クラウドファンディングされていたエアポンプはAmazonにも出品されていた

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 ここ数年、日本でもクラウドファンディングは市民権を得て、達成額が1億円を超えるプロジェクトも珍しくはなくなった。しかし、トラブルになるケースも増加しているという。

◆運営サイトに抗議しても自己責任で泣き寝入り

 一口にクラウドファンディングと言っても、プロジェクトの内容によって投資&融資型、寄付支援型、物品購入型に分類できるとされている。投資は金銭やサービス、寄付は活動報告など、購入型は製品が主なリターンとなる。

 大手クラウドファンディングサイトMakuakeで、ある物品購入型のクラウドファンディングに参加したAさんは、リターンの遅さとプロジェクト主、サイトの対応にうんざりしているという。

「キャンプで使うマットや子供の浮輪を十数秒で膨らませるという、ポケットに入るサイズのアウトドア用小型エアポンプを生産するというので、参加しました。一般販売価格は4370円ですが、7月9日までに参加すれば特別価格の2800円でリターンが得られると。しかし、8月上旬の発送とあったにもかかわらず、品物が日本に着いたのは8月末。9月に入ると台風が来たから、商品が送れないと言い始めたのです」

 そしてさらに支援者たちの怒りに火をつける出来事が発覚する。なんと、Amazonで2228円で販売され始めたのだ。

「プロジェクト主は『売られているのは前のバージョン』と言い訳をしていました。しかし、私は試しに購入したのですが、Makuakeの商品と同じものとしか思えないものでした」

 規約上、一旦支援したプロジェクトのキャンセルはできず、トラブルは当事者間での解決が基本とはいえ、掲載サイトに対して憤りを感じる支援者は少なくない。Makuake広報部に話を聞いた。

「商品の遅配や、クレームが来ていることも把握しております。プロジェクト主に対しては発送を促すだけではなく、支援者への経過報告などの対応をするよう、強く要請するなどしております」

 結局、Aさんの元に商品が届いたのは、この原稿の締め切り間際の9月27日だった。

「Makuakeも20%の手数料を取ってるならちゃんとしてほしい。通販で普通に安く買えるなら、わざわざクラウドファンディングに参加しません。こんなん詐欺みたいなもんですよ」

◆支援した結果、人間関係が破綻

 会社員のBさんは、常連だったスポーツ観戦居酒屋が行った移転資金調達の投資型クラウドファンディングで、痛い目を見た経験を語ってくれた。

「引っ越しファンドと銘打ったプロジェクトはいくつかのコースに分かれていて。私が参加した5万円コースは6万円分の食事券、生ビール10杯分のチケット、焼酎ボトル2本、テレビの観やすい優先席の確保など、かなりお得。しかし、移転して半年ほどした頃から、高額コースに参加した人が立て続けに出禁になったり、食事券の使用ルールが変わって一度に使える金額が少なくなったんです。騙し討ちですよ、こんなの」

 そしてBさんも店主との間で食事券の扱いを巡りトラブルになり、出禁を言い渡されることとなる。最終的には、残っている食事券分の金額が返金されることになったが、なんと話し合いの翌月に閉店。Bさんの手元には、紙クズとなった3万円分の食事券だけが残った。

 クラウドファンディングにおける被害が自分だけで終わるなら、まだいいのだが、周囲の人を巻き込むケースは悲惨だ。主婦のCさんはクラウドファンディングがきっかけで友人を失った。

「知人がアロマオイルの教室を開くクラウドファンディングを始めて、友達を誘って参加しました。しかし、開業してみるとその教室はネットワークビジネスだったんです。教室に行くたびに勧誘されて、誘った友達からは避けられるようになり疎遠になりました」

 クラウドファンディングは、あくまでも応援したい人の好意によるもの。それを逆手にとる輩は少なからずいるのである。

◆被害者救済は法律上難しい

 では、こうした被害に遭わないためにはどうしたらいいのだろうか。IT業界に詳しいトップコート国際法律事務所の山田政樹弁護士に話を聞いた。

「一概にクラウドファンディングといっても、物品購入型、寄付型、投資型などプロジェクトの性質によって対応する法律、契約関係が異なるのが特徴です。また物品購入型であっても、単純な売買契約とは異なり、ケース・バイ・ケースでの対応が迫られます」

 では、実際に被害に遭ってしまった場合はどうなるのだろうか。

「メールや画像のキャプチャなど、証拠を保全するのは鉄則です。しかし、クラウドファンディングの性質上、仮にプロジェクトが頓挫しても救済が得られないケースが多い。プロジェクトが頓挫したり変更されることもあるため、自分が背負うリスクを理解した上で参加することが重要でしょうね」

 クラウドファンディングはあくまでも支援。通販サイトで買い物をする感覚で参加するのは、危険なのである。

《クラウドファンディング事件簿》
●studygift
’12年に家入一真氏がプロデュースした学費支援サイト「studygift」において支援金の使途説明が不十分という理由から、最初の支援候補者の女性に批判が集中。55時間で100万円近い金額を集めるも、結局は全額返金のみならずサービスも廃止。

●ドローンLily
画期的な性能と低価格で大評判を得たアメリカの自動追尾ドローンLily。総額43億円を調達するも一向に発売されず、さらに話題を集めた宣伝動画ではドローンを使っていないウソもバレて事業停止。6万1450人の顧客から集めた3840万ドル(約43億円)の返金を業者は約束したが、ほとんど返金されることはなかった。

●ワイヤレスイヤホンAir
Airpodsよりコンパクトな外観と、超品薄なAirpodsの代替品としての期待からMakuakeで発表された「小さなボディにフルオーケストラ。Hi-Fiサウンドの完全ワイヤレスイヤホンAir」はクラウドファンディングにより1億円もの資金を集めるも、商品は一向に完成せず支援者たちの怒りが爆発。その間、なぜか別業者がAmazonで同製品を先行発売するという謎のトラブルも発生。ようやく届けられたヘッドフォンは耐久性に乏しく故障が頻発。実はこの商品、アメリカでもearinという似たようなプロジェクトがあり、Kickstarterで140万ドルあまりを集めた。こちらはそこそこ高品質だったが、ほぼ同時期にAirpodsが発売されて終了。

●焼かない焼肉屋・29ON
特殊な調理法で話題となった完全会員制の「焼かない焼肉屋」がクラウドファンディングで会員を募集したところ、たちまち定員を満たしたが、その後も追加募集を繰り返し、席数わずか40の店で会員は1000人の大台を突破。これには既存会員の不満も頂点に達し、Makuakeでは異例となる返金騒ぎに発展した。

●財団法人泰葉こども基金プロジェクト
歌手の泰葉が「あしなが育英会など恵まれないこどもの皆様や虐待に苦しむ女性を応援します」と言って300万円を目標に始めたクラウドファンディングだが、16万7000円しか集まらなかった。その後、支援のリターンとして約束した「6曲入りCD」がいつまでたっても完成せず、支援者が催促すると、逆ギレした揚げ句に「テロ行為」と罵倒。泥仕合に発展した。

●赤サブレ事件
「子供だましはもうたくさん。真にリアルなFPSゲームを作ろう」というアメリカ・Kickstarterのプロジェクトに22万ドルが集まった。その後、実際に「Takedown:Red Sabre」というタイトルのゲームが完成したが、蓋を開けてみると異常に難しいだけで、すぐさまユーザーから超クソゲーの烙印を押されることに。同タイトルは軽蔑を込めて「赤サブレ」と呼ばれ、返金を要求する支援者が続出した。

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