関東では中山から東京へと舞台を移して、いよいよ秋競馬本番モードへ突入。そして今週、秋のGIシリーズの合間を縫って行なわれるのは伝統の重賞、GII毎日王冠(10月7日/東京・芝1800m)だ。

 過去には、数々の名勝負が繰り広げられ、ここをステップにして、のちに名馬へと上り詰めた馬が数多くいる注目の一戦。この秋の古馬GI戦線の行方を占ううえでも、見逃せない重要なレースとなる。

 その大事な一戦を前にして、スポーツ報知の坂本達洋記者はこう語る。

「例年、有力馬の多くが秋の始動戦として臨んでくるため、好メンバーが集結することが多いです。今年も3頭のGI馬が参戦。面白い顔ぶれがそろったと思います。

 ただ、このレースの難しいところは、マイル路線と中距離路線の、両方のメンバーが集まってくる点です」

 坂本記者が言うとおり、GI馬3頭の内訳を見ても、アエロリット(牝4歳)とケイアイノーテック(牡3歳)はマイルGIの勝ち馬で、キセキ(牡4歳)は昨年のGI菊花賞(京都・芝3000m)の覇者と、それぞれの適性は大きく異なる。このあとに向かう大舞台も各々違うため、確かに実力比較は難しく、悩ましいレースと言える。

 こうした出走馬の距離適性の多彩さを踏まえて、デイリー馬三郎の吉田順一記者は、開幕週の馬場の特徴からレースの傾向を導き出し、こんな見解を示す。

「エアレーションやシャダリングの効果によって、開幕週でも時計のかかる馬場に仕上がる時期もありましたが、今や馬場造園課の技術が上がって、どの競馬場も水はけがよくなっています。そのため、馬場硬化は否めず、最近はどの競馬場でも開幕週には開幕週らしい速い時計が出て、上がりの速い競馬が多いですね。

 毎日王冠も、”遅い決着”でも1分46秒台。それも、スローペースや馬場がやや重のコンディションだったときです。過去10年では、1分44秒台が1度、1分45秒台が5度、記録されています。こうした傾向から、脚質やポジショニングより、瞬発力の有無が問われるレースと言えます。マイル前後で持ち時計のある馬が有利な、舞台設定と判断していいでしょう」

 事実、昨年も1800m戦の海外GIを勝っているリアルスティールが勝利し、2、3着にはマイル前後で実績のあるサトノアラジンとグレーターロンドンが入った。

 となると、今年もマイル戦のGI馬アエロリットやケイアイノーテックが優勢、ということだろうか。「いえ、この2頭には死角があります」と吉田記者は言う。

「今年もマイルGIの安田記念(6月3日/東京・芝1600m)で2着となり、名手ジョアン・モレイラ騎手が手綱を取るアエロリットにとっては、”舞台は整った”ように映りますが、ここ2回の鉄砲実績が今ひとつ。GIだったとはいえ、4着、7着と振るいませんでした。

 しかもこのメンバーなら、実績的にも、展開的にも、目標とされる立場。マークは相当きつくなり、別定戦で斤量増となる今回は、ひと筋縄ではいかないでしょう。

 ケイアイノーテックも1週前の追いきりでは、まだ本調子には至っていませんでした。現時点では、狙いづらい状況です」

 そこで、吉田記者は「ケイアイノーテックの近況を差し引いても、ひと夏越しての成長が半端ない」という、3歳馬2頭を推奨する。

「2歳時にマイル戦で良績を残しているステルヴィオ(牡3歳)と、マイル実績豊富なカツジ(牡3歳)です。ともに、菊花賞トライアルのセントライト記念(中山・芝2200m)や神戸新聞杯(阪神・芝2400m)には目もくれず、さらに2週後に行なわれるGIII富士S(10月20日/東京・芝1600m)ではなく、芝1800m戦で、好メンバーが集まる毎日王冠を使ってくるということは、今後の大まかな指針を決める意味合いが強いと思われます。

 ですから2頭とも、中途半端な仕上げでは今後の指針を決められないこともあり、調教にも熱が帯びています。最大目標がGI天皇賞・秋(10月28日/東京・芝2000m)なのか、GIマイルCS(11月18日/京都・芝1600m)なのか、もしくは現状の力に見合ったグレードの重賞を狙いにいくのか、このレースの内容を吟味して決められそうです。

 2頭の比較では、実力や休み明けの実績からステルヴィオを上に見ますが、こちらはクリストフ・ルメール騎手が乗ることもあって、人気になりそう。とすると、穴ならこの春のGIIニュージーランドトロフィー(4月7日/中山・芝1600m)を制したカツジでしょう。


この中間、精力的に調教をこなしているというカツジ

 本番のGI NHKマイルC(5月6日/東京・芝1600m)では、最内枠で痛恨の出遅れ。早めに挽回しようと押し上げていったことで、脚を少し使ってしまったのが誤算でした。また、勝負どころで動けず、直線を向いてからは進路を探しつつの追い出し。エンジンのかかりが甘くなり、残り200mぐらいからは馬群が密集し、他馬との接触や進路がなくなるなどの不利も堪えた印象です。

 結果、8着に終わりましたが、最内枠がアダになった立ち回りを考えれば、力負けではなさそうです。もともと気のいいタイプで、仕上がりには手間取らないのですが、この中間は早い時期からウッドチップで意欲的な調整を施してきました。追うごとに6ハロン時計を短縮し、凄みすら感じさせる攻め気配。ひと夏越しての成長を感じさせ、とても楽しみな復帰戦となりました」

 一方、坂本記者は”遅れてきた大物”を穴馬に指名する。

「1番人気のエプソムC(6月10日/東京・芝1800m)で思わぬ大敗(14着)を喫したダイワギャグニー(牡4歳)を見直す手もありますが、それでもある程度の人気を得そう。そこで、面白いのがサンマルティン(セン6歳)です。

 前走のGIII小倉記念(8月5日/小倉・芝2000m)は、ハナを切ったマウントゴールド(3着)にぴったり付いていったトリオンフが1分56秒9という超高速決着を制してレコード勝ち。完全に前が止まらない流れで、決め手勝負のこの馬にとっては厳しい展開でしたから、度外視していいと思います。

 33秒台の鋭い末脚の持ち主で、2走前のオープン特別・都大路S(5月12日/京都・芝1800m)では、その後にGIII函館記念(函館・芝2000m)を勝ったエアアンセム(2着)を完封しました。

 サンマルティンを管理する国枝栄調教師は、『エアアンセムを負かしたときのような形になれば……』と反撃ムードを漂わせています。重賞でも遜色ない能力を秘め、前走の結果で人気が落ちるようなら、妙味ありです」 この秋の大一番に向けて、新たな”ヒーロー”が登場するのか。ここに名前が挙がった3頭は、間違いなくその候補と言える。そして、これら”穴馬”の激走に期待して見事馬券をゲットしたら、この日の深夜に控える凱旋門賞でも大勝負だ!