途中からリオネル・メッシ(バルセロナ)にも重なった、と言ったら大袈裟だろうか。

 中島翔哉が左サイドでボールを持ち、ゴールへ向かってドリブルを始めると、何かが起きそうな予感がする。細かいタッチと急転換、瞬時の加速で敵をかわし、少しでもコースが見えたら鋭いミドルでゴールを狙う。小柄な体を軽やかに動かし、大きな相手を面白いように翻弄する姿は、利き足こそ違えど、世界の頂点に君臨してきたアルゼンチンのスーパースターさえ想起させた。


ウルグアイ守備陣を切り崩した中島翔哉

 森保一監督率いる日本代表が、真の強豪との初めての対戦で4-3の勝利を収めた。試合後にウルグアイの賢者、オスカル・タバレス監督は「爆発的な日本の勢いに(ウルグアイの)選手が消耗してしまった」と表現。それをもたらした最大の要因のひとつが中島のパフォーマンスにあった。

 予兆はあった。日本代表に合流する直前、彼の所属するポルティモネンセはポルトガル・リーガの3強のひとつ、スポルティングと対戦。そこで中島は2ゴール・2アシストとチームの得点のすべてに絡み、4-2の勝利に貢献している。かの国において、ビッグ3(ベンフィカ、ポルト、スポルティング)は別格の存在だ。それ以外のチームが彼らから勝利を収めることは少なく、それだけで大きなニュースになる。しかもポルティモネンセは小さな地方クラブだ。欧州最西端の国に衝撃が走ったという。

 筆者のUEFA.com時代の同僚ペドロ・ゴンサウベス記者が運営する『GoalPoint.pt』は、ポルトガル最大かつ欧州有数のフットボールデータサイトだ。170以上の項目のデータを独自のアルゴリズムで解析して選手を評価しており、そのスポルティング戦の中島の評価は8.5。第7節で最高の数字(8点台はひとりだけ)で、当節のMVPに選出されていたのだ。従来の採点と異なり、主観が一切排除されているため、十分に信頼できるものと言える。

 だからこう解釈していた。中島はすでに欧州のトップレベルに肉薄するほどの力をつけているのではないか、と。

 新潟でのパナマ戦の後に、出番のなかった中島に尋ねてみた。スポルティングのような相手にあれほどの活躍ができた要因は何だと思うか、と。

「どの試合でも楽しくサッカーをして、チームの勝利に貢献したいです。相手がどこでも同じように、全力でやろうと思っています」

 中島はちょっとはにかんだ表情でそう言った。まじりけなしのサッカー小僧。そんな印象を受けた。では、ポルトガルであなたが得たものといえば?

「よりサッカーを楽しめています。自分にすごく合っているチームでプレーできているので、やっていてすごく面白いし、成長もできているのかな」

 迎えたウルグアイ戦で、中島はその言葉どおり、楽しそうにプレーしていた。序盤から何度も勝負を仕掛け、DFの間に完璧なパスを通し、南野拓実(ザルツブルク)の先制点をお膳立てした。プレーは素早く丁寧で、背後の長友佑都(ガラタサライ)との連係もスムーズ。強烈な一撃でGKを強襲し、大迫勇也(ブレーメン)のチーム2点目につなげた。セットプレーのキックも正確だった。

 ゴールに直結するプレーはそれ以上なかったが、その後も果敢にドリブル勝負を挑み、遠目から積極的にシュートを放った。左サイドで背番号10にボールが渡ると、日本の攻撃が加速する。中島の素早く小刻みな仕掛けには、ラツィオのマルティン・カセレスも、アーセナルのルーカス・トレイラも、そして10 日前に対戦したばかりのスポルティングのセバスティアン・コアテスも手を焼いていた。

 そんな彼の姿を観て、サポーターの胸は高鳴った。世界のトップレベルに近づく日本人選手がまたひとり出現しようとしている事実に。

 試合後、たくさんの記者が彼の話を聞こうとした。でも多くの質問は、シンプルな答えを導くだけだった。

「楽しくプレーすること。それをとても大事にしています。今日もすごく楽しめたので、チームメイトに感謝しています」

 とはいえ、あれほどのパフォーマンスを見せられたのだから、その真意を知りたい。今日の試合のどこが楽しかった? 具体的に聞かせてほしい。

「すべてです。ボールを持っている時も、そうでない時も。楽しくやろうと考えてしまうとなかなかできないので、自然に。ずっとサッカーをやってきたから、考えなくても体が勝手に動いてくれると思っています。迷うことが一番良くないですね。強い相手(との対戦)は好きですけど、どの舞台、どの試合、どの練習でも、サッカーは常に楽しいもの」

 新たな日本代表のエースナンバーを背負うのは、純粋無垢なサッカー少年がそのまま成長したような24歳だ。ただし、プレーはその表情ほど優しくはない。中島が左サイドでボールを持って前を向けば、対峙する守備者は混乱に陥る。ちょうど、メッシをマークする者たちと同じように。