トラックドライバーにとって急ブレーキを踏む瞬間は、何を載せていたか、しっかり固定していたか、損害額はいかほどかなどを考えたり、時には「前への衝突」と「後ろからの衝撃」を天秤にかける瞬間ともなる。トラックは、走らせるよりも止めることのほうが、技術的にも精神的にも難しい乗り物なのだ。

 そんな危険をもたらすトラック前への割り込みだが、実はこの「割り込み」において、トラックドライバーと一般ドライバーとの間に、若干の「感覚のズレ」が生じることがある。その原因になっているのが「車高の違い」だ。

 以前述べたように、トラックは車高が高いうえに、左後方が死角になることが多い。そのため、車高の低い乗用車が、そのトラックの前に入るべく右ウインカーをトラックと並んだ状態から光らせても、トラックにはそれが見えないことがある。

 一般ドライバーにとっては、長めにウインカーを出していたつもりでも、そのウインカーがトラックドライバーに伝わっていなければ、彼らには「急な割り込み」にしか感じられず、結果、不要な急ブレーキを踏むことに繋がるのだ。

 こうした現象は、ルームミラーにトラックの車体がしっかり映り込むくらい前に出てから、ウインカーを4、5回ほど点滅させて車線変更することで回避できる。そのくらいの車間と時間があれば、トラックにも、安全な車間を取り直す余裕が生まれるため、不要な急ブレーキを踏む回数は大幅に減る。

 無理な割り込みで生じる結果に、いいものは決してない。帰るべき場所へ皆が帰れるよう、心と車間に余裕を持った運転を常に心がけてほしい。【橋本愛喜】
フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。