「おっぱい」がもう一つ!? 「副乳」の原因と治療について

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執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ


ヒトの乳房は基本的に一対、左右の胸に一つずつあるのが普通です。

しかし、それ以外に身体に乳房ができる状態を

「副乳」

といいます。

実は決してめずらしいものではなく、男女ともにあってもおかしくはない事例です。

今回は、副乳ができる原因や治療の必要性などについてご説明します。

副乳とは

副乳とは通常一対の乳房の他にも、乳房がある状態です。

ひとことで副乳といっても、乳房の先端部分の乳頭だけ、乳頭の周りの乳輪、または乳腺組織まで存在するなど、いくつか形態があります。

また、見た目にはほとんど分からないホクロ程度のものや大きく膨らんでいるもの、左右両方ある人や片方だけの人などさまざまです。

男性の1.5%、女性の5%が副乳を持っていると言われていますから、決してめずらしいことではありません。

副乳ができる理由

「副乳」は医療用語で、生まれつき乳房の数が多い場合、専門的には

「多乳房症」

と呼びます。

とは言うものの、副乳は決して病気ではありません。

ヒトと同じ哺乳類の仲間である犬や猫には、何対もの乳房があります。

実は、ヒトの赤ちゃんも、お腹の中にいる6週頃には、7〜9対の乳腺の基となる組織をもっています。

しかし、基本的には9週目頃に一対を残し、他は退縮します。

ところが、この過程でいくつかが退縮せずに残って発育すると乳腺となるのです。

副乳はワキの下から通常の乳頭、太ももの内側にかけての、通称「ミルクライン」と呼ばれるライン上の、どこにでもできる可能性を持っています。

副乳に気づくきっかけ

副乳は目で見て明らかに分かるケースのほか、健康診断などで指摘されて初めて知ることも少なくありません。

また、年齢を重ねるとともに乳腺の組織が発達し、膨らんできて初めて気づく人もいます。

とくに女性ホルモンの影響を受けやすく、女性の場合は月経の周期と連動して、しこりのようなものが固くなったり、痛みがでたりこともあります。

さらに、授乳をしている期間は通常の乳房と同じように膨らみ、少量の母乳がでることもあります。

授乳期の腫れは徐々におさまっていきますが、痛みが辛い場合はアイスノンなどで冷やすと和らぎます。

副乳の身体への影響

副乳は、

健康に悪影響を及ぼすことはない

ので心配はいりません。

とくだんの症状がなければ様子見で大丈夫です。

ただし、ごくまれに、副乳に悪性の腫瘍ができることがありますので、その場合は治療が必要です。

また、水着を着ると目立つなど、見た目が気になるケースでは、自費になってしまいますが美容外科などで切除手術を受けることも可能です。

治療は、ごく小さい副乳であればレーザー治療で対処します。

乳頭や乳輪の切除では、局所麻酔をしてホクロと同様に取り除きます。

さらに、乳腺もあると、乳腺の組織もくり抜いて除去するような施術方法になります。

手術は基本的には1時間程度で終わり、日常生活に大きな支障がでることはありません。


このように、副乳は健康上問題のない状態で、ホクロなどと同じように個人の特性の一つと言えます。

しかしながら、痛みや腫れが続くなど気になる症状が出ている場合は、一度形成外科などを受診して相談してみましょう。

また、見た目の観点から美容外科で切除を希望する場合は、病院によって治療法や費用に差があるので事前リサーチも重要です。

受診した際は、医師の説明をよく聞き、納得したうえで施術を受けるようにしましょう。


<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供