2018年9月27日、兵庫県神戸市のそごう神戸店と大阪府高槻市の西武高槻店が、それぞれ「神戸阪急」「高槻阪急」に改称されると、エイチ・ツー・オー リテイリングが明らかにした。改称は2019年10月1日から行われる。

そごう神戸店と西武高槻店は、もともと株式会社そごう・西武の運営だったが、そごう・西武を傘下に持つセブン&アイホールディングスが、同様に阪急阪神百貨店を展開するエイチ・ツー・オー リテイリングと資本業務提携を始めたのに伴い、同社子会社の「H2Oアセットマネジメント」が運営を担っていた。

両店は屋号変更とともに阪急阪神百貨店に運営が移り、阪急・阪神の店舗と同じポイントを使えるようになるなど、阪急阪神カラーを強めていく。屋号変更のニュースは、地元の人々に少なくない驚きを持って受け止められた。

阪神の駅の上に「神戸阪急」が復活


「阪神電車 三宮駅」の文字も掲げるそごう神戸店(663highlandさん撮影、Wikimedia Commonsより)

そごう神戸店は1933年の開業以来、神戸市内の一等地、阪神神戸三宮駅の真上で営業してきた。すでに事実上阪急阪神百貨店の傘下になっている同店だが、これまでは地域の愛着を考慮して、屋号は変えずにいた。しかし同じ三宮に立地する大丸神戸店との競合などもあり、関西で根強く支持されている阪急への改称でブランド力強化を狙う。長年親しまれた「そごう」の屋号がなくなり、阪神電鉄の駅に神戸阪急が立地するというちょっとややこしいことになる。

そごうがなくなるの淋しいな」
「ん?阪急の下に阪神電車...?」
「本当に阪神の駅の上が阪急百貨店になるんかい」

と、地元の皆さんも戸惑いがある様子だった。

また、「神戸阪急」は過去に2度存在していた。まずは1936年に現・阪急神戸三宮駅の開業に合わせて同駅ビルで開業した阪急百貨店の支店である。1992年に神戸ハーバーランドに阪急百貨店の新店舗が開業するとそちらが神戸阪急となり、神戸三宮駅の店舗は「三宮阪急」と改称された。ハーバーランドの店舗が2代目神戸阪急といえる。


阪神淡路大震災で被災した三宮阪急のビル。この後解体された。(Bergmannさん撮影、Wikimedia Commonsより)

初代神戸阪急だった三宮阪急は駅ビルのモダンなスタイルが三宮のランドーマークとして知られた存在だったが、1995年の阪神淡路大震災で建物が被災して閉鎖・解体され、またハーバーランドの2代目神戸阪急も業績不振から2012年に閉店となった。三宮には24年ぶりに「阪急」の屋号を持つデパートができることになる。そごう、阪急ともに神戸で歴史あるデパートのため、複雑な思いを抱く人が多いようだ。

そごう神戸店では改称に先駆けて、2018年10月から本館地下1階の食品フロアの大規模改装を始める。

JRの駅前に阪急

一方、西武高槻店は1974年の開業で、百貨店とショッピングセンターの複合型のような店づくりが特徴。


西武高槻店(663highlandさん撮影、Wikimedia Commonsより)

JR高槻駅前に立地しているが、高槻市内には阪急高槻市駅もある。阪急沿線とはいえ阪急の駅から離れているため、

「JRの駅前なのに?」
「JRが最寄りの阪急...」

と戸惑いが。さらに、

と阪急電鉄公式アカウントすら「ツッコミ」を入れている。

西武なのに優勝セール無し!?

折しも9月30日にプロ野球の埼玉西武ライオンズがパリーグ優勝を決めた。全国のそごう・西武の店舗では10月1日から優勝セールを開催しているが、神戸そごうと高槻西武では前述のとおりすでにエイチ・ツー・オー リテイリングの傘下にあるため、優勝セールは開催しない。屋号変更を前に、意外な形で資本関係の違いが露わになったが、

「まだ西武なんだからセールやればいいのに」
「これからは阪神は優勝したらセールをやるんだろうか」

といった声が見受けられた。

関西では大きな影響力を持つ阪急ブランドだが、このような複雑かつ歴史が交錯する経緯があるため、今回の屋号の変更がどのように浸透していくか、興味深いところだ。