読書が学力向上につながる子と、そうじゃない子のちがいとは?(写真:つむぎ/PIXTA)

「うちの子、スマホばっかりで全然本を読まないけど大丈夫?」、そう嘆く親の声をよく耳にするようになった。一般に「本を読む子は学力が高い」と言われるが、本好きだが成績はイマイチというケースもある。この差は何か? 
人気ゲームシリーズ「脳トレ」の監修で有名な東北大学・川島隆太教授の研究グループは、仙台市教育委員会との共同プロジェクトで、標準学力調査にあわせて生活習慣等に関する大規模アンケート調査を実施し、毎年7万人のデータを解析をしている。今回、特に子どもの読書時間と学力の関係について、小中学生4万人の脳解析データからわかった意外な事実を明らかにした。

「読書をすればするほど成績が良くなるのではないか」

当初、私たち研究チームは考えていました。

このグラフは、2017年度の小学校5年生から中学3年生までの子どもたち約4万人の「平日の一日あたりの読書時間(雑誌漫画などを除く)」と「4教科(国語・算数/数学・理科・社会)の平均偏差値」を表しています。


子どもの読書時間と成績の関係(『「本の読み方」で学力は決まる』より転載)

確かに、,諒親読書を全くしない子どもたちの成績が最も低く、そこから△1〜2時間読書をする子どもたちに至るまで、読書時間が長くなるほど成績が高くなっていることが読み取れます。

偏差値というのは、ちょうど真ん中の成績が50となるように定義されています。つまり、単純に考えると偏差値50以上が「成績上位層」、50以下が「成績下位層」ととらえることができます。

その観点から、もう一度グラフを見てみると、読書を「全くしない」子どもたちと読書時間「10分未満」の子どもたちは成績下位層に含まれていることがわかります。つまり、成績上位層に行くためには少なくとも1日10分以上の読書が必要だといえるのです。

さらにこのグラフからもうひとつ面白い結果が読み取れます。の「2時間以上読書をする子どもたち」の成績は、△痢1〜2時間読書をする子どもたち」より成績が落ち込んでしまうという予想外の結果となりました。

読書をしても「頭が良くならない」子どもの特徴

なぜ長時間の読書をする子どもたちの成績は低下しているように見えるのでしょうか? 私たちは読書の時間と引き換えに、睡眠時間など別の活動時間が削られているのではないかと考えました。

読書時間を確保するということは、成績へよい影響があることが知られる、勉強や睡眠など別の活動時間を間接的に奪ってしまうということにつながる恐れが生じます。そうすると、読書が学力に与えるよい影響と、別の活動時間が削られるといった間接的な悪い影響を足し合わせた結果、悪影響が勝ち残ってしまう可能性があると考えられるからです。

この仮説を検証するために、今度は勉強時間と睡眠時間をきちんと確保している子どもたちに絞って、読書時間と成績の関係を検証してみました。具体的には、平日の勉強時間が30分〜2時間、かつ睡眠時間が6〜8時間の中間層の子どもたちのみを抜き出して分析してみました。


勉強・睡眠時間中間層における子どもの読書時間と成績の関係(『「本の読み方」で学力は決まる』より転載)

その結果、図のように今度は読書を長時間している子どもほど成績が高いという「単調増加の関係」が表れてきました。

この結果から、読書をしすぎること自体が何か脳に悪い影響を及ぼしているわけではなく、読書時間を確保するために勉強や睡眠の時間を削ってしまうことが間接的に成績低下につながっていることがわかります。

子どもにとって「最適な読書時間」はどれくらい?

読書のしすぎが間接的に成績低下につながるということは、言い換えると一日の読書時間には最適な時間が存在すると言えます。

もしも最適な時間があるとするならば、それは小学生と中学生で異なるのでしょうか。調査の結果、小学生、中学生共に最も高い成績を上げているのは、一日1〜2時間読書をする子どもたちでした。


小・中学生別の読書時間と成績の関係(『「本の読み方」で学力は決まる』より転載)

しかし、小学生よりも中学生のほうが、2時間以上読書をする子どもたちの成績の落ち込みが大きいのです。

なぜ、このような発達による違いが生じるのでしょうか? 理由は2つ考えられます。

若い年齢ほど読書の効果が大きい

ヒトは高度に進化した脳を収容する大きな頭を持つため、ほかの動物に比べ未熟な状態で産まれます。そして生後間もなく、身体も脳も急激な発達を遂げます。

なかでも言語機能の発達のピークは8〜10歳と言われています。つまり、読書を通して得られる言語機能の発達という側面から見た効果は、中学生よりも小学生のほうが大きいと考えられるのです。


学年が上がるにつれて忙しくなる

学年が上がると、単純に授業のコマ数や科目数も増えますし、学習する量も増え、難易度も上がってきます。さらに中学生になると、本格的に部活動に打ち込んだり、学習塾や習い事に取り組んだりする子どもたちも増えてきます。このように学年が上がるほど、子どもたちが自由に使える時間が少なくなります。

つまり、読書時間を確保するために勉強や睡眠など別の活動時間が削られてしまう可能性が高くなります。そうすると、読書が学力に与えるよい影響が、別の活動時間が削られる間接的な悪い影響に押されて負けてしまう可能性も必然的に高まってしまうと言えます。