指定された書類提出後、メルカリ側の「本人確認」を待っている間に約36万円の売上金が失効したという(画像提供:takahiro()さん)

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「完全に顧客を馬鹿にしています」「埒が明かない。だんだん疲れてきて、もうメルカリの事を考えたくない気持ちになってきました」――J-CASTニュースの取材に応じたメルカリ利用者らは、次々に不満と憤りを表した。

フリーマーケットアプリ「メルカリ」で、一部のユーザーが運営から「本人確認」を理由に利用制限をかけられ、売上金額の口座振込ができずに失効してしまった、という報告が相次いでいる問題。

運営側は「不正な取引がないことが確認され次第、売上金は再付与」していると説明するが、「本人確認」に必要な書類を送っても複数回の再提出を求められるなど、3か月弱に渡って運営側で確認が終わらなかった例もあった。J-CASTニュースは利用制限をかけられた複数のユーザーに話を聞き、その実情を探った。

突如舞い込んだ「本人確認書類ご提出のお願い」

メルカリが一部のユーザーに「本人確認」を求め、これにより機能が停止させられた、との報告は2018年8月ごろからツイッター上であがるようになった。注目されたのは10月30日の「しろくま」さんによる投稿で、「8月6日から本人確認の為と利用制限され、速やかに免許証を提出するも、未だ完了せず振り込み申請できません。何度問い合わせても『完了までお待ち下さい』の一点張り。そして今日ついに申請期限を迎えます...」と現状を伝えた。

メルカリでは、商品の販売利益が「売上金」としてアカウントに計上され、アプリ内マネーとして使えるポイントを購入できるほか、「振込申請」を行うことでアプリから口座への振込ができる。ただし、売上金には「振込申請期限」が設けられており、売上金を計上してから180日間(17年12月4日〜18年9月26日の売り上げ分は90日間)経ってもポイント購入や振込申請がなければ、売上金は失効する。ゼロ円になるのだ。

問題視されているのは、「本人確認」が終わるまで「振込申請」ができない状態になっている点だ。それも上記の投稿で書かれているように、指定された本人確認書類(運転免許証、保険証など)を送信しても、運営側でなかなか確認が終わらず、利用制限の状態が続いているという報告が多い。一方で振込申請期限へのカウントダウンは進んでいるといい、指をくわえて待たざるを得ないような状況になっている。

J-CASTニュースの取材に応じた「しろくま」さんの話では、8月6日に購入希望者から「制限がかけられていて買えない」という指摘を受け、自分に利用制限がかかっていることに気が付いた。運営事務局に問い合わせると、2日後の8月8日に「本人確認書類ご提出のお願い」と題するメッセージが届いた。

同日中に運転免許証の写しを提出したものの、運営側から「顔写真が確認できません」「不鮮明なため確認できません」という理由で再提出を要求された。もう一度提出するもレスポンスが滞り、いつ本人確認が終わるのかと問い合わせても「確認完了までの具体的な期間はお答えできません」とだけ伝えられた。この間、振込申請だけでなく出品や購入もできない状態だった。

何が「違反」か...具体的な指摘なく

「本人確認」は10月30日まで終わらず、売上金6012円分が申請期限を過ぎて失効したという。ただ、同31日になって本人確認が完了すると、「私本人の売上金として返還されました」としている。

判然としないのは、「本人確認」を突然求めるようになった理由だ。「本人確認書類ご提出のお願い」という運営からの通知には、以下のように書かれている。

メルカリでは、不法行為や規約違反行為等の対策を行っております。誠に恐れ入りますが、該当のアカウントは調査と確認のため利用制限をかけさせていただきました。皆様により安全にご利用いただくための対策となっておりますので、何とぞご理解いただきたく存じます」

具体的に「不法行為や規約違反行為等」があったのかといえば、「しろくま」さんは「具体的な(違反の)指摘は受けていませんし、その件を質問しても回答は得られませんでした」と話す。

こうしたメルカリの対応に対し、「しろくま」さんは、「利用者に対する扱いが乱暴。問い合わせ窓口がメールしかなく、2日程かかって届く返答も的外れだし、埒が明かない。だんだん疲れてきて、もうメルカリの事を考えたくない気持ちになってきました。無駄に神経をすり減らし、時間を使いました。とにかく、色々と雑過ぎるのです」と精神的に疲弊している様子で話している。

何が「違反」か聞いても具体的な回答なく

同様の状況に置かれたメルカリ利用者は、他にもツイッターで声をあげている。「りくっ」さんは、8月10日に振込申請をしようとしたところできず、その約10時間後に「本人確認書類ご提出のお願い」の通知が届いた。文面は上記「しろくま」さんのものと同一だ。

「りくっ」さんは8月11日に運転免許証の写しを送ったが、再提出の要請が4度続いた。「いつ本人確認が完了するか」を問い合わせたものの、「具体的な期間は言えない」との回答。また、具体的に何かが「不法行為や規約違反行為等」にあたる可能性があるかを尋ねても、具体的な指摘はされなかったという。

結局「りくっ」さんは9000円が失効。ツイッターで同じように突然の「本人確認」による利用制限がかけられたメルカリ利用者の声を募っており、11月2日時点で「20〜30人」から連絡が届いたという。中には、すでに売上金10万円が失効したと話す人もいたと明かした。

メルカリ運営の一連の対応については、

「全て定型文での対応に終始し、個別具体的な解決方法、期間やおおよその目安などのスケジュール、調査の進捗状況など一切なく、どんな質問にも『不快な思いをおかけして、、、』の謝罪で、顧客の個人情報を収集し、その売上金をほしいままにできる立場の責任と覚悟が希薄のみならず、そもそも顧客資金を扱う企業としての資質が問われている、そんな思いで日々を過ごしています」

と不可解さを感じている。

「完全に顧客を馬鹿にしています」

別のツイッターユーザー「takahiro」さんも、8月8日に「本人確認書類ご提出のお願い」の通知が届き、利用制限を受けた。8月10日から保険証や免許証を合計3度送ったものの、やはり運営側の確認が終わらない。いつ終わるかを問い合わせても「しばらくお時間を頂戴しております」という回答。「不法行為や規約違反行為等」についても具体的な指摘がされたわけではなく、思い当たる節もない。実際、「他にも何種類かネットオークションなどを使っていますが、全く問題なく利用できています」と話している。

また、利用制限を受ける直前の8月6日に振込申請した売上金約36万円分が、翌7日に事務局によってキャンセルされ、再び売上金として計上されたという。その直後に利用制限がかかり、この約36万円は振込申請できない状態になった。「takahiro」さんは「あまりにも横暴かつ職権乱用的な行い」と不満を隠さず、メルカリ運営の一連の対応について、

「基本テンプレ回答、気にいらなければ即一時制限または永久制限。完全に顧客を馬鹿にしています」

と憤りをあらわにしていた。

そして、約36万円分の売上金は11月6日をもって「有効期限切れにより失効」という通知が同日届いた。これ以外にも失効が迫っているものがあるという。

不正な取引なければ「売上金は再付与」とメルカリ説明

J-CASTニュースはメルカリ社に対し、「なぜ『本人確認』をするようになったのか」について取材を申し込んだが、

メルカリでは、皆さまにより安心・安全にアプリをご利用いただけるよう、各機関と連携のうえ健全なマーケットの醸成に努めており、随時お客さまの本人確認やご利用状況の確認を実施しております。ご質問いただいている内容につきましては、個別で事情が異なりますので、詳細につきましては回答は控えさせていただきます」

と答えた。

どういった利用者に「本人確認書類ご提出のお願い」と題した通知を送り、利用制限をかけたのか。基準を聞くと、

「ご本人確認につきましては、お客さまの登録情報・利用状況等に鑑みて随時お願いしております。そのため、すべてのお客さまにお願いしているわけではございません」

としている。

また、失効した売上金への対応をめぐっては、

「ご本人確認のための利用制限中に振込申請期限を迎えて売上金が失効した場合にも、本人確認の結果、不正な取引がないことが確認され次第、売上金は再付与しております」

と回答した。