Q:慢性心房細動と分かって禁煙しました。しかし、妻がタバコを吸います。副流煙が気になりますが、心房細動にはよくないでは。妻にはせめて、私の目の前で吸うのはやめて欲しいのですが、機嫌を損なわれると難儀なので何も言えません。_(52歳。税理士)

A:心房細動は脳梗塞(心原性脳梗塞)を引き起こすことが怖い不整脈です。喫煙と心房細動の発生は関係があります。
 去る9月14日に日本循環器学会のプレスセミナーが開かれ、タバコと心房細動の関係について、さまざまな情報が紹介されました。

 講師の1人、中井俊子・日本大学内科学循環器内科学分野診療教授によると、喫煙と心房細動の発生リスクは、喫煙しない人に比べ、過去に喫煙していた人は1.3倍、現在吸っている人は2倍のリスクがあるとのことです。

 そして、副流煙も心房細動と関係があります。中井教授によると、受動喫煙者は非受動喫煙者の1.3倍のリスクがあるといいます。

●副流煙のほうが有害物質が多い
 タバコの煙には、喫煙者が吸い込む煙(主流煙)、タバコの先端から立ち上る煙(副流煙)、喫煙者が吐き出した煙(呼出煙)の3つがあります。受動喫煙は副流煙と呼出煙から成っていて、受動喫煙の8割が副流煙で、2割が呼出煙です。

 副流煙には主流煙よりも有害物質が多く含まれます。ニコチンは2.8倍、タールは3.4倍、発がん性物質のベンゾピレンは3.4倍、一酸化炭素は4.7倍も含まれます。

 国立がん研究センターによると、受動喫煙者は、非受動喫煙者に比べ、虚血性心疾患が1.2倍、脳卒中が1.3倍、肺がんが1.3倍、それぞれリスクが高まります。

 以上のことから、副流煙が心房細動にいかに悪いかお分かりでしょう。奥様に目の前で吸うのをやめて欲しいとは言いにくいとのことですが、勇気と誠意をもって言うべきです。

 また、奥様の健康を願うなら、禁煙するように説得したほうがよいと思います。

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中原英臣氏(山野医療専門学校副校長)
東京慈恵会医科大学卒業。山梨医科大学助教授、新渡戸文化短期大学学長等を歴任。専門はウイルス学、衛生学。テレビ出演も多く、幅広い知識、深い見解を駆使した分かりやすい解説が好評。