50代で未経験の職種にチャレンジしていますが、全部不採用に。応募を繰り返すのは無駄なことでしょうか?(写真:teresa/PIXTA)

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56歳の独身女性です。療養型病院で、リハビリスタッフをしておりましたが、昨年7月に退職しました。同年9月からハローワークの職業訓練校で簿記・社会保険のコースを4月まで受講し、簿記2級の資格を取得しました。
その後50社ほど事務職全般の求人に応募しましたが、全部不採用でした。書類選考を通過したのは5社のみでした。この年齢で事務職正社員の応募を繰り返すのは、無駄なことなのかなと悩んでおります。
前職は営業事務・総務経理事務・療養病院のリハビリ職員・ケアマネジャーを担当しておりました。
希望職種は、経理事務職です。
無職 高橋

未経験でも採用側の不安を払拭する方法はあります

決して無理ではありませんが、冷静に状況を鑑みたうえで、いきなりのベストではなく順番を追ってベストに近づく方法を取らざるをえないでしょう。


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ちょうだいした文章ではわかりかねますが、おそらく高橋さんは今までリハビリスタッフとしての経験のみあり、目指しているような経理事務は実務としては経験がない、そういった状況かと思われます。

ストレートに申し上げますと、そのような状況では基本的にハードルは非常に高いと言わざるをえません。

経験がないということもそうですが、ご年齢のことも「あと何年やっていただけるのか」という疑問が採用する側の頭をよぎることでしょう。

ただ、そう考えますと採用側の不安が明確である以上は、そのような採用側の不安を払拭できればいいわけです。

したがって、そのような採用する側が抱えるであろう明確な不安や不確定要素を払拭できるようなことを、いかに高橋さんがアピールできるか否かが今回の肝ということになります。

経験がない、ということですからいきなり簿記の資格だけを持って「即戦力です」とは言えません。

言えませんが、たとえば病院や医療関係でずっと勤務をされてきたでしょうから、少なくともその業界や業界の現場という知見はあり、その部分では経験者で即戦力、ということも言えるでしょう。

そのような業界や近い業界に絞って応募をしてみる、という手段もありかもしれません。

もっと言うと、そういった会社で比較的新しく設立されたような会社や、その業界に新たに進出したような会社であれば、高橋さんの「即戦力要素」である業界経験が重宝される可能性も高まるというものでしょう。

今回の転職を「経理事務×業界」という2つの側面で考えた際に、前者における経験のなさを後者におけるバリューでカバーする、という考え方です。

そうすることでさすがに2軸ともにゼロから、ということよりは可能性が高まるというものです。

上記はあくまでも例でしかありませんが、やりたい仕事(=経理事務)というピンポイントの点における経験だけで考えるのではなく、より広い業界や仕事の流れという面で考えると、自分でも気が付いていなかったバリューが見えてくる可能性があります。

「自分の価値」こそ転職時に隠れた武器になる

転職というとどうしても目先の仕事、この場合では経理事務を自分ができるか否か、で考えてしまいがちですが、会社に提供できうるバリューの総額、という側面で本来は考えるべきなのです。

そしてそのような自分でも思ってもいなかった「埋もれていた自分の価値」こそが、意外と転職時に隠れた武器になる可能性もあるのです。

そのようにして、まずは事務の仕事に「入り込む」、そしてそこで経験を積んで、今度はその経験(=仕事面での即戦力さ)をアピールして次につなげる、そうやって自分自身の持っている可能性をどんどん開花させ、もって自分を成長させるのが「キャリアを創る」ということなのです。

高橋さんは50代半ばとのことなので、すでに30年前後の何かしらの経験があるはずです。

高橋さんに限らず、40代や50代になれば「今まで自分は何をやってきたのだろう」と悩むことも多くあるでしょう。

しかしながら声を大にして申し上げたいのは、そのような年月を重ねてきて、何もご自身が提供できる価値がないということはまずありえません。

ないように見えるだけです。

もし今回の転職が高橋さんにとって最初の転職であればなおさらその可能性が高いです。

ご自身でも気が付いていない価値が絶対にあるはずです。

今回の転職を機に、一度ご自身のこれまでの職業人生を振り返り、自分の価値とは何か、そういった「キャリアの中間棚卸」をされてはいかがでしょうか。

積み上げてきたキャリアが転職成功への道に

そのように客観視することで、日頃忙しくされているであろうご自身が見えていないご自身の持つ価値や可能性が見えてくるかもしれません。

無駄な人生やキャリアなんて絶対にありません。

キャリアが無駄になるとしたら、自分が自分と自分の可能性を有効活用しない、できないときだけです。

つまりキャリアや人生という根本が悪いのではなく、価値の使い方、ものの見方の問題です。

世の中すべての人や会社、業界にとって価値のある人生やキャリアなど、そうあるものではありません。

自分の価値が開花する場所や相手を探せるか否かが、幸せな人生を歩めるか否かの違いです。

高橋さんも、ご自身の今までの経験がプラス評価されるような業界や会社に向かってアピールすることで、転職の可能性も高まることでしょう。

もう50代と考えるのではなく、50代として今まで積み重ねてきた価値をベースに、50代だからこそこれからの新しい人生を切り開くのもいいじゃないですか。

高橋さんが、ご自身の価値と可能性に気付き、新しい可能性の扉をさらに開かれることを応援しております。