深かったのは、後半だ。
 68分に大迫勇也、中島翔哉を北川航也と原口元気に代え、77分に南野拓実、堂安律に代えて杉本健勇、伊東純也を投入し、攻撃のユニットをフル交代させた。
 
 その1分後、酒井宏樹がPKを献上し、同点に追いつかれた。攻撃のユニットを全交代させた後の失点はいただけないが、大迫や南野が見せていた前線からのプレスの迫力がなくなり、相手がいいようにボールを持ち始めた矢先の失点なので、途中出場した選手たちはいろいろと感じるものがあったはずだ。
 
 森保監督は、攻撃陣をフルに代えた一方、ボランチから後ろの選手は代えなかった。どんな試合も勝つことを考える森保監督にとって1-1の状態で守備陣を変えるのはリスクが大きいと判断したのだろう。
 興味深かったのは、そのことではなく、交代のファーストチョイスでピッチに入った北川と原口だ。
 状況にもよるが、最初にピッチに投入されるというのは、監督の信頼の証だ。
 
 A代表の攻撃のユニットは、この日のスタメンの4人、大迫、中島、南野、堂安が中心になっていくのは間違いない。そのなかでも、大迫の代わりになるようなFWの選手がなかなかいない。北川にはエース不在時にトップに立ってほしいという森保監督の願望にも似た期待の大きさを感じる。この日は90+1分、原口からのパスを受けてボックス内で反転シュートを見せるなど、FWとしての能力の高さを見せた。その瞬間、森保監督は嬉しそうにほほ笑んでいた。
 
 北川には、東京五輪を戦うチームのオーバーエイジ枠としても期待しているのではないだろうか。
 森保監督はA代表の監督であるのと同時に、U-23日本代表を率いて2020年東京五輪を戦う指揮官でもある。頭の片隅では、予選なく本大会を迎えるチームをどうブラッシュアップしていくのか、常に考えている。そのチーム作りの一環として森保監督はオーバーエイジ枠を「早い段階で考えていく」ということを以前、述べていた。
 
 その世代、世代でウィークポイントは異なるが、東京五輪世代についていえば攻撃陣は堂安を始め三好康児や久保健英、伊藤達哉ら高い攻撃力を持つ選手が多数いる。
 
 だが、まだ堂安以外は絶対的な存在ではない。彼らはこれから伸びていく可能性があるが、その逆もある。
 
 また、五輪のような国際大会では、前線には点が取れるタフな選手が必要になる。実際、リオ五輪の時のブラジルはネイマールを招集するなど、各国とも前線に強力な選手をオーバーエイジ枠として起用している。日本も興梠慎三がオーバーエイジ枠で参加した。手倉森誠監督は、前線で起点になれる選手、ゴールに貪欲で点が取れる選手として興梠を招集したのだ。
 
 その点から考えるとスコアラーとして覚醒し、堂安とのコンビネーションに磨きがかかっている南野は東京五輪のオーバーエイジ枠の候補のひとりに入っているのは間違いない。
 
 そして、北川だ。
 北川は、ここまでリーグ戦31試合で13得点と結果を出し、売出し中の選手だ。今年は途中加入したドゥグラスと組むことで、DFの背後を取る動きなどを学び、FWとして点を取るためのバリエーションを増やした。来年、さらにブレイクして海外へということもあり得るが、2020年まで国内で活躍していればオーバーエイジの可能性は膨らむ。

 国内組のオーバーエイジに期待するのは、リオ五輪の時の苦い経験があるからだ。当初、海外組の久保裕也を招集予定だったが、クラブの猛烈な反対にあい、招集が不可能になってしまった。主力で重要な戦力だっただけに手倉森監督のショックは非常に大きく、このためだけではないが結局、チームはグループリーグを突破できずに敗退した。
 
 今後も海外組の選手は、五輪出場を断られる可能性がある。とりわけ、欧州で活躍している選手、例えば南野にしても、堂安にしても招集できない危険性がある。

 仮に北川がこのまま清水エスパルスで活躍しながらA代表でチームのやり方を学び、本大会の時にオーバーエイジ枠で入れば、戦術理解に時間を割くことなく、スムーズにチームに溶け込み、プレーし、チームを引っ張ることができる。今後もA代表に呼び、堂安、南野らと絡ませていくだろう。

 森保監督になって4試合目、A代表の新たな攻撃のユニット作りに加え、東京五輪を戦うチームの助っ人となる南野、北川らのオーバーエイジ候補の顔も少しずつ見えてきている。
 
取材・文●佐藤俊(スポーツライター)