今回のインタビューに答えてくれた、(株)ぐるなび プロダクトコミュニケーション部門・村田彰子さん

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この連載は、大阪で激増するインバウンド(訪日外国人光客)の最前線を人気施設や旅行・観光に詳しい業界関係者などキーパーソンに話を伺うインタビュー企画。第8回は、飲食店の情報を集めたウェブサイト「ぐるなび」の運営などの事業を展開している企業、(株)ぐるなび プロダクトコミュニケーション部門・村田彰子さんに、大阪のインバウンドの現状や、インバウンドが増えて変わったこと、今後の展望などを聞いた。

【写真を見る】「ぐるなび情報ラウンジ」には英語が話せるスタッフが常駐。外国人にはうどんやラーメンも人気が高い

■ 「ぐるなび情報ラウンジ」ってどんな場所?

――まず、村田さんが担当されている、グランフロント大阪 うめきた広場にある「ぐるなび情報ラウンジ」とはどういった場所ですか?

コンシェルジュが在籍し、お客様の要望に応じてレストランをご紹介させていただくことが大きな役割になります。基本的にはキタエリアのお店を案内していましたが、今は大阪市内に範囲を広げています。店内にはデジタルサイネージやショップカードなども置いています。過去には外国人向けガイドツアーとして実施したこともあり、外国人の方に日本の食を知っていただこうということで、グランフロント大阪に入っている飲食店を回り、試食をするツアーなども実施しました。

――インバウンドのお客様はどれくらいいらっしゃいますか?

1か月で来店者数自体が3,000人くらいですが、半分の1,500人ぐらいですかね。波はありますが、4月などの多い時期だと約2,400人、少ない時で約900人、平均すると1,500人前後です。

――外国人の方が増え始めたのはいつぐらいからですか?

2013年4月末にラウンジを開業しましたが、当初は全く外国人のお客様は見かけませんでした。ちょうどその年の12月くらいに、JNTO(日本政府観光局)のカテゴリー1※を取得し、その看板を出した効果もあったのか、そこから外国人の方が一気に増えてきましたね。現在ではカテゴリー2※を取得しています。

――実際に来られる方はどういう情報を求めて来られますか?

やはりローカルフードを食べたいと。大阪名物などをあらかじめ調べて来られる方もいらっしゃいますが、欧米の方ってあまり調べて来られないパターンも多くて、こちらから、お好み焼きや串カツがあるというのをご案内して、「串カツってなに?」と聞かれて、それでご紹介に至るというパターンもありますね。最近では、焼き鳥と言われる方もいらっしゃいます。居酒屋をご存じの方で、焼き鳥って日本語で言われます。どんな料理かわからずに、焼き鳥と言われる方もいらっしゃいますね(笑)。あと、漠然と和食という方もたくさんいらっしゃいます。

――和食って値段の幅があるから紹介するのが難しそうですね。

そうですね。和食のなかでもお寿司を食べたいという方や、定食みたいにセットになっているのが食べたいという方もいらっしゃいます。また、ミシュランガイドなどを見られて、高級店を指定して来られる方も多いです。中国や香港の方はあらかじめミシュランガイドで和食のお店を調べて、「ここを予約してほしいんだけど」という方が多いですね。

■ 「ぐるなび」に掲載されていない店も紹介!

――紹介する店は、基本的に「ぐるなび」に掲載されているお店ということでしょうか?

「ぐるなび」に載っているお店の方が、メニューなどが全部わかるので紹介はしやすいのですが、やはり、お客様の要望に合わせていくというのを一番に考えています。そうなると「ぐるなび」掲載店にあてはまらない場合も出てきます。特に、たこ焼きの店などは掲載店でない場合も多いので、それは状況に合わせて紹介しています。

――だいたい、どのくらいの値段のお店に行かれますか?

人と国にもよりますが、アジア系で、ミシュランガイドのお店を指定される方は10,000円でも20,000円でも大丈夫という方もいらっしゃいます。団体で来られる方は、人数も多くてそんなに高くない方がいいということで、2,000円までというパターンが多いですね。欧米の方は、どちらかというとリーズナブルな方がいいという方が多いですかね。バックパッカーなどが多いので。

――紹介するお店は、基本的に外国語のメニューがあるところでしょうか?

外国語メニューがあるところを優先にはしています。やはり、お客様が困るといけませんので。私たちも店舗に行って取材して、お店のウリのメニューや、シェフのこだわり、食材などもヒアリングさせていただいたうえでご紹介するようにしています。

■ 大阪でもキタとミナミでは店のリクエストが違う

――ミナミエリアとキタエリアの違いはありますか?

どちらかというとミナミはアジアの方が多いですよね。それはミナミの街自体がアジアの街と似ていて、溶け込みやすいというのを聞いたことがありますが、欧米の方は建築物を見たいという方が多く、スカイビルや中之島公会堂に興味を持つ方が多いので、キタには欧米の方が多いのかもしれないですね。あと、自分たちで分析した結果なのですが、オーストラリアの飛行機が関空からたくさん出ていて、オーストラリア人が増えていますね。

――アジアの方と欧米の方で、リクエストの傾向は異なりますか?

欧米の方は、やはりローカルフードと言われますね。大阪に来たので大阪の食を楽しみたいということで、「なにを食べたらいい?」と聞かれることが多いです。そういう時は、お好み焼き、串カツ、たこ焼きを紹介します。あとは、うどんかな。ダシがおいしいと紹介します。今は、ラーメンも結構、人気がありますね。

――具体的に、人気のお店はありますか?

体験型が注目されています。自分で焼けるたこ焼き店はとても喜んでもらえますし、食べるだけじゃなくて、なにかしら体験して帰りたいのかなということを、最近はつくづく感じますね。具体的には、たこ焼きだと「蛸之徹」。お好み焼きだと、なんばの「はつせ」も自分で焼くことができます。近場だと、グランフロント大阪に入っているお好み焼き店の「福太郎」もよく紹介します。自分で焼くスタイルではないのですが、目の前で焼いてくれるので、そのパフォーマンスが喜ばれますね。

――お店を紹介して問題になることはありますか?

キャンセル対策は強化していますね。「日本では絶対に遅れたらダメです。キャンセルの場合も電話をしてください」など、英語で書いたイラストのメモを用意しています。それを見てもらって、「これが守れるなら予約しますが、守れないなら無理です」と伝えて「大丈夫!」と言われたら、予約につなげています。過去に、予約したお店から「お客様が来ないんですけど」と電話がかかってきたので、確認したら「道に迷ったから行けない」というのがありましたが、それ以外は今の所キャンセルはありません。私たちも心配なので、あとで確認の電話などもしています。

数あるお店の中には、そういったトラブルがいやで、外国人の方には来て欲しくない、というところもありますが、それはすごくもったいないですし、みんながみんなそういう方ではないので、今後も私たちがサポートをできればと思っています。

※JNTO(日本政府観光局)が認定する「JNTO認定外国人観光案内所」。カテゴリー1は「常駐でなくとも何らかの方法で英語対応可能。地域の案内を提供」、カテゴリー2は「少なくとも英語で対応可能なスタッフが常駐。広域の案内を提供」できる案内所とされている。

※本企画は、情報誌「関⻄ウォーカー」2018年8/28発売号の大阪インバウンド特集「YOUは何しに大阪へ?」との連動企画です。(関西ウォーカー・エフィール 横井哲也)