子が親に寂しい言動をしても、息子夫婦と疎遠になることからは、何も生まれません(写真:freeangle / PIXTA)

※ミセス・パンプキンへの人生相談および、家族関係や親子問題のお悩み相談は専用メール、専用サイトで受け付けています。質問は400字以内でお願いします。回答は既出の相談と内容が被らないものを優先し、本連載で掲載します。

私は49歳のシングルマザーで、25歳の一人息子の結婚についてのご相談です。息子から交際中の彼女が妊娠したから、結婚したいと話されました。彼女とは昨年の暮れ頃から付き合い始め、すぐに一人暮らしの彼女の家に転がり込む半同棲のような付き合い方でした(息子は実家住み)。同棲から結婚まで、私の注意や立場を無視した息子のやり方に、裏切られた気持ちで許せません。
過保護かもしれませんが、きちんとした話もなく、親御さんに家賃を助けてもらっている彼女の家に転がり込む形に理解を示すことができず、常々うるさく言っておりました。息子は彼女の親御さんにも了承を得ている、自分の通勤にも都合がよく、社会人である自分たちのすることに口を出さないでくれと言いました。
息子は家にいるときは自室には行かず、よく話をする仲良い関係だったので、彼女とも話がしたいと言いましたが、拒まれていました。
それでこのまま将来結婚ということになっても祝福はできない、と何度か言ってまいりましたが、息子は結婚の相談ではなく、もう2人で決心して、彼女のご両親にもあいさつを済ませ、了承を得たとのことでした。
成人した子の結婚を反対する気はなく、ましてや彼女のことが気にいらないわけではないのです。25年間、父親がいなくても寂しい思いをしないように、曲がったことはしないように育ててきた息子なのに、自分たちの思いを私に理解させようとしないやり方に、裏切られた気持ちでいっぱいです。
同棲も私の理解を得ようとはせずに好きにしてきたのだから、結婚も自分たちの思うようにすればいいと、私に構うことなくやるよう突き放すのは、私が間違っているでしょうか? 息子たちがかわいそうでしょうか? なぜ自分の子どもに裏切られたと思ってしまうのか、自分が未熟で子離れできないのかもと思うと、つらくて苦しいです。
木山(仮名)

「2人の応援団長」に変身することをお勧めします

息子さんを、母親を裏切った息子にするか自立した息子にするかは、あなたの考え方・出方次第です。そして私は、あなたの息子さんは、あなたを裏切ったとは思いません。


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彼女に問題がないならなおのこと、ここは「子どもに勝てる親はいない」と昔の人がよく言うように、息子さんを信じて、2人の応援団長に変身することをお勧めします。

私が知るかぎりですが50年前の日本では、親を通じてもたらされるお見合いで、しきたりどおりに話が進み、結婚に至るのが、「育ちの良い人」の結婚でした。

基本的に恋愛結婚は、それより「値打ちが落ちる」結婚とされた時代が長く続きました。

「男女、7歳にして席を同じゅうせず」の古い中国のマナーは別格にしても、「授かり婚」など当時はとても恥ずかしいことでした。以上のように男女関係や結婚観の世相も、時代によって随分変わっていることは確かです。

かく言う筆者もごく最近まで、婚姻届けを出さずに男女が同居することや妊娠することに、かなり抵抗を持っていました。公私共に責任を明確にせずに男女が深い関係になるのは、誠実な人間のすることではないと思っていました。

しきたりの有無は結婚生活の質に何の保証も与えない

ところで70年も生きていますと、私がいくら古い人間だとしても、その矛盾に嫌でも気づかされます。「しきたりどおり」に行われ、親に祝福された結婚で愛情が育たなかった夫婦の例に、事欠きません。逆に親への報告も婚姻手続きも、全部後回しの結婚で、幸福な家庭を築いた人もゴマンといます。別にどちらのほうが幸せだというわけではないのですが、しきたりの有無が結婚生活の質に何の保証も与えない事例を数多く見てきました。

当相談室にしばしば登場する、大手会社の重役だった友人の話です。ある日、私たちが会食中に、一人息子さんから電話が入りました。

「もしもしお父さん、結婚することになりました。いついつの何時に、どこどこの式場へ来てください」

友人はちょっと驚いていましたが、「わかりました。ところでお父さんは何をすればいい?」と聞きました。すると、息子は「体ひとつで来てください」と答え、父親は「わかりました」と応じました。

電話を切った後、彼はすぐに思い出したように息子さんに電話をかけ直しました。「ところで相手のお嬢さんの名前だけでも教えてくれ。初対面のお嫁さんに結婚式場で、『ところでお名前は何ですか?』と聞くのも変だし、式場を間違えないためにも」。

息子が社会人になったのを機に離れて暮らしていましたが、息子さんとも仲が良く、私たちにもよくご馳走してくれる、金離れのよい人でした。

その彼が一人息子の結婚報告で息子に聞いたのは、相手の名前だけでした。その場に居合わせた私たちメンバーがどれだけ爆笑し、感心したことか、想像してください。

「だって結婚するのは息子で、私ではないからね」と言っていました。今も私たちは、その仲が良い父と息子夫婦と会食する仲です。

「親が子を念ずるほどには、子は親を念じない」、これは私が住む近所のお寺の今月の標語です。

「親思う心に勝る親心」、そして私たちの地域だけかもしれませんが、「親子の情は順送り」というのもあります。

これは「親を思う心と親心は同じでも、新しい家庭を築きながら仕事にも熱中せねばならない子世代と、それをほぼ卒業した親世代の、情の表現方法や時間に差があるにすぎず、特にその子どもが薄情なわけではない。子どもも親になればわかる。子が親に寂しい言動をしても親が理解しなさい」という意味だと、私は多くの親子をみてきて理解するようになっています。

息子さんの人生の決定権は息子さんにある

「孝行したい時に親はなし」と後悔する人の多いことも、思い出してください。

「馬を水飲み場まで連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない」

あなたは息子さんを、水飲み場まで連れて行く親の責任は果たしました。その水をどのように飲むかは馬次第で人が代わって飲むことができないように、結婚するのは息子さんで親ではありません。

息子さんの人生の決定権は息子さんにあります。結婚前の同棲も、昔のように大騒ぎされなくなった時代ですが、それには私もいまだにあなたと同じ考えで、もろ手を挙げて賛成できません。しかし親への裏切り行為だとは思いません。

息子さんは仲の良かった母親ですから、最後は親は理解してくれると信じたのです。「子に勝てる親はいない」と切り替えましょう。親という漢字は、「木の上に立って見る」と書くのですね。結婚式をあなたの関与なしに進めよというのは、決して酷ではありません。あなたは見守るだけでいいのです。

ただし見守り方も、いろいろです。息子に寂しい言動があっても、「嫁が悪い、順送り」とひたすら耐え、あきめる親がいますが、これは見守りではありません。

私の周囲には、「息子は嫁をもらうまでの息子(結婚後は他人のようだ)」と嘆く人が本当に多いですが、そのように言う人も「聞き入れられようが、効果がなかろうが、親としての苦言や助言・希望は必ず一度は伝える」という人も結構います。

そしてそのような親子は一歩後退二歩前進のように、気まずくなったりけんかをしても、親と子ども夫婦共々に変革や成長があり、良い親子関係を築いていっている人が多いのです。

息子夫婦と疎遠になることからは、何も生まれません。今後はあなたの考え方・出方次第で、いくらでも良い関係に戻れる息子さんだと感じました。複雑に考えて悩まず息子さんを信じ、「子どもの幸福は親の幸福」と祝福してあげましょう。