守田英正インタビュー@後編

 森保一監督のもと始動した新生・日本代表に選ばれた選手たちのなかで、間違いなく守田英正の名前は驚きのひとつだった。

 ただ、本人に聞けば、そこには自信もあったという。それは決しておごりではなく、たしかな手応え。昨季J1王者である川崎フロンターレでプレーすること、またそこで試合経験を積むことで、守田は選手としてひと回りもふた回りも大きく成長している。選手が急激に飛躍する瞬間があるとすれば、守田は今まさにそれを実感しているのだろう。

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守田英正が初めて招集された日本代表の雰囲気について語る

―― 追加招集ではありましたけど、森保一監督が就任して初となる日本代表のメンバーに選ばれました。率直な心境はどうでしたか?

守田英正(以下:守田) (大島)僚太くんと山口蛍選手がケガで辞退したと知ったときには、自分が選ばれるのではないかと思っていました。周囲からは「日本代表に選ばれるのはまだ早い」と思われていたかもしれないですけど、自分としては選ばれてもおかしくないのでは、と思っているところもあったんです。

―― 中村憲剛選手に聞けば、守田選手自身も「まだ早いですよ」と答えたそうですけど、内心は自信もあったということですか?

守田 正直、追加招集ではなく、最初のメンバー発表のときに、名前が呼ばれるのではないかという期待感を持っていたところもありました。森保監督になり、新しくチームが始動するということもありましたし、若い選手たちにチャンスがもらえるということも聞いていたので。

―― その言葉は少し驚きでした。というのは、これまで育成年代でも日本代表に呼ばれた経験はないですよね? それなのに期待感があったというのは、意外ですらあります。

守田 たしかにこれまで、代表と名のつくものに呼ばれた経験はなかったですけど、今シーズン得た自信というものが大きいんですよね。僕が何かできているから、フロンターレの中盤が機能しているわけではないことはわかっています。そこは憲剛さんと僚太くんがいるからだとは思っています。でも、そのふたりについていくことができているという自負もある。

 それに、フロンターレは昨季J1で優勝しているので、もう公言してもいいと思うんですけど、僕はこのクラブが日本一だと思っているんです。そのクラブで自分は試合に出させてもらっているという自信もあれば、責任も感じている。そうした背景を考えれば、このチームから複数人の代表選手が選ばれても、決しておかしくはないのではないかと思ったんです。

―― なるほど。その日本代表という空間はどうでしたか?

守田 刺激になりましたし、新鮮でしたね。それ以上に、代表との距離が見えたというか。これまで呼ばれたことも、行ったこともなかったので、どんなところか想像もつかなかった。でも今回、その距離感というものは掴めたと思います。

―― 森保監督からは、コンセプトを含めて、どんなことを言われましたか?

守田 印象に残っているのは、「柔軟性を持ったサッカーをしたい」ということでした。システムに関しても、この相手ならば4-4-2、この相手ならば3-4-2-1と、試合中も人の配置を変え、システムも変えられるくらい柔軟性のあるチームにしたいと言われました。

―― 日本代表の活動期間中には、北海道胆振(いぶり)東部地震もありました。

守田 個人的に、あれほど強い地震の揺れを経験したのは初めてのことでした。森保監督からはコスタリカ戦の前に、「サッカーはこういうときこそ、人に勇気を与えられる競技なんだ」と力強く言われました。自分もサッカーが好きで、ここまでサッカーを続けてきましたけど、そのサッカーで誰かを勇気づけることができたり、誰かが報われるのであれば、選手として誇りを持ちたいですし、そのためにもプレーしたい。

 周りの気遣いもあって、僕らは震災後も不自由なくホテルにいることができましたけど、ホテルで働く人たちには家族もいれば、仕事どころじゃない人もいたはず。それなのに僕らのために動いてくれて、本当に感謝しかなかったんですよね。だからこそ、サッカー選手は、自分がプレーすることで、多くの人に夢や希望を見させることのできる職業なんだなと、改めて実感しました。

―― その後のコスタリカ戦で、途中出場ながら代表デビュー。奇しくも、フロンターレでのデビュー戦と同じ右サイドバックでしたね。

守田 自分としては緊張していなかったと思っているんですけど、テレビで見ていたチームメイトからは、「顔が引きつっていたぞ」って言われました(笑)。右サイドバックでの出場でしたけど、そこもできると思って起用してくれたことは、監督からの信頼でもあると思っています。それにフロンターレで初めて試合に出場したスーパーカップも右サイドバックだったので、ちょっとした縁というか、巡り合わせすら感じました。

―― 後半37分からのわずかな出場時間でしたが、前にいる伊東純也選手に効果的な縦パスを入れているのが印象的でした。

守田 純也くんはスプリント能力が高いので、(ピッチの)角に対して速いボールを入れて、純也くんが前向きで、勢いに乗った状態でプレーできるようにというのを意識しました。自分はその瞬間、瞬間で、誰かに見立ててプレーすることが多いんですけど、あの試合ではエウソン(エウシーニョ)を意識したんですよね。

 その局面、局面でイメージする選手は違うんですけど、右サイドバックで出場したコスタリカ戦は、エウソンならどういうプレーをするかなって考えたんです。フロンターレでのアキさん(家長昭博)とエウソンの関係性は、それこそかつての(エドゥアルド・)ネットと僚太くんのように、会話をしなくても確立できている。アキさんがいいスプリントをすれば、必ずエウソンがそこにいいボールを配球する。だから、自分も、それを意識したんです。

―― 先ほど、代表との距離感が掴めたという話がありましたが、またあの舞台に立ちたいという思いは?

守田 あります。その代表戦でケガをしてしまって、焦らない気持ちがないかといえば嘘になります。11月にも代表戦はありますし、クラブでもその間、(下田)北斗くんや(田中)碧が試合に出て勝っている。チームにとってはプラスですけど、個人としてはやっぱり負けたくないという思いはあります。

―― J1もいよいよ終盤を迎えます。フロンターレは連覇できる位置につけています。

守田 綺麗なサッカーをしても、タイトルが獲れないのは嫌なんですよね。だから、このサッカーで勝てることを証明したい。そこは今シーズン、フロンターレに加入したから、なおさら思うところもあります。

 憲剛さんと僚太くんとネットの3人でトライアングルを形成していた昨シーズンは優勝できて、自分が試合に出るようになった今シーズンは勝てなかったとなれば、やっぱり評価はされないと思う。そこはプロというか、結果がすべてだと思うので。ただ、ケガが治ったからといって、自動的に席が用意されているわけではないので、そこはしっかり自分のポジションを取り返しにいきたいと思っています。

―― その憲剛選手と大島選手と中盤でトライアングルを組んでいるわけですが、だからこそ守田選手が意識していることは?

守田 僕は運動量と守備ですね。そのふたり以外にも周りにはうまい選手がたくさんいるので、逆に僕はシンプルにプレーしたほうがいいと思っているんです。それでも、最近は少しずつ気の利いたパスが出せるようにとチャレンジしているところもあります。僕のところからも危険なパスが出せれば、相手にとってさらに嫌になりますからね。あと、ふたりに力を借りなくても自分でできるようになりたい。だから、パスへの欲も日ごろの練習から出すようにはしています。

―― ケガで離脱する時期もありましたが、3人の関係性は試合を重ねるたびによくなってきていたように思います。

守田 僕が慣れてきたということもあるかもしれないですけど、少しずつ憲剛さんにも僚太くんにも、今、中盤で組んでいるのは(エドゥアルド)ネットではなく、僕なんだということがわかってきてもらえているのかなと。でも現時点では、まだまだ攻撃面においてネットには勝てないというか、ネットのようには補えていないと思うんですよね。だから、個人的にはリーグ最少失点でリーグ戦を終えたい。

 客観視すれば、自分がピッチにいるときは、1-0や2-1の接戦が多いので、攻撃面での貢献度は足りていないのかもしれない。実際、自分がケガをしてピッチを離れている試合では、7-0(J1第26節・コンサドーレ札幌戦)、3-1(J1第27節・名古屋グランパス戦)と、大量得点を奪って勝利しているので、自分が攻撃のリズムを崩していたのではと考えることもあるにはあるんです。でもその一方で、守備では貢献できているという実感はあるので、そこを突き詰めていきたい。

―― デビューした日本代表戦でもそうだったように、パスでも魅せる場面が増えてきているように思います。学生時代からパスに対する欲というか、意識はあったのですか?

守田 いや、そこまでなかったですね(苦笑)。でも、僕、大学に入るまではトップ下の選手で、大学3年生くらいまではその守備すら全然できなかったんです。おまけにパスもできなければ、シュートを決めることもできなければ、ドリブルで突破することもできなかったんですよ。ただただ、かきまわすだけ、みたいな(笑)。そんなトップ下だったんです。

―― それだけ聞くと、プロになれそうにないですね(笑)。

守田 そうなんですよね(笑)。昔から練習してきましたけど、シュートも、パスも、ドリブルも下手だったんです。そこは1日や2日で劇的に改善されることはない。でも、守備ならばボールを触らなくてもできるじゃないですか。自分の動きだけで相手からボールを奪うことができる。これならば難しくないなって思ったんです。

 加えて大学が、守備ができなければ試合に出られない環境だったことも大きかったと思います。それもあって、ひたすら守備の練習をしたんです。ひとつ年上に、守備のスペシャリストと言われているような先輩がいたんですけど、その人のプレーを見て、できるようになったんです。実際、その守備があったから、僕はプロになれたんだと思います。

―― その守備に自信を得たことで、他のプレーが成長したところもあるのでは?

守田 そこもありますね。ただ、それはフロンターレに加入してからだと思います。ボールの緩急、質、さらにはどちらの足に向けて出すのか。憲剛さんや僚太くんは、考えなくてもそれができると思いますけど、自分はまだまだ意識しなければできない。

 でも、ふたりとプレーすることで、自分にもそこへのこだわりは出てきていますし、これからは攻撃でキーになるプレーというか、アシストやゴール。さらにはアシストのひとつ前のプレーを意識したい。繰り返しになりますが、僕のところからも危険なパスが出せるようになれば、相手はさらに嫌だと思うし、ふたりに頼るだけでなく、僕自身が自立することができればと思うんです。