タイとのグループリーグ第2戦で腕章を巻いた齊藤は、叱咤激励してチームをまとめた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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「サボるな! 休んでんじゃねえ!」
 
 後半、1点を返されて守勢に回る時間帯もできる中、ピッチ内に闘将の怒号が轟いた。スタンドまで響いたその声の主は、MF齊藤未月。走ることに並外れたこだわりを持つ湘南ベルマーレのスタイルを体現する男が、「ちょっとサボる傾向がある」攻撃陣を一喝した。
 
「嫌われてもいいと思っている」
 
 齊藤はこう言い切る。「キツいのは分かる」としながらも、厳しい叱咤の言葉をかけた。それは湘南で者貴裁監督から叩き込まれてきたスピリットでもある。「ベルマーレでは、サボっていたらもう……(以下略)」というクラブで心身を磨いてきた男にとって、ちょっとキツいからと守備に戻らなくなるような姿勢は看過できないのだ。「ベルマーレの代表として来ている」という意識を忘れるつもりもない。
 
 メンタリティだけではない。露骨に攻め残りしてカウンターを狙ってきた後半のタイに対して守備のバランスをどう取るかといった戦術的な話についてもピッチ上の指揮官として齊藤が主導権を持った。調整が遅れて国内合宿では別メニュー調整。先発を外れた初戦を終えた時点でも「まだ70パーセントくらい」というのが本人の率直な感触だった。
 ただ、やはりこのキャプテンは欠かせない。そういう印象をあらためて抱かせたのがこのタイ戦だった。広い範囲を機動的にカバーしつつ、「アジアよりJリーグのほうが厳しいと思っている」という自負も持つ球際での戦う姿勢も見せ付けた。下を向いている選手には声を掛け、ディフェンスラインの押し上げが遅れていれば、たとえ何事も起きずとも、すかさず指摘した。
 
「チームには嫌われ役が必要だ」という言葉はよくいわれるものだが、なかなか難しい役回りではある。人に厳しく求めるからには、自分にも厳しくしておかないと周りは付いてこない。周りに「サボるな」と言っておいて、自分が歩いているような選手には誰も従わないだろう。だからこそ、齊藤は自分の原点と言うべき走って戦う姿勢は絶対に崩さない。
 
「80〜90パーセントくらいにはなったかな」とは言うものの、まだまだベストコンディションではない。ただピッチに立ってからそれを言い訳材料にするような様子は微塵も見せなかった。
 
 今回のU-19日本代表が個性派揃いのタレント集団であることに異論は出まい。ひとつにまとまって長期間の大会を戦い抜くことこそが恐らく最大の課題であり、影山監督が「上手いチームではなく、強いチームになろう」と強調してきた理由でもある。
 
 そして「強いチーム」に欠かせないのが、頼れる主将の存在だろう。厳しく熱く、誰よりも戦えるキャプテンがこの第2戦でピッチに帰ってきたのは、チームの今後にとって極めて大きい。
 
取材・文●川端暁彦(フリーライター)