主役となったのは、驚異的なクイックネスと積極性で世界レベルの守備陣を翻弄し続けた、小柄な2列目トリオだろう。強靭なフィジカルを武器に最前線でボールを収め、見事なゴールを決めた大迫勇也(ブレーメン)もメインキャストに含まれる。


ウルグアイ戦で縦横無尽の活躍ぶりだったボランチの遠藤航

 しかし、主役を輝かせるには、優れた脇役の存在が不可欠だ。今夏のワールドカップでベスト8に進出した南米の強豪ウルグアイとの一戦で、名バイプレーヤーとしての存在感を放ったのは、ロシアの舞台で悔しさを味わった遠藤航だった。

 先月に行なわれたコスタリカ戦に次いで、ボランチの位置でスタメン出場した遠藤は、立ち上がりから積極性を示した。開始2分に右サイドの酒井宏樹(マルセイユ)にスルーパスを通して最初のコーナーキックを獲得すると、その後も広範囲に動いてボールに絡み、南野拓実(ザルツブルク)や大迫にクサビを打ち込んでいく。ボールを持てばシンプルに前につける遠藤の縦パスが、攻撃のスイッチとなっていたのだ。

 遠藤がこの試合のテーマとしていたのが、まさにこの「縦への意識」だった。

「縦の意識は持っていたので、チャンスになったシーンもあった。もっと横に落ち着かせるシーンも作れればよかったかなって思いましたけど、前半から『前に、前に』っていう意識は持っていました」

 これまでの遠藤といえば、今季途中まで所属した浦和レッズで主にセンターバックを務める一方、サイドバックやボランチもこなすユーティリティプレーヤーであり、攻撃よりも守備職人のイメージが強かった。ロシアワールドカップのメンバーに名を連ねたものの、バックアッパーの域を抜け出せず、世界の舞台に立つことはできなかった。汎用性は高く、使い勝手はいいが、突き抜けたものがない。それが、これまでの遠藤に対する評価ではなかったか。

 そんなレッテルを振り払うべく、今夏にベルギーのシント・トロイデンに移籍を決断。海を渡ってまだ2カ月ほどしか経っていないものの、その選択はさっそく、遠藤にとって吉と出ているようだ。

 なにより大きいのは、チームでボランチとして出場できていることだろう。センターバックとしてはサイズが足りず、サイドバックとしてはスピードが不足する。このボランチのポジションこそが、遠藤にとっての適材適所である。

「そんなに長くやっているわけではないですけど、自分のなかでは少し自信を持ってプレーできるようになってきている。普段やっていないポジションからボランチに入るのと、チームでボランチをやっていて、代表でも同じポジションでできるのは自分でも大きい」

 チームと同じポジションでプレーできていることは、メンタル面にも好影響を与えているようだ。

「たとえば、間で受けたときにプレッシャーがきても、ターンして前につけたりできているし、縦に入れる勇気や、剥がしてドリブルでもっていく勇気にもつながっていると思いますね。それはメンタル的な要素が大きいと思っていて、自分のなかでは意識しているし、成長している部分だと思います」

 継続的にボランチでプレーすることによるメンタル的な余裕が、プレーの幅を広げているというのだ。

 後半には、自らのボール奪取からそのまま持ち上がり、酒井にパスを通して大迫の決定機の起点にもなった。

「前の自分だったら、奪ったあとに簡単にはたいておしまい、みたいなプレーをしていたと思うんですけど、向こう(ベルギー)に行って、シンプルにやるところと、運んでチャンスメイクするところの判断は意識している」

 コスタリカ戦ではともにピッチに立ち、ウルグアイ戦でも後半途中からボランチコンビを組んだ青山敏弘(サンフレッチェ広島)も、遠藤の成長を実感するひとりだ。

「ベルギーでは、個の力でどれだけ剥がせるか、と言っていた。自分で剥がさないといけないという意識にプラスして、代表では周りのサポートもある。自分で行くところと、周りとの連動の部分の使い分けがうまくなったし、レベルが高くなってきたなと感じる」

 もちろん、本来の持ち味である守備に関しても、遠藤の存在感は大きかった。強烈なプレスで出足を封じ、空中戦でも引けを取らず、セカンドボールに対する反応も早かった。ピンチの場面ではスペースを埋める危機察知能力を示し、デュエルの力強さも感じられた。試合勘の影響からか、決して本調子とは言えなかった柴崎岳(ヘタフェ)の働き分をカバーする、縦横無尽の活躍ぶりだった。

「今はいいサイクルに乗れていると思っているので、このままいいメンタリティで代表でもクラブでもやっていきたい。どこかでうまくいかないことがあるかもしれないですけど、それはそのときに考えればいいこと。今はどこまでやれるかを試して、成長していきたいなと思います」

 海外移籍をきっかけに、これほど短期間で飛躍するケースも珍しいだろう。前向きなコメントからも、遠藤の充実ぶりがうかがえる。

 使い勝手のいい万能型から、攻守両面に貢献できるボランチのスペシャリストに――。そんなポテンシャルを感じさせる、ウルグアイ戦での遠藤のパフォーマンスだった。