国連が気候変動の現状へ警鐘、哺乳類絶滅すれば復活に数百万年必要

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人類が地球に与えて続けるダメージから哺乳類が復活するには数百万年かかるという新たな研究結果が出た。気候科学者の97%が人類が気候変動の原因と確信している中、トランプ政権は二酸化炭素排出の最大の原因である石炭産業を熱心に支援している。

10月上旬に、大きな危機を避けるためには、人類ができるだけ早く現在の在り方を劇的に変える必要があるという、戒めを込めた報告書を国際連合が発表した。大規模な変化、異常気象、生命を脅かす環境、増加する貧困、食料不足など、すべて遠い未来の話ではない。しかし、この報告書では、人類が地球を護るための変化を起こすことはないだろうと悲観的な見方を示している。この報告書が公表された1週間後、(気候変動を危惧して結ばれたパリ協定への参加を取り止めた)トランプ大統領は、活発に論文を発表する気候科学者の97%が人類が気候変動の原因と確信している中、気候変動は人類が引き起こしたものではないと、これまで通りの発言を繰り返した。トランプ政権は二酸化炭素排出の最大の原因である石炭産業を熱心に支援しており、法規制まで緩和している。これは国際連合の報告書が警鐘を鳴らす危機的状況を悪化させるだけの政策だ。

つまり、奇跡でも起きない限り、地球上から海岸線が消え、安定した天候が激変していく様を、我々は指をくわえて見ているしかない。もちろん、その過程で我々が大好きなコーヒーやビールの入手も困難になる。地球温暖化による異常な暑さで農作物が取れなくなるのだから。しかし、惨状はそこで終わりではないのだ。

気候変動によって起きる最大の危機が生態系の多様性の喪失だ。オルフス大学(デンマーク)とヨーテボリ大学(スウェーデン)の研究者チームが、これまでの生物の絶滅率が今後50年間続くと、人類が地球に与えるダメージから哺乳類が復活するまで少なくとも300〜500万年かかると算出した。種の絶滅は生命体としての地球にとっては自然な生命サイクルではある。絶滅する種もあるし、時には生存する種が一斉に絶滅することもある。そして、絶滅した種の代わりに他の種が進化する。しかし、地球の生命サイクルを無視した人類が地球環境に関与したせいで、哺乳類の絶滅率が急速に上がり、種の進化を維持できない状況に陥っているのだ。

研究者チームは、現生人類が出現して以降に絶滅した哺乳動物のデータなど、哺乳類に関する広範囲のデータベースと進化シミュレーションを使って、これまで通りの絶滅速度で今後50年間哺乳類が消滅し続けた場合の哺乳動物が復活するまでの時間を計算した。そこで算出された300〜500万年というのは、現在時点での生態系レベルまで戻るまでの時間で、現生人類が地球環境にダメージを与え始める以前に戻すには最低でも500〜700万年を要するという。

彼らが算出した復活に要する時間は、究極に楽天的な将来を想定している。つまり、人類が地球環境にダメージを与えることをやめた世界だ。しかし、それは現在の我々が進んでいる未来ではないことも明らかである。

クロサイとアジアゾウは、人類に劇的変化が訪れて、人間がこれらの保護に乗り出さない限り、もうすぐ絶滅すると予想されている2つの種だ。この2つの種の絶滅が確実視される背景には、この2つが独自の進化を遂げたことがある。つまり、この2種が絶滅したあと、生態系でこれらと同じ機能を果たす種が皆無ということだ。独自の進化を遂げた種が絶滅するということは、その生物を失うだけにとどまらず、その動物が生態系で担っていたシステムも全て消滅してしまうのである。

「大型哺乳動物や巨型動物類、つまりメガテリウムやスミロドンのように1万年前に絶滅した種は、かなり独自の進化を遂げた種だった。近縁種がほぼいない状況下での彼らの絶滅は、地球の生態系の進化の枝葉が全て切り落とすに匹敵した」と、今回の研究を指揮したオルフス大学の古生物学者マット・デイヴィスが言う。「トガリネズミ類には数百の種類があって、進化途中に絶滅が起きても生き延びられるようになっているが、スミロドンの場合は4種類しかおらず、すべて絶滅してしまった」

国際連合の報告書の唯一の利点は、今回の研究に使用されたデータや方法が、現在絶滅の危機に瀕している独自の進化を遂げた種を特定する手助けになる点だ。今後はこれによって特定された種を保存するための観察を続け、人類が与えるダメージを最小限に抑えることで、理論上は絶滅を回避できることになる。「何百万年後の復活を期待するよりも、現時点で生態系の多種多様性を保護する方が格段に簡単だ」と、デイヴィスが明言した。