【ソウル聯合ニュース】日本による植民地時代に強制徴用された韓国人被害者4人が新日本製鉄(現新日鉄住金)に損害賠償を求めた訴訟で、韓国の大法院(最高裁)は30日、原告を逆転勝訴させた差し戻し控訴審判決を支持し、新日鉄に原告1人当たり1億ウォン(約1000万円)の支払いを命じた。日本企業の賠償責任を認めたことで韓日関係への影響が予想され、韓国外交部は対応に苦慮している。

 同部の関係者は30日、今回の判決について「過去の歴史に対する解釈と以降の外交的措置、民間経済分野などさまざまな側面が混在している複雑な事案だ」と説明した。

 別の関係者は「韓日関係に想像もできない影響があるだろう」としながら「年末までに、北の核問題を除いて最も力を入れるべき事案ではないかと考える」と述べた。

 現政権が朴槿恵(パク・クネ)前政権時代の慰安婦合意を「誤った合意」と規定したことで韓日関係が極度に悪化した上、今回の判決が重ねての悪材料となり得るため、今後の対応はさらに重要になる。

 特に北朝鮮非核化と平和体制構築の交渉における日本の役割が小さくないことから、今後の韓日関係をどのように進展させるかが問われるだけに、今回の判決による影響が注目される。

 外交部の関係者は「司法的判断が政治的合意を覆す結果が出たため、今後の外交的措置が重要だ」と強調した。

 今回の判決に対し、外交部の魯圭悳(ノ・ギュドク)報道官も慎重な姿勢を見せた。

 魯報道官はこの日の定例会見で、日本が反発する可能性に対して「政府は今回の判決が韓日関係に否定的な影響を及ぼさないよう、韓日両国の知恵を集める必要性を日本側に伝えている」と言及。間もなく関係閣僚会議を開いて今回の判決に対する政府の立場を協議する予定だと説明した。

 外交部はひとまず様子見を続け、政府の立場が決まるまでは説明を控える構えだ。

 一方、大法院が梁承泰(ヤン・スンテ)元大法院長(最高裁長官)の在任中に朴槿恵前政権と共謀して裁判の進展を故意に遅らせたとの疑惑が取り沙汰される中、外交部の責任論も浮上している。

 外交部は朴槿恵前政権時代の2016年11月に、強制徴用被害者の個人請求権問題は1965年の韓日請求権協定によって解決されたとする日本政府の立場を否定しない趣旨の意見書を裁判所に提出した。

 康京和(カン・ギョンファ)外交部長官は26日に行われた国会の国政監査で、外交部が裁判所に提出した意見書を巡る問題に遺憾の意を示し、「意見書を含む徴用資料の作成と意思決定の過程について、外交部全体に対し徹底した調査が必要だ」との考えを示した。

 これを踏まえ、外交部内では当時の状況に対する調査と共に、懲罰人事が行われるのではないかとの観測も出ている。