U-21代表も含めれば、今年、”森保ジャパン”の試合を数多く見てきたが、これほど辛口だった森保一監督は、あまり記憶がない。

「勝つことは大切だし、ハードワークは称えたいが、内容的には攻撃でも守備でも、まだまだ上げていかないといけない」

 パナマ戦後の公式会見。森保監督はひとまず前向きに試合を振り返ると、自らこう切り出した。よほど腹に据えかねるところがあったのだろう。

 確かに9月のコスタリカ戦に比べると、同じ3-0の勝利でも、内容的には見劣った。森保監督が言うように、「さらにクオリティーを上げられるよう、気を引き締めてやらなければならない」。

 だが、新監督が就任して、まだ2試合目。チームとしての連動、連係について大きな期待はできず、ある程度個人の能力に頼らざるを得ない。それを考えれば、まずまずの試合内容だったのではないだろうか。


初陣のコスタリカ戦に続いて、パナマ戦も3-0と快勝した森保ジャパン

 というより、新チーム立ち上げ直後の今から、志向する戦術の落とし込みばかりに躍起になるのは、むしろナンセンス。それよりも、柔軟かつ幅広い選手の選出や起用に力点が置かれている様子は、かなり好感が持てる。

 W杯ロシア大会に出場した”ロシア組”の扱いを見ると、それがよくわかる。

 まず、新チーム初戦となった9月のコスタリカ戦では、ロシア組の主力を一切招集せず、”若手海外組”を中心に起用。今回は、ロシア組の主力も招集メンバーに加えたが、だからといって、すぐにパナマ戦でまとめて起用することなく、コスタリカ戦でのメンバーとの融合を図るように、少しずつロシア組を加えていく。ロシア組と若手海外組の両方を、うまく競わせながらひとつのチームにしようとしている印象だ。

 ロシア組のひとり、DF長友佑都が語る。

「コスタリカ戦では、若い選手が”また違った代表”を見せてくれた。彼らはギラギラした、何の恐れもないプレーをしていて、僕も原点に帰れたような気がした。危機感もすごく感じている。経験を伝えるだけでなく、若い選手とともに新しい日本代表を創造していきたい」

 幅広い選手の選出、起用は、もちろん、Jリーグでプレーする”国内組”もその対象だ。J1で好調のFW北川航也が初招集ながら、招集初戦のパナマ戦でいきなり起用されるあたり、森保監督の姿勢がはっきりと表れている。

 ともすれば近年は、選手選考においては海外組偏重の傾向が強く、選手起用においては、呼ばれても使われない選手が数多いといった”悪しき慣習”が目立っていただけに、本来なら当たり前の現状も、新鮮なものに映る。

 森保監督の姿勢は、はっきりと数字で表すこともできる。

 W杯後の初戦となったコスタリカ戦の先発メンバーを、W杯当時の主力選手、同控え選手、それ以外の選手の3つに分類すると、内訳は主力0人、控え3人、それ以外8人。そして、2戦目となる今回のパナマ戦が、主力2人、控え1人、それ以外8人である。

 では、過去のW杯後の初戦、2戦目はどうだったか(今年9月のチリ戦が中止となり、9月に1試合しか行なわれなかったため、過去の例もそれに合わせて、9月の最初の試合を初戦、10月の最初の試合を2戦目とした)。

 2014年W杯後の初戦(9月5日vsウルグアイ)は、主力6人、控え1人、それ以外4人。続く2戦目(10月10日vsジャマイカ)は、主力5人、控え2人、それ以外4人。

 2010年W杯後の初戦(9月4日vsパラグアイ。原博実監督代行が指揮)は、主力5人、控え3人、それ以外3人。続く2戦目(10月8日vsアルゼンチン。アルベルト・ザッケローニ監督の初戦)は、主力5人、控え4人、それ以外2人。

 数のうえで明らかなように、森保監督の選手起用は、明らかにW杯メンバーへの依存度が低い。それは、現在と試合日程が大きく異なるものの、2006年W杯後の初戦(8月9日vsトリニダード・トバゴ)で、主力3人、控え1人、それ以外7人だったときをも下回る。

 およそ3カ月後の来年1月には、大陸王者を決めるアジアカップが控えている。そこではやはり、結果は完全に度外視、というわけにはいかないだろう。だとしても、目先の結果を求め、ロシア組をベースに今からメンバーを固定して戦術の浸透を図ったのでは、4年後へ向けたチームの成長を鈍くしかねない。

 むしろ、新チームを立ち上げたばかりの今だからこそ、いろんな選手を起用すべき。言い換えれば、これほど大胆な選手起用は今しかできない。その発想は当然のものだ。

 おそらく次のウルグアイ戦では、もう少し”ロシア色”が濃くなるのだろう。そこでロシア組が、さすがの貫録を新顔の面々に見せつけてくれれば言うことなし。万が一、不甲斐ない結果に終わったとしても、若い選手たちが期待高まるプレーを見せてくれている現在、チーム内の序列がシャッフルされるという意味では、それもまた悪いことではない。

 森保監督が就任して、まだ2試合。何かを判断するには早すぎるが、今やっておくべきことが行なわれているという意味では、無難なスタートを切っていると思う。

 加えて、森保監督が新戦力の発掘優先を言い訳にせず、試合内容にしっかり苦言を呈すあたりも悪くない。