森保一監督のもとで代表初キャップを刻んだ4人目の選手は、19歳のセンターバックだった。冨安健洋──188cmの巨躯に大いなる才能を備えた謙虚なニューカマーだ。


パナマ戦で先発フル出場の冨安

「ずっと調子もよくなかったので、(代表初出場に)不安しかなくて。だから、『よっしゃ、いこう』という感じで試合に入れたわけではなかったです。試合が終わってホッとした感じです」

 試合後、日本代表に初出場したティーンに集う報道陣を前にして、うつむきがちに言葉を選ぶ。謙遜と朴訥。そこに嘘はなく、成長過程の若き守備者が、ありのままの感覚を口にしただけだろう。

 年齢について、とかく強調されることも好まない。

「堂安(律)も同い年ですし、まだ僕は誕生日が来ていないだけで。同世代にたくさん良い選手がいて、そういう選手の活躍も刺激になっています。彼らに負けないように、切磋琢磨しながらやっていきたいです」

 自身のパフォーマンスにも厳格だ。

「無失点は毎試合求めていることなので、よかったのかなと。でも、細かいミスもあったし、決してパーフェクトなゲームではなかった。映像を見返しながら、反省して次に活かしたいです。

 何度かゴールキックのところで、誰もいかないシーンもあって、あれは僕がいくべき場面でした。(周囲との)コミュニケーションについては、時間がかかるかもしれないですけど、もっとやっていかないといけない」

 実際の新潟のピッチ上には、堂々たる所作でハイレベルなプレーを披露し続ける冨安の姿があった。対峙したのはパナマの背番号9、ガブリエル・トーレスだ。ロシアW杯にも出場したストライカーをハードにマークして自由を奪い、シュートを1本も打たせなかった。最終ラインの中央に入る選手として、もっとも重要な仕事を完璧にこなしたと言える。

 そして、モダンフットボールのディフェンダーに求められる高い資質も見せた。ビルドアップの際に、右に開いてボールを持つと、両足から高精度のパスを配球。もともと定評のあったグラウンダーのパスは1月に渡ったベルギーでさらに磨かれ、強くて正確だ。また対角線のロングフィードは味方のチャンスを生み出し、前にスペースがあれば、自ら持ち上がってチーム全体を押し上げた。

 でも本人に言わせると、それもこれも周囲のサポートによって実現できたことだという。

「青山(敏弘)選手や(三竿)健斗くんがバランスをとってくれて、ボールを落ち着かせてくれました。だからこそ、僕が開いてボールを出すことができたと思います。彼らのポジショニングを見て、自分で判断してやっていましたけど、(味方の)サポートがなければ、難しくなっていたのではないかと」

 そんな風にどこまでも地に足がついている若者を、周囲はどう見ていたのか。ゴールマウスに立ち、彼の背中を見ながらプレーしたGK権田修一はこう話す。

「能力が高いのは練習を見ていてもわかります。自分の良さをしっかり出せる選手ですね。あの年齢でこの舞台で(実力を)出せるのは、普通じゃない。ベルギーでも常時出場しているし、質の高い選手だというのは明らか。(2015年3月以来の代表戦に出場した)僕も長く、一緒にできるように頑張りたい」

 冨安の隣でセンターバックの相棒を務めた槙野智章は、より具体的に印象を語った。

「注文はないですよ。初出場の代表戦なのに、すごいハイパフォーマンスだった。人に強く、アジリティーもあり、スライドなどの戦術的な動きにも無駄がない。経験を積んでいけば、もっともっとよくなるはずです。楽しみですよね。どんな言葉をかけたかですか? いつもどおりのプレーをしてよ、楽しくプレーできているか、と。それが一番大事だと思うので」

 福岡で生まれ育ち、高校2年で公式戦デビューを果たし、U-19日本代表の主力としてAFC U-19選手権の初制覇に貢献。アビスパ福岡の井原正巳監督から直々に守備の極意を学んだ逸材は、順調以上のステップを踏み、ついにA代表でも足場を築き始めている。ベルギーからの報道によると、所属先のシント・トロイデンの指揮官も特大の期待を寄せているという。冨安の目前には明るい未来が開けているはずだ。

 でも本人はいたって慎ましい。

「まだ1試合やっただけですし、これでどうこうなるわけではないと思います。また練習からアピールしないといけない。立場は変わらないと思います」

 日本の未来を背負って立つべき守備の俊英が、重要な一歩を踏み出した。槙野が言うように、クオリティーに注文はないが、ひとつだけ願うとすれば、次の試合後にはもう少しだけ笑顔が見たい。傍目にも代表での試合を楽しむことができるようになれば、彼はもっともっと良くなるはずだ。